隷属の首輪
あれからどれだけ距離を離せただろうか
奥に行くにつれ木々は大きく太くなり怪物の数は多くなっていった
フラフラする頭で自分の体を見る
手はボロボロになり、体のあちこちに擦り傷がついている
体力は生命活動に必要なもの
再生が出来ないということはおそらく生命活動に必要な体力ギリギリしか残っていないと言うことだろう
無理矢理使えなさそうなこともないだろうが、使えば死んでしまうのだろう
周りにはギャアギャアとうるさい怪物ども
気配消しを使っているから狙われないものの、使ってなかったら即座に狙われることだろう
こっちをジッと見てくるやつもいるけど離れると見えなくなるみたいだ
体を休ませよう
今日はもう疲れた
嗚呼、もう何も考えられない
そうして眠りに落ちていった
●○●○●○●○●○
「ハァッ、ハァッ、やっと、見つけた」
目の前には木を背もたれにして倒れている傷だらけのラプター
私を初めて倒してくれたラプターがいる
このラプターを見るだけで体が火照ってくる
特に下半身が、燃えるように
見るだけでもこんなになるのに、今考えていることをしたらどうなってしまうことやら
ここは進化の森の中部
ステージⅠが一番弱い場所だ
前の遠征で深部から帰ってくるときに一番苦労したところだ
ここのせいでステージⅠのゴライアスにすら命懸けだった
なんせうじゃうじゃと出てくるからな
そこを狙らったのがこのラプターだ
私は小さい頃から強かった
誰にも負けないくらいに強かった
そして今までも負けてこなかった
このラプターに会うまでは
言い訳はいくらでもできる
装備が破損していたから、疲れていたから、不意討ちだったから
でもここでは命のやり取りをしているのだ
こんな言い訳は通じない
私は負けたのだ。生まれて初めて
そう思った瞬間、顔が赤くなり体は火照っていった
簡単に言おう
私は恋をしたのだ
この獣に、人類の敵とも言うべき怪物に
この気持ちをわかってくれる人はいないだろう
この気持ちを打ち明けた瞬間周りは全て敵になるだろう
でもこの気持ちを押さえることはできない
このラプターと一緒にいたい
このラプターとそういう、こともしてみたい
私だってそういう年頃だ
そういうことを全て解決してくれる物が私の手にある
『隷属の首輪』、これは抵抗のない相手に着けると着けたものへ隷属するという恐ろしい首輪だ
これを着けたらこのラプターは怒るだろうか?それとも悲しむだろうか?
どちらにしろいい感情は持たないだろう
それでも、そう思われても一緒にいたい
寝ているラプターの首にそっと、首輪を着けた