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第八話 『雷火姫』VS『無能』

俺の心の中に声が響く。


『こんな小娘に妾を使うとは。舐められたものじゃなぁ。』


『いいだろ。久しぶりにお前も疼いていただろ?むしろ感謝して欲しいくらいだ。』


俺は心の中の声に返答する。


『まぁよい。この代償は必ず払って貰う。さぁ小僧。妾を使うが良い。妾の名をーー』



ああ。






「この剣の名前はーー」


俺は剣の名前を言う。


「ーー【龍剣ヴァヴェル】ーー」


「龍…剣…?」


「かつて神話の時代。世界に災厄をもたらした最強の龍種の王。その龍を封印したのがこの剣だ。喜ぶがいい、この剣は世界にたった一本の俺だけの剣だ。」


「はっ、何が”無能”よ…そう名づけた奴らは頭おかしいんじゃ無いの?まぁいい…勝つのは私だから。」


そう言って彼女は剣を構える。

俺も静かに鞘を抜く。


ヒュォォォオオ!


鞘を抜いた瞬間、激しい魔力の風圧が会場全てを包み込む。


「始めようか。」


「ええ。」


エリスが剣に魔力を注ぐ。

すると魔剣レーヴァテインから激しい炎の魔力が発生し、魔剣ライオットから雷の魔力がエリスの周りを纏う。


レイが剣に魔力を集中させる。

空気中に浮かぶの魔力の粒子が一気に龍剣と呼ばれた漆黒の長剣を包み込む。


再び静寂が訪れる。


訓練場に聞こえるのは互いの魔力の衝突音。


エリスの額からゆっくりと一滴の汗が流れ落ちる。


深呼吸をする。


互いの心臓の鼓動が高鳴る。


そしてーーーー







      ーーーーーーーポタッーーーーーーーー


合図がなった。


「ヤァァァァアア!!」


「ウォォォォオオ!!!」


お互いの雄叫びと共に2人が同時に飛びかかる。




     ーーーーーーガキィィンッ!ーーーーーーー


互いの剣が甲高い金属音を立てて打ちつけ合う。


「ーーシィィ!」


エリスが、俺を斬ろうと炎剣を振り下ろす。

それを受け流し回避するが、息をする間もなくもう一つの魔剣が目の前に迫り来る。


俺は避け切り、反撃をする。

体制を立て直し龍剣を振り下ろす。

エリスが少し遅れて反応して剣でガードする。


「ッ!…」


轟音と金属音を立てて2人は剣を交える。

他の音は聞こえない。

見えない。

ただ聞こえるのはお互いの剣が交じる音。

見えるのは強敵を前にして笑う相手。


エリスが魔剣レーヴァテインに魔力を込めて構える。


「ーー【炎熱斬滅(ヒートブレイブ)】ーー」



激しい炎の音と共に豪炎を纏った斬撃が俺に迫って来る。

俺は後ろに下がらず前に出て合わせる。


その一撃を受けた瞬間ーー俺の視界に入ったのは、もう一つの魔剣ライオット。


「しまっーーー」


「喰らいなさい!ーー【紫電一閃】ーー!」


研ぎ澄まされた雷の一閃が俺を斬る。


「ーーッ!?反応された!?」


が、ダメージは少なく俺の脇腹を僅かに掠めた程度で終わった。



「驚いた。魔剣の力だけじゃない。君の努力の結晶が今の一撃に滲み出ていた。良いのをもらった。」


俺が、エリスを褒めると「ハッ!」と笑いながら発言する。


「その割には全く応えてないわね。余裕ぶってなさい。直ぐにその減らず口を叩きのめしてやるわ!」


そう言って彼女はさらにスピードを上げて斬り掛かって来た。

さっきより数段も速い。

受けても受けても両方の剣から放たれる斬撃と炎雷が次第に俺を追い詰める。


俺は地面を蹴り、地面の一部を隆起させエリスの視界を遮る。


「ーーッ!?」


エリスが隆起させた地面を真っ二つに斬り落とすと同時に俺が狙いを澄ました突きを放つ。

俺の剣がエリスの剣を弾くと同時にエリスの腹部に回し蹴りを喰らわせる。


エリスは剣で受け、吹き飛ばされながら空中で体制を整えて着地する。



「ハァァァアア!」


エリスが更にスピードを上げる。


「ーー【雷炎連斬ツインスラッシュ】ーー」


彼女がそう叫ぶと常人ならば目視出来ない程の火と雷の斬撃を繰り出して来る。俺は全部危なげなく受け、魔力を込めて龍剣から放たれる強烈な風圧を発動させる。


彼女の攻撃が止む。俺は傷一つ負っていなかった。


「これでも決まらないなんて。単純な剣才の差?こんな相手初めてよ。それとも魔力の差?」


「いや、剣才も魔力量も君は今の状態の俺に遅れを取らないよ。」


「じゃあ何がーー」


「経験の差が違う。君も相当な場数を踏んで来たんだと思うけど俺はもう数え切れない程の死線を潜った。」


「なら力づくで埋めてやる!」


彼女は俺から距離を取り浮遊魔法で空に浮かび詠唱を始める。魔力がエリスに集中する。どうやら特大な魔法を使うっぽい。


俺は楽しみで仕方なかった。次はどんなすごい事をしてくれるのかと。


「まずは貴方を絶対に逃がさないーー【火の(ファイア)大円高壁(サークルフォール)】ーー!!」


彼女がそう唱える。

そして自分を囲む様に燃え盛る巨大な円状の壁が現れた。

熱い…炎壁の中は地獄の様な暑さを感じさせる。

炎はやがて激しい轟音を立てて一気に燃え広がる。


ふとエリスを見上げると、バリバリと体中に雷を纏い詠唱をしていた。

随分と長い詠唱…そして聞いた覚えのある詠唱。

成程、あの魔法か。


「『天の(いかづち)よ、我が身に宿り、かの者に裁きを与えよ!』」


すると訓練場が暗くなり、上を見上げると巨大な雨雲が空一帯を覆い被した。


「喰らいなさい!私の全力の一撃!

ーーー【神々の定めし運命(ラグナロク)】ーーー】」


その瞬間ーー巨大な雨雲が光を纏い轟音を立てて無数の雷が俺目掛けて降ってくる。

全てを穿つ光の雷がじわじわと迫って来る。

これは流石に、回避は不可能。


俺は床に手をつけて詠唱し魔力を込めて唱える。


「光魔法ーーー【十字の反射魔法障壁(クロスミラーフォール)】ーーー」


すると光の魔法で作られた十字架の壁が出てきた。そして俺に向けて放たれた雷が反射し逆にエリスに襲い掛かった。


「嘘!?クッ!!キャァァァアーーー」




     ーーーーーーバリバリバリ!ーーーーーー


エリス反射した自身の魔法に避け切れず自滅してしまった。

彼女はそのまま空中から地面へと落下した。

し、死んでないよな?俺は内心焦っていたが心配は杞憂に終わった。


「驚いた。まだ立てるのか、、、、」


そう、先程の電撃で少し焼け焦げた肌と汚れた制服の少女がふらふらになりながら立ち上がったのだ。

魔剣ライオットの効果か…それが無ければ彼女は立つことさえままならなかっただろう。


「はぁっ、はあっ、…負けられない、負ける訳にはいかない、、、」


エリスが、右目に付けていた眼帯に手を掛けた。


「覚悟しなさい。」



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