<31> 気分
人の気分を細かく分析すれば、多岐に分かれる。そんなもの、分析しなくていいっ! と言われる方は、カレンダーを見ながら、今年も残り少なくなったなぁ~などと気楽に欠伸をしていただいていればいい。^^
さて、気分だが、その人の心の在りよう、性格、取り巻く外的環境の状態、健康状態etc.種々(しゅじゅ)の要素が微妙に絡まることにより変化することが分かるが、その変化のメカニズムは非常に難解なのである。というのも、外的環境の状態の一つをとってみても予測不能なくらい先々で変化をするからだ。当然、その影響を受ける人の気分も、その時々で様々(さまざま)な変化を見せることになる。
とある漁港である。多くの小型漁船が係留されている。
「ああっ! 気分がいいやっ~~!!」
夜の漁から帰ってきた若者が茹で上がった蛸のような日焼けした顔で両手を広げ、ひと声、張り上げる。どうも豊漁のようだ。そこへ一匹の猫がヒョコヒョコと貫禄よく現れ、小さく「ニャァ~~~」と低い声で鳴いた。
「おう! 父っつぁんっ! お前も気分がよさそうだなっ! ホレッ!」
若者は船べりに放置された数匹の魚をヒョイ! と船上から岸壁へ軽く投げる。父っつぁん・・と名づけられたその猫は、その魚をゆっくりと慌てることなく、食べ始める。どうも、この辺りを領分[テリトリー]にしているボス猫のようだ。その証拠に、他にも数匹の猫が遠くから様子を窺うが、決して近づこうとはしないからだ。それが分かっているのか、父っつぁんは軽く食べ終えると、半分ほどを残し、満足げに気分よく歩き去る。人の場合だと、波止場のマドロスは格好よく立ち去る・・とかだろうが、猫だから、そう格よくはいかない。とはいえ、猫達を気分よく一瞥し、『あとは、お前達で食いなっ!』とでもいう感じで貫禄十分だ。それを見る若者が、またひと声、気分よく張り上げた。
「よっ! 千両役者!! 日本一っ!!」
数匹の猫は、我先にと残された魚に食らいつく。食いそびれた猫は、気分悪げに歩き去る。
気分は、こんな感じで現れるようだ。^^
完




