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第十四話 アステロイド・ワン②

興味を持っていただきありがとうございます。稚拙な文章表現ですがご容赦ください。

R13 グロい表現あり 苦手な方はここで閉じてください。


この作品は不定期投稿です。一話二千文字から三千文字くらいを予定しています。


SFもので物理法則は無視しています。言葉の選択も映画やドラマで聞く表現を常識の範囲で並べています。勉強不足で申し訳ありませんが、お付き合いいただき、楽しんでいただければ幸いです。

闇の中、ジェニファー・シリングは痛みで目が覚めた。


いや、宇宙に投げ出された衝撃かもしれない。息を吸うことが一きわ不快で、息苦しく呼吸もしづらい。胸部の痛みの状況から肋骨を痛めているのは確かだった。


低重力の環境で荷物のように宇宙空間を漂う。止まることなく流されていく。


これから自分は誰にも気づかれないまま死ぬのを待つしかないと思うといっそう恐ろしかった。


救難信号を出して、通信回線に呼びかけても終始無言のままで、ジェニファーの宇宙服に取り付けてあるモニターが表示する酸素量が下がり、30パーセントを切っているのが見えた。


もがくこともできず、守る術もない。ジェニファーは痛みにうめいたが、何も反応はなかった。無抵抗のまま、木葉が宙に舞うように体はどこかへ転がって行く。


それからどれくらい時間が経ったのかわからない。ジェニファーはふと最後の記憶を思い出していた。


それは上陸用ポッドの前方に位置する操縦席でレーダーの最大距離に飛来する隕石をとらえ、危険を知らせるアラームがけたたましく鳴っていて。


わずか数秒後には衝突ルートまで来た隕石の表面がはっきりと見えた瞬間、鉈を振り下ろすように先頭部分を剥ぎ取っていた。


後方の推進システムが狂ったように回転してエウロパから遠ざかる。


ポッカリと穴の空いたフロント部分から空気が船内から抜け出すように、内部のものが宇宙空間へ引き出される。


後方でも前に近かったジェニファーはなすすべなく、宇宙へ投げ出された。


目の前で金属の破片が鉤爪となって同僚の腹部を裂き、切れた水道のホースのように内臓が空しく漂って。


鮮血が玉になって周囲に広がって赤いシミを作っていくのをただ見ていた。


「助けて!」一瞬、ヘルメット越しに視線があった気がしたが彼女はすでに絶命していた。


幸いにも投げ出されなかった同僚も制御装置を失った推進システムが、冷却されず臨界に達するとわずかな閃光を放って、爆発した。しっかりと機体に固定した宇宙服がシートから外せず、爆発の炎に巻き込まれていく。


混乱した意識を持ったまま、無慈悲にも宇宙服は燃えず、冷却用の水冷チューブ内の水さえも沸騰し始め、生きたまま蒸されていく。喉は熱で焼かれ、声は出せずに口だけが魚のようにパクパクしていた。


人が焼け死ぬまで二分かかると言われている。目が潰れ、血液が沸騰し始めると真っ暗な状態で死を求め、激しくのたうち回るとソーセージのように膨張した皮膚が裂けて、ズルりと剥がれた。


それは完全に脳が焼けるまで、待つしかなかった。


宇宙空間で爆発が起こると重力波が発生する。中性子同士がぶつかって、核の分裂反応によって周囲が圧縮されて縮むと、周囲の空間そのものが引き寄せられて、再び爆風となって広がっていく。


