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第九話 決着 



「覚悟しなさい。」


そう言って彼女は右目の眼帯に手を掛けた。

そして眼帯を取ると赤く染まった白目に覆われた漆黒の瞳が現れた。

なんて禍々しくも美しい魔眼なのだ。


「この魔眼を使う事で私の魔力総量を何倍にも引き上げる事が出来る!」


すると彼女から溢れ出る魔力が、魔眼を使う時と比べて圧倒的に多かった。


「物凄い魔力が集中している…」



エリスは、魔眼の能力を使っている右目から血を垂れ流している。恐らく魔眼の代償だろう。長くは持たない。


「はぁっ、はあっ、今から見せるのは私の最大で最強の炎魔法、これを喰らえば流石に貴方だって…」


彼女が詠唱を始めると、彼女の周りが燃え始めた、先程放った火の(ファイア)大円高壁(サークルウォール)の炎を集め巨大な炎の槍を作り出した。


大量の魔力を使った事による魔力枯渇が始まったのかエリスは少しフラついたが、直ぐに立て直しこちらを見る。



「これは私のとっておきの魔法。魔眼で魔力を最大限に引き出して巨大な炎の槍を作り出した。」



「喰らぇぇぇぇぇぇえ!

ーーー【灼熱を司りし炎槍(グングニル)】ーーー!!!」


その声と共に、激しい轟音と爆音を立てて巨大な炎の槍が俺の方に放たれた。

この威力は本物(オリジナル)と同等か。


ゴォォォォオオ!


「俺の防御魔法を持ってお前の魔法を防ごう!

魔王の一撃でさえ防いだ俺の魔法。」


神殺しの炎槍(グングニル)が迫り来る中、俺は目を閉じて自身の魔力を突き出した右手に集中させる。身体の至る所から魔力を右手に流し込む。魔力の貯蔵は大量。魔力回路が右手に集中する。


そして静かに告げる。


「全てを防げーーー【一つの聖なる花盾(フローラルシールド)】ーーー」


すると、目の前に花型の大きな盾が出現し更に普通の防御壁を六枚展開する。炎の槍と衝突した。


「ハァァァァアア!!」

「ウォォォオオ!!」


炎の槍が一枚また一枚と円状の壁を破っていく。そして残り2枚になったと同時に激しい爆発音を立てて辺りを煙が包む。


煙が引いていく。




     ーーーーーーボタボタ、ビチャッーーーーー


「ーーッ!?」


赤い血がエリスの魔眼から滴り落ちる。魔眼の限界を迎えた目から血が流れる。

ふと前を向いて「フフッ。」と笑う。彼女の視線の先には少し制服が破けただけの男が立っていた。


「ア…ンタ、どんだけタフなのよ、、、」


「タフさには自信があってね。」


そう言って俺は、微笑む。


「最後に此処まで戦った君に敬意を表して僕の一撃をお見舞いして幕を下ろそうか。」


「そう…ね。来てみなさい、今度は私が受けてあげる。」


エリスは今にも倒れそうな体を起こし魔力を込める。


俺は、龍剣ヴァヴェルを上に掲げる。


ギュォォォオオ!


大気中の魔力の光の粒子が龍剣に集まり大きな碧い光を放つ。その魔力は、やがてこの訓練場の魔力を全て吸い尽くし大きく膨れ上がる。


「何を見せてくれるの?」


「少し本気の一撃を。」


そして剣を構える。


エリスも剣を構える。


「ーー『雷火姫』エリス・ヴァレンタイン」


「ーー『無能』レイ・アストレア」


互いに名乗りを上げて一騎討ちに臨む2人。


ーー今、観客は2人。


正確には二人を含めて4人だが、エリスとレイは互いの姿しか映っていない。


凄まじいレイの剣気が訓練場内を押し込み、強烈な魔力が大気を震撼させる。


俺は剣に呼びかける。


『少し本気を出す。』


『ふん。好きに使うがいい。』



「ーーーーハァァアアーーッ!?」


ーー出力20%解放。


ーー制限解除(リミット・オフ)



「ーーーーーー!」


エリスは咄嗟に体が反応し自身に渾身の防御魔法を掛けて真横にに思いっきり飛ぶ。

同時に俺が剣を地面に思いっきり振り下ろす。


「ーー【龍王の息吹(ドラゴン・バスター)】ーー」


放たれた一撃が全てを白く飲み込み、空間を真っ二つに切り裂いた。

大気が崩れる程の威力の余波が、強い暴風を吹いて荒れ狂う。

エリスもその風圧に耐え切れず体を浮かし壁に激突してしまった。

激しい風音と地面が抉れ飛ぶ轟音が連鎖しやがて幕を閉じる。




「ふぅー。」


俺は大きく溜息を吐く。


エリスは先程の衝撃で体の至る所を打ち付けもはや戦う事は不可能な程に弱っていた。


一方のレイは、あれだけの戦いを繰り広げて尚疲れを知らずただ平然と龍剣を鞘にしまいエリスの方に目をやる。


その姿を見てエリスは思った。


(私が勝てる相手じゃないわね…完敗よ…)


ふとエリスの方を見るとこちらにゆっくりと近付いて来ていた。


「私の負け、完敗よ。貴方強すぎよ。」

「君こそ強かった。ありがとう。」

「お世辞なら要らないわ。」

「世辞じゃないよ。それに君の魔眼なんだけど、、、」


彼女は下を向いた。彼も私の魔眼を醜いと言うのだろうと思ったが、予想外の答えが返ってきた。


「美しかった。あんな綺麗な魔眼はじめて見たよ。」

「…へ?…はぁぁぁああ!?」


突然の答えにエリスは顔を真っ赤に染めてまた黙ってしまった。


「う、嘘よ。」

「本当だよ。君の魔眼はとても美しく綺麗だった。少なくとも僕はそう思った。だから自分に自信を持ちなよ!例え他の誰かが君の『魔眼』を醜いと言ったら僕が綺麗と言って塗り替えるよ。」


彼女の頭の中はパニック状態だった。異性から始めて言われた美しいや綺麗と言う言葉。自分の魔眼を綺麗と言った男。


エリスは腰が抜けたのかそのままその場に倒れてしまった。


こうして俺とエリスの決闘は終わりを告げた。




エリス対レイの戦いここに終幕。

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