第十三話 アステロイド・ワン
興味を持っていただきありがとうございます。稚拙な文章表現ですがご容赦ください。
空想表現あり。
この作品は不定期投稿です。一話二千文字から三千文字くらいを予定しています。
SFもので物理法則は無視しています。言葉の選択も映画やドラマで聞く表現を常識の範囲で並べています。勉強不足で申し訳ありませんが、お付き合いいただき、楽しんでいただければ幸いです。
小惑星帯の中で微小重力環境にある宇宙ステーションのアステロイド・ワン。
それは我々の銀河系の、火星と木星の間にある観測基地で、メインベルトの中に存在していて。
火星の天文観測基地でもその状況を管制や技術者が追跡している。
常時七人の搭乗員が滞在する宇宙ステーションは、宇宙の進化・構造を解明するために宇宙技術の開発を行なっていた。
ドッキングをすでに切り離した空気のある与圧空間を持った宇宙船がブースターロケットを点火させる。
先端の司令船には小惑星調査任務のため搭乗員三人が乗り込んでいて、一緒にサンプルを回収するカプセルを搭載していた。
それがステーションから発進して三日経つ。
微小惑星に降り立ったアステロイド・ワン搭乗員のジョーンズは無人貨物輸送船で有人宇宙船より先掛けて出発していた直径四メートル長さ十メートル円筒形の拠点基地にいた。
拠点基地には惑星岩石から得られた物質を集めて分析する研究室とオペレーション室とオフィスが入っていて、宇宙ステーションに向けて情報を持ち帰る。
宇宙飛行士たちが乗る司令船から小惑星の表面を着陸船に移動したパイロットのスミスとマイヤーの二人が乗りこんで、観測地点まで誘導航行で飛行する。
微小惑星の表面に打ち込まれたペネトレータと呼ばれた槍型の観測機器には人が一人乗り込めるほどの大きさがあり、スミスは、その中で掘削用の支援ロボットから掘り出された岩石を選んでは地表にある無人ローバーに積み込む作業をしていた。
研究室にいるジョーンズがヘッドセットを通して、緑色の部分には鉄やマグネシウムが多いと結果を伝える。
それは岩石が溶岩でできた証でもあった。
火星は殺された惑星として有名である。
かつて火星は地球に似たような大きさで、大気も存在していて、巨大な天体の衝突によって地殻ごと引き剥がされ、現在の大きさになったと言われていた。
衝突により内部構造が破壊されて、対流していたマントルを失い、回転を失った火星の重力は大変微弱なものとなった。
次々と飛来する小惑星の衝突により噴出物の形態として地下マグマが宇宙空間に散らばっていく。
楕円軌道となった火星が天体の破片を撒き散らして、火星と木星の間に隕石群が残留する結果となった。
今の火星が誕生する前の環境は湿潤で温暖な惑星で、至るところ水ばかり。
しかし大気がなくなり、地中にあったはずのマグマの層が失われたことで、水が地中深くに流れ込む。
日陰となった宇宙空間は非常に寒く、マイナス百七十度の気温にさらされた水は、程なくして氷となって過去の記憶を残し、火星は冷たく寒い星と呼ばれることなった。
天体の破片は生まれたばかりの地球にも飛来する。
衝突したものの非常に軽く、ほとんどは地球の上空でチリとなって燃え尽きる。揺らぎの部分が集まると同時に暗黒物質もガス状に溜まり始め、たくさんのチリが引き寄せられて、だんだん大きくなっていく。
暗黒物質が重力を発生させ、圧力を生み、チリ同士が核となり融合反応を引き起こす。
そして一つの輝きは星を誕生させて、今では人が住む月となった。
* *
作業を終えたスミスとマイヤーの両名は、無人ローバーを着陸船に積み込むと拠点基地に戻る。
到着ロビーでジョーンズが、二人が持ってきたサンプル容器を受け取ってプラズマ洗浄をかけて微粒子を取り除いていく。
最初に採取したサンプルの解析機器をを担当したジョーンズに「火星由来の微小惑星で間違いないのだろう、顔見れば分かる」と、年長のマイヤーが彼にいつも以上に疲れた顔を見て言う。
新しい発見は少ないと言っていい。五十キログラム程度の岩石を二つ三つ積んだローバーが全ての素材を吐き出した後は再充電のため、自動的に設備のある場所に戻るようにプログラムされている。