ジェニファーも体全体が爆心に引き戻されうめき声をあげる。爆風が再び彼女を襲って、衝撃波とともに宇宙空間へ宇宙のチリとなって飛ばされていく。


衝撃波を受けて、体を反ることも、手足を動かすこともできず、大気のある惑星に落ちるか、何かにぶつかって息絶えるのを待つしかなかった。


宇宙空間はとても静かな場所で、手足は凍えてほとんど感覚がない。胸部の痛みがひどく、肩や腕を動かそうとしたが、やめた。


とても苦しくて、涙が溢れる。咳をしたいが痛みで咳にならずうめいた。胃液が口の中まで出てきたが溢れさせるわけにはいかず、我慢する。


ただ宇宙服の生命維持装置が正常に動いていたことを確認すると、気が緩んだせいか、膀胱の力が抜けた。


膀胱が張っていることに気づいて、腰を動かして、尿意を堪えようといくらか頑張ったが、そのまま溜まっていた排泄物が尿道から溢れて専用のオムツを濡らせていった。


疲れと下半身の開放感と共に、再び意識を落とした。


彼女は宇宙軍の練習艦所属、訓練で輸送ミッションをおびて木星の衛星エウロパへ向かうはずだった。


気温マイナス170度の氷の外殻に覆われた地表へグライダーのように降下し地表に降りて。


エウロパ公社職員の操縦によって噴き出す水蒸気を避けつつ、希薄な大気の上空より氷の下に広がる内部海へつながるコロニー入口からエウロパの輸送基地に着陸する。


着陸姿勢になると誘導システムが自動的に船体をロックするようになっていて、今回の任務では岩塩を積んだ輸送艇の誘導コンピューターを外部から接続、電気設備や推進システムをつなげば、輸送艇のメインシステムを使って再度宇宙に戻る。


難しくないミッションのはずだったのに。


     * *


遠くで機体の後部から低い音が響き始め、サミュエル・ゴードンはスイッチに手を伸ばす。大きく長い息をしてミニbotの支援のもとスイッチを押した。


ガンシップに搭載されている原子力ロケットエンジンは次世代型のロケットブースターだった。


時間という概念がかすみ、加速してありったけの大きな距離を稼いで、火星から一直線に進むと、目の前に広がる小惑星帯のメインベルトがひらける。


ためらいもなく小惑星帯に入っていき、必要な指令を自度的に発して、きびきびとした動きで隕石群を避けていく。


まるで全てを把握しているかのような動きはパイロットの感覚を覚醒させているようだった。


古い機体だが運動性能が優れていることを要求された機体で騒音や振動、乗り心地は計算されていて、オートジャイロにより常に発生する縦揺れや横揺れを減少しながら、操縦性の向上がされている。


磨き上げられた鏡面装甲に映った太陽の光が反射し、虹色に輝く飛行体は太陽風の磁力嵐の中に突入していく。小勇者リトル ブレイブは計算された経路を辿り、急激なスピードで頭部を回転させて背面飛行となって、予測演算通りに動き障害物を避けていく。


AIショー小勇者ガンシップを支配する。アステロイド・ワンの位置を捉え、ひたすら加速していく。


機体の名前はこのポンコツに近かった宇宙船を譲り受けた時に、付けた名前だ。


回旋能力と航続距離に定評があった攻撃機、装甲の薄さとパワー不足で引退したものの、手動操縦には驚くほどいい反応を見せた。


休止していたエンジンを全て新しく、ロケットブースター開発部の主任から試験品を提供してもらって、完成した機体は予想以上の性能を発揮する。


システムも最新鋭の機体に比べればずっと単純で原始的だった。船内の構造は単純でAIとのリンクもすぐに終わり、アップデートが必要な部分を装換するとモンスター級のガンシップが完成していた。


トレーラーハウスの管制用モニターを見ていたリンは彼の無事を願う。


     * *


アステロイド・ワンに搭載されているディーゼルエンジンの液体燃料は補助的なもので四日と持たない。


外壁はプラズマシールドを施してあり、銀河系でも一番太陽に近い水星でも運用可能な設計だった。


太陽のフレア兆候は搭乗員も知っていたが、装甲板の強化は行っていたはずとの思いこみでいっぱいだった。


通常のフレアであれば、問題なく終わる天体現象で、多少の大風ではびくともしないように出来ている。


想定外の規模で噴き上がった質量を持った風は想定の何十倍の激しい打撃となって周辺を波のように襲い、小惑星が無秩序に目の前で衝突したのが見えた。


小惑星の一つが粉々になり、砕けた星の固まりが残骸となって散らばった。そしてそれは宇宙ステーションの外壁や燃料タンクにぶつかり、突き刺さる。


燃料タンクが吹き飛び、制御室はコントロール不能になった。一連の損害によって回線がショートを繰り返して、システムが破壊されていく。


メインエンジンが機能停止すると宇宙ステーションは電圧を失い、冷却装置の動力が落ちて核分裂機関に爆発音が響いた。


さっきまでの日常が突然崩れ去り、警報機器が鳴り響き、異常をパイロットに知らせている。絶望的な状況を生き残って、崩れた天井や壁にぶつかりながら、男は視線を彷徨わせた。


(第十四話おわり)

サミュエルの話はもうしばらく続きそうです。次話も楽しんでいただければ幸いです。

作者は心があまり強くないので、あたたかく見守っていただければ幸いです。

もし、良かったなど感想をいただければ作者が喜びます。返信等はしておりませんのでご容赦ください。

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