第十六話 アステロイド・ワン④
ご評価いただいた方、応援ありがとうございます。今後もご声援いただけるよう頑張りたいと思います。感謝。
また興味を持っていただきありがとうございます。稚拙な文章表現ですがご容赦ください。
地面が揺れる表現あり。暴力的な表現あり。苦手な方はここで閉じてください。
この作品は不定期投稿です。一話二千文字から三千文字くらいを予定しています。
SFもので物理法則は無視しています。言葉の選択も映画やドラマで聞く表現を常識の範囲で並べています。勉強不足で申し訳ありませんが、お付き合いいただき、楽しんでいただければ幸いです。
爆発前の彼女は、先ほどまで実験室から大型のロボットアームを操作していた。
実験室モジュールでアステロイド・ワンの船外底部に広がる曝露部、そこには実験棟の設備があって、
そこでは微小重力、高真空状態の環境を生かした実験や小惑星帯のメインベルトの宇宙環境の計測、宇宙天体望遠鏡による周辺の観測が行われていた。
研究棟から小型で精密なアームロボットを使った作業はブレンダの得意分野だった。
コマンドAIに指示を送ると必要なものを設備より実験室の与圧空間の搬入ハッチに運び込む。
この実験棟はさらに底があり、燃料タンク、水素タンク、酸素タンクに冷却水タンクといった資材を蓄積している。
最下部は往復型のスペースプレーンの補給基地になっていて、搭乗員を休ませる独立した生命維持システムを完備した居住空間もあった。
彼女が作業を終えた頃、太陽の方向が妙に明るく輝くのが見えた。
太陽風のプラズマの帯が磁気や熱を持って駆け抜けたとき、宇宙空間に充満する水素原子が大気となって発光し、天体を火の海に変える。
圧力と熱の条件がそろえば、水素は核融合反応を始めた。それは三百万度の熱量を伴って、銀河系を突き進む。
爆発に巻き込まれた小惑星が砕け、破片がアステロイド・ワンの資材を直撃した。
燃料タンクが爆発し、海の中の潜水艦が爆発物に接触したように縦に揺れる。曝露部分の研究設備が折れ曲がり、宇宙ステーションの側面に接触した。
研究棟はアステロイド・ワンよりはるかに大きく、頑丈にできていて、プラズマシールドを施した外壁をえぐり取る。
最初は軽く接触した程度だったが、さらに強い爆発が起きると野球のバットのようにめり込んで、宇宙ステーションとつなぐ支柱が折れると姿勢制御を失って、太陽風の光の中に吸い込まれた。
残されたアステロイド・ワンは残された液体水素を使い切るように、イオンエンジンが姿勢を保ち続る。
ついには残りの姿勢制御用の小型ロケットが壊れるまで傾きを維持していたが、小さな破片となった小隕石が船体に当たると機体の偏角度が大きくずれた。
爆発が起きて、それから何分経ったかわからない。
一度中に浮いた全身が地面に叩きつけられるまでスローモーションのように感じられて、ブレンダが目を覚ました時には床が目の前にあった。
それは操作板の後ろから聞こえる。実験室は各実験装置のあいだに空間があり、荷物を運搬できようにロボットアームがいたるところに設置されていて。爆発の衝撃が伝わるたびに、ちぎれそうなぐらいに揺れる。
金属が軋むようなような物音がギシッ、ギシッっと響く。土台を固定しているボルトが耐えかねて悲鳴を上げた。
記憶では後頭部、そうだ叩きつけられた衝撃で頭が側壁に当たって、床に投げ出された。酷い衝撃があって、そこが頭の後ろを殴るようにぶつかった。
目の前にぼんやりと見える機械のでっぱりが強烈な一撃となって、息ができなくなったことを覚えている。
頭が割れるように痛み、頭の中がグルグル回っていた。
朦朧としながらも目覚めたとき、ブレンダは自分の状況を確認するも、揺れる機体にただ何かにしがみつくしか無かった。
爆発が続き、地震のように地面が縦に揺れて、激しく横揺れが襲う。
ぐらりと体が倒れ、何かにつかまろうと懸命に手を伸ばしたが、再度船体を引き裂くような爆発が起きると自分の体が人形のように鷲掴みにされて足が床から離れた。
