<3> 我儘(わがまま)
自分の思い通りにならないと、ご機嫌が悪くなる・・この心理を我儘という。分析すれば、世の中は個人中心に動いている訳ではなく、当然ながら自分の思い通りにいかないのが常である。多くの人々はある時は折れ、またある時は妥協して世知辛いこの世を生きている訳だ。むろん、折れたり妥協する必要のない少数の人々は、思い通りにならなければご機嫌が悪くなり、意固地になったりする。これが我儘と呼ばれる性質のものである。この我儘はその人自身が考えを悔い改めない限り、決して治ることがない病のようなもので、始末が悪い。
とある大実業家の我儘に育てられたドラ息子が、偶然、目に留まった洋服店で買い物をしている。
「これ全部、買います」
「いや、それは…」
「買えないのっ? 爺、らしいよっ! なんとかしなさいっ!!」
「は、はいっ! かしこまりましたっ!!」
ドラ息子の我儘に、いくらなんでもそれは…と思いながら、お付きの執事は真逆の言葉を口走った。
「そう申されましても…」
間髪置かず、店員が執事の心を代弁した。そのとき、若い一人のヤンキーが店に入ってきた。
「オッ! コレいいやっ! コレ、買うぜっ!」
「ダメだよっ! これは僕が今、買ったから僕のものだっ!」
「何、言ってんだっ、こいつっ!! どこにおめぇ~の名が書いてあるってんだっ!! おおっ!」
若いヤンキーは凄んだ。
「じ、爺っ!!」
ドラ息子は震え声で執事に下駄を預けた。
「まあまあ、そうおっしゃらず、これをっ…。他のお店で、おひとつなんとか…」
執事は鞄から100万円の札束を三束取り出すと若いヤンキーの前へ突き出し、手渡そうとした。
「オッ?!! おお…」
若いヤンキーは札束に凄まれ、抗うことなく札束を受け取ると店を出ていった。
この世では金がモノを言うと、我儘も通るようだ。^^
完