第三話 担任
今日から俺の学院ライフが始まる。
専用の制服を着て、王立パラディン魔法騎士学院の門を潜る。
クラスは主に三つに分けられている。俺は、一年A組だった。
しかし、なんで俺が優秀な人材が集まるA組なんだ?ちゃんと平均で統一したんだけどな。
教室に入ると一気に注目が集まる。冷たい視線が俺に向けられる。
(おいおい、なんで『無能』が?)
(何か絶対に不正をしたのよ!)
酷い言われ様だなーーと思いつつ自分の席に着く。
数分経った頃、教室の前の扉が開けられる。
すると、右眼に眼帯。赤いポニーテールの髪と赤眼の女生徒が入って来た。
彼女もAクラスか、当然か何せ首席合格だもんな。
すると野次馬もザワザワ騒ぎ出す。
(本物だぞ!エリス・ヴァレンタイン様だ!)
(生で見ると、可愛いなぁー!)
エリスは、野次馬を無視して俺の隣の席に着く。
「よぉ。また会ったな。隣よろしく。」
「気安く話しかけないでくれる?」
「すまない。俺の名前はレイだ。」
「人の話聞いていた?」
俺は、彼女の言う事を無視して話し掛けた。
「なぁ?気になってたんだが、お前と姉ーーー」
「席につけ。」
俺の言葉を遮り扉を開ける音と共に女性の声が教室内に響いた。
「今日から君達の担任のイザエラだ。よろしく。」
どうやらこのAクラスの担任らしい。
いやーエリスといいこの学院の女性は綺麗な人が多いな。
すると一人の生徒が手を挙げる。
「先生!質問があります。」
「聞こう。」
「なぜこの優秀な人材が集まるこの学院に『無能』である男がこのクラスに?」
たしかにそれは俺も不思議に思っていた。
俺は、筆記試験も実技試験も平均以下で調節したつもりなんだが。
するとイザエラはふっと笑い生徒に返答する。
「その内わかる。」
そう言って彼女は別の話をし始める。
それはこの学院についての説明だった。
その中で俺が気になったのはーー
年に一度、学院で行われる剣舞聖祭予選大会が行われる。
剣舞聖祭とは、名だたる学校の生徒から代表を集めて、魔法騎士の頂点を決める大会の事。
優勝すれば、卒業後に騎士団への入隊もしくは宮廷魔法師団への出世が約束される。
予選大会では、まず各学年で、代表を決めて残った通過者の中から更に人数を絞り本戦に出場出来る。
「因みにベスト4に入った者が負けても別に代表落ちする訳ではないが…本戦のトーナメント戦に於いて選択権が無く勝手に組まれるだけだから心配はしなくていい。
が、この剣舞聖祭では、一年生は未だかつて本戦の代表に選ばれた事はない。」
それもそうか…
一年生はまだ未熟な者が多いため、一年先に入った先輩方は最高峰の学校で厳しい特訓を詰んでいる。
当然、その特訓に見合う実力が付いているのだろう。
自身はともかく他の連中には少しキツいだろうな。
「今年こそは最終予選を勝ち残り君達が代表を手に取ることを願っている。」
そう言いながらイザエラは、エリスの方を向く。
当のエリスは、何か気に入らないそうな顔をしていた。
「では、最後にこの学院では常に生徒同士でに高め合う事が決められている。」
「つまり、常に少人数で動くって事ですか?」
「そう言う事だ。事前に組むパートナーを決めている。今から発表するから良く聞く様に。」
するとイザエラは、生徒一人一人の名前を呼び、パートナーを組ませ始める。
大体一組四人程だ。
って待て、このまま行くと俺は2人で組むことになってしまう。
俺の名前が中々呼ばれない中、エリスの名前も呼ばれない。
まさか…
「ーーでは、最後のペアは、エリス・ヴァレンタインとレイの2人だ。以上だ、意義異論は認めん。」
「ちょと待って下さい!なぜ首席の私が、『無能』と呼ばれている男となのですか!?」
そうだそうだ!
「ふっふっふ、直ぐに分かるさ。お前に丁度良い相手だよ、エリス・ヴァレンタイン君。」
「……ッ!?」
意味深な笑みを浮かべてイザエラは、教室を後にする。
まさかな
◇【エリス・ヴァレンタイン】◇
私はずっと気に入らなかった。
気安く私に話しかけて来るこの男を。
でも、剣の撃ち合いでは、手加減してるとは言え私の苦手な所を的確に狙って来る。
私が少し本気を出して打ち込んでも上手く避けられる。
ある日私は、右目の眼帯を外して魔眼の力を使って彼の事を観た。
この魔眼で視た者の魔力の有無と色を視る事が出来る。
魔力が無い者は、色が真っ白で、魔力の流れが全く無い。私は彼を視た時は驚愕した。
無能と呼ばれた男は、膨大な魔力元素を流していたのだ。
その魔力は私を凌駕しているようにも見えた。
驚愕せざる得なかった、あれ程の魔力元素を持っている人間など生まれて初めて見たからだ。
そして同時に気に入らなかった。
何故、これほどの力を持っているのにそれを出さないのか。
ずっと努力してきた私が馬鹿みたいにで仕方ない。
私は直ぐにいつも何か意味ありげな言葉を発するイザエラ先生の元へと向かった。
イザエラ先生の部屋を訪ねると待ってましたと言わんばかりに仁王立ちしていた。
「そろそろ来る頃だと思ったぞエリス・ヴァレンタイン。」
「聞きたい事があります。レイという生徒の事についてですが。」
「なんだ?」
「彼は何者なのですか?」
「どう言う意味だ?」
「私が魔眼の力を使って彼を視ました。常人ならあり得ない程の魔力量がありました。彼は何故『無能』と呼ばれているのですか?」
「アストレア家を知っているか?」
イザエラ先生が私に質問を投げ掛けて来る。
「はい。騎士の家系ガリバー・アストレア殿ですね。」
「そこにある少年が居た。その少年は剣の才も魔法の才もない『無能』と呼ばれた。そして家を追放されこの学院に来た。」
「まさか、それがレイさんだと?」
「そう言う事だ。あの家の者なら何かしら力があるのかもしれないだろう?」
「答えになっていないと思いますが?」
「つまり答えるつもりが無い…と言う訳だ。自分で確かめてみろ。決闘をするなら訓練場を貸し切ってやる。」
「そうすれば彼の化の皮が剥がれると?」
「お前が、奴を本気にさせればな。」
「分かりました。必ず彼の正体を暴きます。」
「期待してるぞ。騎士の家系ヴァレンタイン家三女『雷火姫』エリス・ヴァレンタイン。」
「はい。」
私はそう言って部屋を後にした。
すると廊下で偶然にも彼に遭遇した。
私は、彼に決闘を申し込んだ。答えはYES。準備は整った。
絶対に化の皮を剥いでやる。完膚なきまでに叩きのめして一歩でも姉様達に肩を並べられる様に。
そんな事を決意しながら宿に戻るのであった。