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第十一話 アレックスの物語③(両親の話 ふたりの出会う前に 1)

興味を持っていただきありがとうございます。稚拙な文章表現ですがご容赦ください。


この作品は不定期投稿です。一話二千文字から三千文字くらいを予定しています。


SFもので物理法則は無視しています。言葉の選択も映画やドラマで聞く表現を常識の範囲で並べています。勉強不足で申し訳ありませんが、お付き合いいただき、楽しんでいただければ幸いです。

サミュエル・ゴードンは格納庫の中でいつもとは違う作業になるとわかった。


十四歳で小型シャトルの操縦を始めてから、すでに十年近く経っている。


宇宙にも風が吹く。理科の授業で習ったかもしれない。銀河系の星で恒に位置を変えない星を恒星と呼んだのは間違いだった。


動かないように見えるのは見かけだけ。観測では秒速数十キロメートル、時速十数万キロメートルの猛スピードで移動していることを天文台が記録している。


ただただ広い宇宙、青かった頃の地球で例えると太平洋の真ん中にスイカ大のボールが三個ほど漂っている程度の話だから、多少動いてもどうということはないのだけれど。


銀河系の磁場が狂うとき、それは太陽の大気が揺らぎ、宇宙空間へ噴き出す。それは太陽の表面温度が上がって、ヘリウムの層が厚くなって、核融合反応がひときわ明るく輝くとき、今度はヘリウムが燃えて膨らんで一気に消滅すると太陽風となって外へ広がる。ひどい時は嵐のように、コロナが突風となって吹き出す。


離陸のとき、太陽が妙に明るかったのを覚えている。


ほとんどの場合、大きな惑星や恒星に留まり、物陰に隠れていれば、吐き出された太陽風の荷電粒子のプラズマのジェット気流から十分な距離をとって、当たらないようにするが、ときどきこっそりと忍び寄り、狙いを定めてその未知の危険な領域に踏み込む奴もいる。


サミュエルは後者だった。


冒険家という生き物はとても興味深い。


昆虫でも、動物でも、死の危険が迫り、危ないと感じると逃げるのが普通だが、人間は噴火している火山の溶岩口を観に行く奴もいれば、死ぬと分かっている戦争に身を投じる奴もいる。


刺激と脳内麻薬であるアドレナリンを求めて旅立つ生き物だった。


人間の歴史は好奇心と発見の連続だった。


     * *


サミュエルは雇われのパイロットとして生きている。


ある時は民間船に乗り、あるときはコロニーや都市の職員として働く。そして自分の可能性を信じて、腕に金を払ってくれる企業に雇われる。


定期航路の宇宙船はだいたいAIを搭載していて、人間はあくまで最終決定が必要な場合のみ仕事をする。


パイロットのほとんどは退屈極まりない職業になっていた。船を管理するだけの蔑まれている仕事かもしれない。


今、太陽風の影響下で操縦する段になって、彼のような男の値打ちが求められた。


彼にとって、太陽風は荒れ狂う大気の揺らぎにすぎない。それもとりたて慎重で、電磁パルスの影響に強い支援型ロボットがいれば、磁場の影響下でも楽々と作業ができる。


ミニbotの名前はショー。作業を自動化するプログラムAI端末で艦載用のAIも支配下における優れものだ。


サミュエルは火星にある天文観測基地が発表した太陽のコロナ情報は遅すぎると思っていた。


太陽の表面温度の上昇と大気の膨らみ具合から今、爆発が起きても不思議ではない。


そして運が悪いことに小惑星帯の軌道が重なる。


今日の夜から明日にかけて火星と木星が接近するとニュースがあったばかりだ。


接近のニュースが伝えられると木星の資源を得ようと資源運搬船が出発し、今頃は港に停泊して物資を積むつもりで大型クレーンが輸送用コンテナを積み上げている。


そして今、緊急警報でコロナ情報が出たのを見て、ひと目で火星にある輸送用シャトル基地の宇宙港はいつもと違うものになった。


木星方面へ向かうはずだった資源運搬船が物資を積んだまま発射塔から外され、先ほどから停泊を余儀なくされている。


今度は小惑星帯の中継基地から緊急速報が流れ、すでに宇宙嵐の兆候が報告された状態で二次災害の発生が予想された。


嵐が起きれば、小惑星帯の中で微惑星同士が激しくぶつかり、砕けた小天体が宇宙風に乗って散らばる恐れがあるからだ。


反応する原子力ロケットエンジンの融合が高まって宇宙空間をふるわせ、サミュエルの心臓音がコックピットに響く。


コロナ発生という天体現象が始まったとき、その危険と隣り合わせに身を置く状況に刺激を求める。天文観測基地の管制から作戦が実行される状況になった。


管制の友人がサミュエルの操縦するガンシップのコックピットのコンソールモニターから、「サミュエル、小惑星帯に入ったら連絡をちょうだい」と、制服をきた小柄な女性がコースを示しながら念を押す。


この作戦は離陸前に聞かされたものだ。


     * *


一時間ほど前に、格納庫の駐機場で友人が来るのを待っていた。


鏡面装甲を持つ宇宙艇、元々は核融合炉のプラズマを封じ込めるためのミラー型と呼ばれる内壁を利用し、加工を加えて表面に固定する。


軍用機で払い下げられた機体を極限地帯向けにサミュエルが改造したものだった。


複座式のコックピットではあるが、今では無人で操縦できるようになっている。バルカン砲やガンポッドを装備すれば局地制圧型のガンシップにすぐに戻せる設計だ。


ただ現在は高機動型の多目的装甲車が積んであり、車の内部では単身のベッドやシャワー室まで完備したベースキャンプ仕様だった。


プラズマのシールド装置を持った機体は珍しく、天文観測基地に勤務する友人のリンから偵察任務の相談があってここにいる。


リンは出るべき部分がつつましやかというかちゃんと出ていないというか、子供っぽい体型だったがちゃんとした大人の女性だ。


可愛い制服姿でスクーターに乗って来る。


彼女は格納庫を横切って、サミュエルの車の隣にスクーターを停めるとトレーラーハウスのドアを叩いた。


ヘルメットとゴーグルを置くと、「サミュエル、ドアを開けてくれない。」


リンは急いだ様子でドア越しに言った。


「さあ、入って。とんだ災難が起きたものだね、リン」


サミュエルはモニター越しに映る彼女に肩をすくめ、ドアを開ける。


「そうね。今回のプラズマ噴出で小惑星帯から木星付近の宇宙域で大規模な磁気嵐が発生しているわ」


この磁気嵐のせいで衛星の電力設備が止まって、通信障害が続いていた。


ほんの二年前に太陽の表面温度上昇が始まったと思ったら、この現象の前触れだったとはね」


サミュエルはリンの大きな瞳を見つめる。


リンは一流の天文学者で、太陽で発生したコンパクトコロナがこのまま終わるとは思っていなかった。


ヘリウム層の上昇が続いており、温度もそれに倣って高い数値を維持している。


小惑星帯の観測チームにいるリンだが、現在の科学技術ではそれを解決できないことを知っていた。ヘリウムを溜め込んだ太陽はいつかもっと大きな爆発を起こすかもしれないのに、人間はそれを傍観するしかなかった。

時系列が二人が出会う前の話です。次話も楽しんでいただければ幸いです。


作者は心があまり強くないので、あたたかく見守っていただければ幸いです。

もし、良かったなど感想をいただければ作者が喜びます。返信等はしておりませんのでご容赦ください。

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