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「なろうラジオ大賞3」のための物語

まるで鏡を見ているよう

作者: ヤギマルケイト

 ドッペルゲンガーを知ってるか?

 この世の中には、自分と全く同じ姿をした“モノ”が存在するのだという。そして、まるで鏡を見ているようなそいつに出会ってしまった人間は

 死ぬのだと。



「──つまりそのドッペルなんちゃらに会っちまった、と」

 甲平(こうへい)はラーメンをすする手を止めもせず言った。

「おめでとさん」

「真面目に聞いてくれ、冗談じゃないんだ」

 駅前に新しく出来た本屋。バイト帰りに何となく行ってみたんだ。

 あまり行かない道だからか。帰ろうと思ったら、いつの間にか変な裏路地に迷い込んでた。

 ふと、視線を感じた。

 あるいは気配というべきか。でも何故か同時にこうも思った。

 ()()()()()()()、と。

「なのに──うっかり見ちまった」

 そこに、いた。

 細い道を抜けたその向こう。

 俺と全く同じ顔。同じ姿。

 こっちを、見ていた。

 あわてて目をそらした。絶対にそれ以上見ちゃいけないと思った。

 ……そのあとのことはよく覚えていない。とにかくメチャクチャに走った。

 気がついたら、いつもの駅前だった。



「鏡でも見たんだろ」

「だから冗談じゃないんだって」

「俺が冗談で言ってると思うか?」

 知ってる。甲平の話は冗談ばかりだ。

 でもこの顔でこう言った時だけは別だ。

 あぁ、本気で言ってる。

「てかさ」

 ようやく手を止めた。

「要するに、お前さんはどうしたいんだ?」



 目が覚めた。バカげた話だ。

 聞いてもらってどうなる話でもなかった。これは俺の問題だ。

 俺はもう一度その場所へ行ってみることにした。

 ぼんやりした記憶を頼りにウロウロする。と

 気配が、した。

 辺りを見回す。どこだ?

 ──いた。

 道の向こう。俺と同じ姿。あいつだ。

 俺は意を決して向かって行った。



「鏡だったよ」

 最低のオチだった。

「道の先が空き店舗になっててさ。奥が鏡張りになってた」

 鏡でも見たんだろ。

 まさか本当に正解だとは。

「どうした?」

 てっきり大笑いされるものと覚悟して電話したってのに。

 返ってくるのは、無言。

「笑い話にもなりゃしないってか」

「あいや、お前さんのマヌケは知ってるが」

 困惑したような甲平の声。

「この話って、昨日しただろ?」

「は?」

 昨日は()()へ行ってた。甲平とは会っていない。

「バカ言え」

 だったら甲平はいったい

 ()()()()()()

「俺が冗談で言ってると思うか?」



 電話はぷつりと切れた。

 玄関の呼び鈴が鳴る。こんな時間なのに。

 行っちゃいけない気もした。開けたらダメな気もした。

 でも俺は、玄関を開けてしまった。

 そこにいたのは──

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「そっちかよ!?」と良い意味で裏切られました。 [気になる点] 最後敢えて「なにがそこにいたのか」を明かしていないところがまた恐怖を煽り、そして興味をそそらせるなぁと思いました。 [一言]…
[良い点] 良質のホラーで、偽オチと本オチンの組み合わせをきちんと楽しませて頂きました。1000文字で、あっという間に読み終わるから、オチを思いつく前にオチが来て楽しめるという、まさに超短編ならではの…
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