誰も気づかないところで問題が起きていた。
ただ今回は何か失敗したようで搭載していた液晶モニターが赤く点滅して通信エラーを表示する。
トラブルがあって動かなくなったローバーのディスプレイをスミスが宇宙に出て確認すると、司令船の電波が極端に弱くなっており、不安定な状態に陥っていた。三つ四つ周波数を切り換えても改善は見られず、仕方なく手動でコンピューターのスイッチを一定時間長押しして再起動を試みる。
結局、電力を浪費するだけで自動プログラムの大部分が使用不能になってしまって。回避プログラムも使えず、マニュアルの運転も危険と判断して、結局は電源を切って、バッテリーの残量を温存する。
おかしいのは無人ローバーだけではなかった。
微小重力の宇宙空間で宇宙飛行士たちは宇宙服の状況を把握できようになっているが、全システムが機能停止という、意味の解らない重大な故障を示すメッセージが宇宙服の液晶部分に表示された。
宇宙服に搭載された減圧服の電気系統システムから火花が散ると液晶部分が白くなり停止する。
電源を失った瞬間だった。
スミスの宇宙服は丈夫な繊維で出来ていていたが膨張して裂ける。そして肺の空気が吸い出されてペシャンコに圧縮されると十五秒で酸欠となって。
人間の体が焼けたり、氷漬けになって死ぬ前にすでに意識はない。
拠点基地の電力は二基の原子力発電によって賄われていて、電子制御により冷却と発電を行なっていたが、システムが停止すると核融合反応が暴走し始める。
数百度まで上がると、光点が発生し三十万度に達する。そしてそれは閃光となって爆発したように見えた。
* *
木星への中継基地としても利用されているアステロイド・ワンから通信が途絶えて二日経った。
「助けてくれ!こちら小惑星帯基地。電力設備破損、回転が維持できない。」
宇宙ステーションの船長が緊急事態を報告してくる。
ガンシップの馬鹿でかい機体のエンジンに火が点る。原子力推進の材料であるペレット燃料を核融合炉に装填する。
悲鳴を上げた船長はリンも知っている顔だった。
コンパクトフレアから噴き上がった太陽嵐の電磁波を受けた宇宙ステーションはやかましい爆音と共に回線や基盤がショートして爆発する。
爆発で表面のアルミ板が吹き飛び、乗組員を襲った。片足を引き摺りながら、男性船長は緊急用のディーゼルエンジンを手動で点火すると、生命維持に必要な電力だけ確保していて。
非常灯とエアーコンプレッサーだけが息を絶え絶えに動いている。
ガンシップの核融合炉の中心にペレットが打ち出され、点火位置に到達すると、超高強度加熱用レーザーにより高速点火を始めた。
コロナによって加熱された太陽は三百万度の高熱を吐き出すと、火星の軌道上でも太陽の温度に近い六千度の熱波が周囲を焼いていく。
火星の天文観測基地でアステロイド・ワンから送信される信号を失い、はるか彼方の星での爆発が見えてから、停止した通信がようやく、サミュエルの所有する最新式データ通信を搭載した管制システムによって把握できた。
トレーラーハウスの火星基地より鏡面装甲のガンシップは宇宙飛行士たちを帰還させるためのミニ・シャトルを本体に固定すると駐機場より大型エレベーターでカタパルトに挙がる。
「こちら、宇宙船通信室!応答願います」トレーラーハウスがキャッチした通信にリンがスイッチを押して応答する。
「位置特定!サミュエル、聞こえてる?」
「もちろんだよ。ちゃんと聞こえている。」すでに射出体制に入ったサミュエル・ゴードンは超電磁カタパルトのロックを外す。
宇宙空間に伸びた誘導の灯りが衝撃と共に後方に消えた、2秒でマッハ30の速さに到達したガンシップは瞬く間に漆黒の宇宙に飛んだ。
サミュエル回を続けていきます。次話も楽しんでいただければ幸いです。
作者は心があまり強くないので、あたたかく見守っていただければ幸いです。
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