神様による世界構築
「こうもたくさんあると、圧巻だな。」
大きなモニターが目の前に二つ。
一方の画面にはロールプレイングゲームの広大な土地のようなものが広がっており、もう一方にはこれまたロールプレイングゲームに登場しそうな姿形をしたヒト、モノ、ケモノがずらりと映し出されている。
モニターを一瞥し、次にやることを頭の中で何度も確認する。大丈夫、やるべきことはやった。
あとはこの空っぽの箱庭にヒトを移し入れるだけ。それで、新しい世界が一つ生まれることになる。
ヒト、といっても実際に生きている人間を入れる訳ではない。そんなことが出来るのならばとっくにこちらの世界で神様になっている。神様っていうより魔王様か。
私が「ヒト」と呼ぶそれは、「性格」に肉付けして出来たもののことを指す。
まず、既存のものを参考に、独自の性格診断テストを作成し、全国からモニターを募集しテストを受けてもらい、何千通りもの「性格」を収集した。
そのデータを取り込み、「性格」一人一人に対し、
まずは名を、次に姿形を、最後に花を与えた。
自身で決めたいというものもいれば、全て任せるというものまで様々であったが、これが「性格」の違いなのだろう。それこそが実験の成功を示しているようで、内心安堵したものだ。
さて、舞台は整った。この後どうなるかはまるでわからない。けれど、万事上手くいく、私ぐらいはそう信じていなければならない。今更悩んだってしょうがないのだ。ちゃんとこれから始まる世界の創造主たる自覚を持たねば、あの子に合わせる顔がない。
呼吸を整え、最後の一人のチェックに入る。名は有栖川雪兎、年頃は17くらいの三つ編みロング、選んだ花は…
そこまで読んでふっと笑みが漏れた。
「これは期待していいものか」
最終チェックを終え、いよいよその時がやってきた。
転送ボタンを、ポチり。それで、終了。
世界の始まりってのは、思ったよりあっけないものだな。
なんて、少し神様ぶってみる。
「上手く、いくといいな」
その声には、確かな期待と、幾分かの悲壮さが入り混じっていた。