ブレンダは声も出せず、軽々と仰向けにされて、宙に浮いた瞬間、乱暴に地面に落とされ、鈍い音がした。
再び床に投げ出されたとき、彼女が落ちたそこは、通路の真ん中で遮るものが何もない。
ギャンッと金属を無理やり破断する音が一瞬、どこかで聞こえたような気がした。
そしてそれは同時に上から大きな手が、今度はブレンダの顔めがけて落ちてくる合図となる。
彼女の体が胎児のように丸く縮こまり、逃げることができず身を硬め、目をつぶったとき、再度、強烈な揺れが起きると目標が一瞬ズレて、凶悪なそれははいままで彼女の顔があった場所に落ちて、三本のアームの先端が床に食い込んでいた。
それがロボットアームの手だと認識した時には、振動で転がらなかったらと思うと、その恐怖に心臓が狂ったように打ち始めた。
今まで気づかなかったが、体のあちこちが痛む。
生きている。自分に起きたことをブレンダは理解した。忘れていたように呼吸が荒々しく、新しい空気を求めた。
異臭がひどく咽せる。
衝撃で滑り落ちる前に、ふと人の気配を感じた。
通常なら、姿勢制御を行う誘導コンピューターがロケットを使って直しているはずだったが、機能を失ったようで床の傾斜はひどくなる。
下を見ようと振り返ると与圧服を着て、誰かが近づいてくることがわかった。
顔がバイザーで影になって表情を見ることができなかったが、ブレンダの存在を見つけて何かを叫んでいるのがわかった。
だが空間の傾斜はさらに増し、意を決してその場から身を放した。
そのわずかの間を置いて彼女の背中越しに重量物が崩れ落ちる激音が伝わる。重量物の正体は壁に収納している実験ラックがその棚ごと落ちていて、収納してあった機材を撒き散らしていた。
ブレンダは来た誰かに向かって、身を投げ出すようにして床を転げるように滑り落ちていくと、男は驚いたように身構えた。
こんな状況だというのに安心感に逆らえず、思ったことを体で表現したように男の胸に飛び込んだ。
ブレンダはしばらくの間、与圧服の頭部のヘルメットを穴が開くほどじっと見ていた。
男はブレンダの大腿がしっかりと押しつけられて、胸とお腹が覆いかぶさり、その魅惑的な唇がバイザーの上を彷徨う。
実を言えばまだ実感がない。何がこの宇宙ステーションに起きているかわからず、溢れた涙を二本の指で拭った。
きつく目を閉じて、荒涼とした風景に思考が停止し無気力にもなる。
ブレンダは震えながら、少しだけ頭を働かせると自分の格好に羞恥心を感じた。
これは誰かしら、男を突き飛ばす。このままでもいい? いやダメよ。
スタッフの顔が次々と頭に浮かんでくる。
他のスタッフに対して気が短くお調子者のところがあったジョージ、彼は黒い髪と黒い瞳、惚れ惚れする筋肉質の体格で魅力的な男性で、ブレンダの中では好みだったが、違うと感覚的に思った。
やっぱり彼は禿げかかった頭の四十二歳の中年で、太り気味だが、器用な男。女性には一部には不人気だったが、男受けする傲慢さ、素晴らしい仕事をする船長のグリークマンかな。
それともエイムズかしら、彼は頭脳明晰で野心家で、誰にも負けないほど有能だけど、痩せ型の長身だから、違う。
いけない。そう気付いたとき、ヘルメットの開口部が開き、四十二歳のその男が顔を見せた。
「そんなにしがみ付かれたら、おじさん困っちゃうなぁ。」
魅惑的な彼女の胸が目の前で爆発していて、なかなかバイザーを上げられなかった。
登場人物のグリークマンさんは変態さんではありませんので安心してください。
アステロイド・ワンの話を続けます。次話も楽しんでいただければ幸いです。
作者は心があまり強くないので、あたたかく見守っていただければ幸いです。
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最近は宇宙ものの本を読み漁って、勉強しています。探査衛星はやぶさで有名な小惑星イトカワも小惑星帯アステロイドのメインベルトにありますね。
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