<4> 売れ筋(すじ)
商品には売れ筋・・というものがある。買い手の需要が高いものが売れ筋ということになるが、さて、何が多く売れるだろう? と予測して、売れ筋になるに違いない…と仕入れ量を増やしたところ、それほどは売れず、ストックを抱える・・てなことにでもなれば大ごとだ。ここで頼りになるのが過去の分析データである。去年はコレほど売れていたんだから今年はナニぐらいだろう…と目論む訳だ。ただ、このデータも、その年の流行りには歯が立たない。流行は当然、ブームで売れ筋になる。といって、大量に仕入れれば、売れ残って在庫となるから厄介だ。そんなことで・・でもないが、売れ筋の分析は緻密さを要求されるのである。
多くの在庫を前に販売部長の漆は頭を抱えていた。考え倦ねていたという意味で、決して両手で頭を持っていた訳ではない。^^
漆の予想では、在庫の商品は飛ぶように売れ、恐らく底をつくだろう…という読みだった。ところが、いざ発売の日を迎えると、陳列された商品の前には人っ子ひとりなく、閑古鳥がアッホ~~アッホ~~! と郭公のように啼いてはいなかったが、静まり返っていたのである。
漆は売れ筋を読み間違えた自分の分析の甘さに、クック~…と、鳩のような小声で咽び泣いた。そのとき、常務の割箸が倉庫へ入ってきた。
「漆さん! うどんやラーメンに君は合わないよっ!」
「はぁ?」
「まあ、そういうことだっ! ははは…」
割箸はポ~ン! と軽く漆の肩を叩くと倉庫から出ていった。
売れ筋の分析は常識の範囲内が安全のようだ。^^
完