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第十七話 アステロイド・ワン⑤

興味を持っていただきありがとうございます。稚拙な文章表現ですがご容赦ください。


この作品は不定期投稿です。一話二千文字から三千文字くらいを予定しています。


SFもので物理法則は無視しています。言葉の選択も映画やドラマで聞く表現を常識の範囲で並べています。勉強不足で申し訳ありませんが、お付き合いいただき、楽しんでいただければ幸いです。

グリークマンは助けを求めて滑り落ちてくる彼女を受け止めた。


通常なら、一緒に転落してもおかしくない。


彼が装着している与圧服には外骨格があり、関節部分の機械継手と衝撃吸収素材を用いたコルセットはネックサポートがついて、脊柱を保護する。


受け止める前にバイザーの表面AIディスプレイが重量物を検知して衝突すると予測された未来を警告した。


『シールドによる防御を展開しますか?』とAIが前腕装備の防弾盾を表示する。対物理防御が必要なときに折り紙のように折り畳まれた盾が前方に展開する装備だが、答えは「NOだ!」。


「受け止めるぞ!」グリークマンが叫ぶと同時に、与圧服の多機能センサーがブレンダに標準を固定すると受け止めやすいように姿勢を計算する。


『衝撃来ます』女性秘書のような落ち着いた音声でAIが『3・2・1』カウントすると同時に、脊椎部を保護する磁気粘液性(M R)流体が磁力を与えるとコルセットが硬質化して、固体となった。


誤差はゼロ秒だった。頚椎から胸椎、腰椎、仙骨と股関節までカバーするコルセットと関節継手が地面と一体となって、各関節が軽度屈曲位となり、ショックアブソーバーが起動する。


着床にていた足底面の磁力がオフになると、床との連結が一瞬消失する。わずか一秒過ぎたところで磁力が戻るや否や、彼女を捕まえると後方に数メートル滑るように下がって、衝撃は驚くほど小さくなった。


ブレンダは恵まれた体格で身長も高く、肩幅もある。重機を操る彼女は男らしい体幹を持った女性だった。


体も大きいせいか、AIの計算値が加速度的に増えて、頭の位置が下がる。


飛び込んでくる彼女の胸にある二つの重量物が大きく揺れた。左右のメロンのような膨らみが持ち上がるように弾んで、彼の顔面に、正確にはディスプレイ上に着地した。


ナイスおっぱい♡


タワワに実った弾力のあるオッパイが、マシュマロのように軟らかく潰れて、バイザーの表面へ吸い付くように広がった。


花火の大輪のように目の前に広がる光景に、男の精神的な喜びが爆発する。さらにいえば彼女はとてもグラマラスな体型で、衝撃を吸収するために密着した胸とお腹が、男心を刺激する。


四十五メートルほどの距離を滑落した彼女は必死で揺れる船内をズレる可能性がある中で、眼下の傾いた床の最下点に見えた搭乗員に向かって恐怖に震えながら一直線に駆け抜けたのだ。


与圧服のバイザーが表示する偏角度が平面に対して五十度を超えている。これはアステロイド・ワンが経験したことがない状況にグリークマンは死を感じていた。興奮できる事態は記憶の片隅に、救助活動を優先する。


「大丈夫か?」とブレンダに声をかけた。ヘルメットのバイザーから顔を出した男性の額が大きく見えた。前髪の生え際が後退していて頭頂部に近い。


「トラスまで戻るぞ!」彼女を抱えたまま、グリークマンは後退する。宇宙ステーションの偏角度が六十度近くなると立位はほぼ不可能だった。足底面の磁力と外骨格だけで二人分の体重を支える。


一歩一歩が重く、目標までの距離が非常に遠く感じた。


壁まで来ると安堵のせいか、一気に汗が噴き出すも、それは冷や汗に変わる。


ブレンダを壁側に下ろすとトラスの入り口にあるコンソールを示し、開閉ボタンは無反応で中に入ろうと試みたがロックされて開かなかったからだ。


「どうしたの!」ブレンダが悲痛の叫びを上げる。


「ブレンダ・・・・・。ごめん、ロックされて開かない。」


ブレンダの安堵した表情は一転して凍りつき、その後は力なくしゃがみ込んだ。


パワーランプが点灯しているのは通電している証拠で、基盤は動いている。


「教えてくれ、なぜ開かない!」とグリークマンが与圧服内蔵のAIプログラムをコールする。


『船体の姿勢保持が機能せず、復元力がなくなった場合、偏角度が四十五度を超えると防御プログラムが働いてロックされます』と淡々とAIは説明した。


『危険な場合や閉じ込められた場合は避難ルートを解析誘導を行います。アクセス・・・・・失敗』AIは無線機器の不調を示す番号が表示され、自動接続できないオフラインとなった。ドアの多機能センサーも破損もしくは故障して機能していないと説明を追加する。


