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<44> 寒い

 冬に近づけば当然、寒くなるが、その寒いという言葉を分析すれば、なにも寒暖かんだんだけに使われる言葉ではないことが分かる。たとえば、「ワッ、寒ッ!」 と、聞こえた場合、その言葉の真意として、[1]冷えて寒い、[2]言われたダジャレとかがまずく、その場の雰囲気が冷える。あるいは、とても笑えない・・といった二通りに分かたれることが分かる。

 一人の老人が古びた居酒屋でだんを取りながら一杯やっている。昔ながらの練炭れんたん炬燵ごたつの上に金網かなあみを置き、さらにその上には美味うまそうに焼けた油揚あぶらあげがこうばしいいいにおはなつ。すでに前もって薬缶やかんの中でかんされた酒をチビリチビリとやりながら、老人は焼けた熱々(あつあつ)の油揚げを小皿の醤油につけ、美味おいしそうに頬張ほおばる。顔がほんのりと赤味を帯び、老人はなんともいえないような笑顔で気持よさそうだ。

「おお、寒いっ! …ほう! 一杯、やられてますなっ!?」

 もう一人の老人が身体からだふるわせながら店へ入ってきた。顔馴染かおなじみなのか、二人は顔と顔で挨拶するだけで、多くを語らない。入ってきた老人は向かい合いの椅子へ、練炭炬燵を取り囲むように座る。

「同じでよろしゅうございますかなっ?」

「ああ、はい。いつものように…」

 店主との会話が、このひと言で、すべてがこと足りるのは、常連の強みだ。

吟醸ぎんじょう常夏とこなつで寒さがやっつけられますからなっ! ははは…」

おおせのとおりでっ! ははは…」

 談笑しながら飲み食いし、寒い冬の夜が過ぎていく。

 寒い・・を分析すれば、このように酒のさかなになることもある。だが店主は、二人の会話をいつも寒いっ! と感じて聞いている。^^


                  完

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