間違っている
前世の記憶から引っ張り出して、乙女ゲームのシナリオを思い出して見る。
この学園の高等部に私が入学するところから物語が進んでゆく。そしてなんやかんあって攻略対象キャラたちにちやほやされて誰かと結婚する。
ちなみに、その何やかんやの内容を私はいまいち覚えて居ない。
…だって、面白くなかったのだもの。
なんでこのゲームを買ったのかと聞かれると通販サイトの売り上げランキングでこれが上位だったから、それだけ。
まあ、キャラ達に出会っていけばそのうち記憶が戻ってくれるかも知れない。
「…でも、入学前に記憶を思い出したのはラッキーね。」
私が思い出したのは昨日。入学まであと一週間ほどある。それまでに私とロザーナの運命を変える方法を考えなくちゃ。
たしか、ロザーナは第一皇子の婚約者だった。その婚約者がリーフに好意を持つようになり、次第に二人は恋仲となる様子を見てロザーナは嫉妬に駆られ、私をいじめるようになった。
それを知った第一皇子はロザーナとの婚約を破棄し、ロザーナを処刑にした。
と、こういうストーリーになっている。
つーか、好きな女の子がいじめられてたの見て自分の元婚約者処刑にするかね。
………するか、このばか皇子は。
何故、ばか皇子と呼んで居るのかの由縁はもちろん私の大好きなロザーナとの婚約を破棄したからである。
ロザーナはあの色恋に浮かれているばか皇子の変わりに仕事をこなし、常にテストも上位をキープしながら、皇子の婚約者としても勉強も怠らなかった。そして、強く気高く美しかった。
…前世の私にないものを全て兼ね揃えていた。
正直いじめと言っても大したことではない。
ロザーナに呼び出され「皇子には私という婚約者が居るから手を出さないで!」と言われたまでである。
そう、正論である。
全くもってロザーナは悪いことをしていなかった。
皇子の婚約者になるべきだったのは間違えなく、途中から割り込んできた可愛いだけが取り柄のリーフなんかではなく、ロザーナだったのだ。