5〜これは奥手な僕が好きな子に話しかけるだけのお話である〜
もう秋が終わり葉っぱが落ちる季節になった今日、僕は家を出た。
鞄の中には必需品と筆記用具、そして——お弁当。一つは空の綺麗なお弁当。もう一つは朝急いで作った弁当。
そして今、僕は教室に居る。
無事に午前中が終了した。そして始まったのだ、昼休み時間が……。
(無理だ……)
覚悟を決めたものの……いざ実行に移そうとすると途端にビビる。
今日は空気を読んだのか、いつも居る二人組もこの教室には居ない。とどのつまり、僕と鈴木さんだけなのだ。
(……これもこれで気まずいが……噂になるよりはマシだ)
と自分に言い聞かせた。
「ダメだな」
と僕は呟いた。
そして、覚悟を決めた。
「よし」
ここには僕と鈴木さんしか居ない。誰も、僕を邪魔できない。
だから……今この瞬間!
(ありったけの勇気を込めて!!!!)
そして、僕は席を立った。その音を鈴木さんも聞いたのだろうか、チラッとこちらを見た。そして恥ずかしそうに頬を赤らめた。
(頑張れ!頑張れ!勇気を絞れ!)
そして、僕はお弁当を『二つ』持って、鈴木さんの前に立った。
……だが、
(なんて言えばいいんだぁ?)
頭の中がおかしくなりそうだ。鈴木さんが空を舞っている幻覚が見える……
「あの……恋歌君……どうかしたの?」
——失望した。また先に話しかけられなかった自分を。
「ダメだね……また鈴木さんからだ」
と僕は言った。そしてパンッと僕は自分の頬を叩いた。
「ッ!どっどうしたの……鈴木くん」
(大丈夫。大丈夫だから!勇気を出せ《《俺!》》)
「鈴木さん!」
「はっはい!」
ここまで来るのに、沢山努力した。親友や親友の彼女さんに協力してもらったおかげだ。そのおかげで今、僕はここに居る。二人の期待を裏切るわけにはいかない。
「あの……よかったら一緒にご飯食べない?あと、昨日はありがとう!お弁当!」
と僕は言い、お弁当を前に突き出した。
(……言えた?)
「鈴木さん……」
その時の鈴木さんの顔は二度と忘れられないだろう。なんだって、初めての……鈴木さんの笑顔を見たのだから!
「恋歌君……私も、私も一緒にご飯食べたい!」
「……うん」
そして僕は、鈴木さんと一緒にご飯を食べた。
お幸せに^^