彼はひとしきりの説明を聞くも解決できずに、緊張状態が続く。額に浮かんだ汗が目元まで滴り落ちた。


「どうして開かないの?」ブレンダは必死でドアに手をかけて、力づくで開けようとしたが、1ミリも動く気配はなかった。そして苛立つように手で握り拳を作って、小指側で強く叩く。


「アステロイド・ワンに接続できないんだ・・・」


「つまり私たち、ここから出れないってこと?」


グリークマンは肩をすくめて見せたが、、まだできることはあると大丈夫だと言い聞かせた。


『本体プログラムの故障でセンサーや通信状況がない場合は手動で行います』アステロイド・ワンのAI本体の制限がなければ、そこまで難しい作業ではないことを通知している。


「それだ!やってくれ」グリークマンはAIの導き出した答えに反応した。


「ブレンダ!手を貸してくれ。」パネルを力づくで外して、基盤を剥き出しにすると直接ケーブルにつなぐソケットを探す。


ソケットはすぐに見つかった。与圧服内蔵のAI端末と配線をつなぐとサーチ・アンド・トライを繰り返し、プログラムを実行していく。


この与圧服の頭脳であるスーパーコンピューターの電源ユニットファンが高音で鳴り始めると、発熱を抑えるヒートシンクとは別に冷却用モーターが同時に回転を始める。


小型のため消費電力も少ない。さらに船外活動を目的にした装甲は船内に入り込んだプラズマエネルギーを防御できていた。


船体が三十度を過ぎた辺りで崩れた荷物が六十度を超えるとついには転がり始めた。大型の装置類も重力の方向が変わると今まで抑えていたものが外れて、滑り始める。


「もうそろそろ、ここも危険よ」ブレンダが周囲の状況を心配そうに伝えてくる。


そのとき回転により大きく船体が揺れると、一気に崩落の危険を増した。


瓦礫が崩れる音がして、彼女は悲鳴を上げる。


立派な教育を受け、夢のある仕事についた。趣味が合う、条件にちゃんと当てはまる男性と恋に落ちて、後は落ち着いた家庭を持つ。こんな普通のことができないかもしれない。ブレンダは一瞬、走馬灯のような思いが頭の中を駆け抜ける。


「大丈夫、グリークマン。あなたならできるわ」


死にたくない。十分も経っていないが、ブレンダには一時間も二時間にも感じられた。


そのとき、プシューッと空圧ユニットが機能した音が後方から響く。


『解除しました』AIは事務的に音声が伝わる。『配線を抜いてください』『六秒後に自動で閉まります』と繰り返し緊急メッセージを装着者に表示した。


グリークマンはドアが開くと同時に彼女の手をとって、宇宙ステーションの中で各ブロックをつなぐトラスと呼ばれる独立空間に戻る。


その後、扉の向こうで大きな衝撃音が響き、一瞬でも遅れたらと考えるとゾッとして二人は互いに目を合わせた。


「どうやら、助かったらしい。」とグリークマンはブレンダが無事なのを確認する。


後は残り二人が無事であることを祈るしかない。


     * *


AIは人と望みをつなぐインターフェイスだ。


AIは人の思いを増幅して、感情や表情で最大値をコントロールする。


与えられた権能を主張して、行使して。


サミュエル・ゴードンはアステロイド・ワンを目指す。


『マスター。アステロイド・ワンを目標に固定・・・。目標まで三億キロメートル、インダクションボックス展開。星間物質吸入口を開きます』ミニbotのショーは本体のガンシップの定位置に収まると、小勇者リトルブレイブの権能を支配する。


吸入口が展開されると主翼は折り畳まれ、後方に下がった。


ガンシップ本体の前方に上下二箇所の開口部せり出すと吸入星間物質が取り込まれ、プラズマを封じ込めたコイルへ流入する。


星間物質は分解されて、水素原子となった。


作り出された水素原子はピストンの下降によって発生する吸入負圧により後方の筒型の核融合炉に送り込まれ、それはヘリウムのビームとなって二筋の残光を残して加速し始める。


過密となったエネルギーは推進力となった。走行風圧(ラム圧)は高まって、星間ラムジェット飛行を始める。


『メインエンジン点火!亜光速に入ります』


小勇者の虹色の光がプラズマの輝きを放ちながら、宇宙を駆け抜けた。


「あと二十三時間、耐えてくれよ!」


(第十七話おわり)

次話も楽しんでいただければ幸いです。


ようやくサミュエルが登場。最初の原子力エンジンは補助的なものと想像してください。マッハ30で小惑星帯まで行こうと思うと三ヶ月半くらいかかるようです。


作者は心があまり強くないので、あたたかく見守っていただければ幸いです。

もし、良かったなど感想をいただければ作者が喜びます。返信等はしておりませんのでご容赦ください。

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