<96> 理想と現実
人は、こうあって欲しい…という理想を抱く。だが、世の中はそう甘くなくホロ苦(にが)いもので、理想とかけ離れた姿を現実は見せる。そのギャップを分析することで、両者を繋ぎ合わせる手立てはないものか? と首を捻るのも一興だ。物好きな人もいるもんだ…と思われる方は、熱々(あつあつ)のオデンで一杯やりながら、テレビでも観ていて下さればそれでいい。^^
夕暮れどきのとある駅近い、オデンの屋台である。通勤帰りのサラリーマンが二人、寒そうに暖簾を上げ、腰を下ろした。
「親父さん! とりあえず熱いのを一杯とハンペン、コンニャク!」
「へいっ!」
「俺も熱いのとガンモ、ゴボ天!」
「へいっ!」
「いやぁ~! こう寒くっちゃ参っちゃいますよっ!」
「? 今日はまだ、暖かでしたよっ!?」
「ははは…親父さん。そうじゃなくって、世の中の景気ですよっ、景気!」
「? 景気…ダメですかっ?」
「こいつが言うとおり、ケーキというよりかパンくらいですね。ははは…理想と現実ってのはっ!」
「ははは…昨日の中継では、よさそうな話してましたよ」
「へぇ~、親父さんも難しいの観るんだねぇ~」
「いやぁ~、ラジオのチョイ聞きですよっ!」
「そういうところもある・・ってだけの話でしょ!」
「ははは…そうそう!」
「へいっ、お待ちっ!」
コップに熱燗が注がれ、湯気が立つ皿が置かれる。
「現実も湯気が立ってもらいたいものだなっ!」
「ははは…そうそう」
分析の結果、理想と現実は温度差に例えられる。^^
完