<17> 読み方
読み方は、ややこしく、人気は人気とも読めるし人気とも読める。ルビを振らない限り、漢字はどうにでも読めるからだが、どう読もうと本人の勝手である。ただ、世間で普通に通用している呼び名があり、本人の気持を阻害して『そう読むんですっ!』と目に見えないフォース[霊力]で威圧されれば、『そ、そうなんですか…』と従わざるを得ない。
麗らかに晴れ渡った初春の昼下がりである。日向ぼっこをしながら何の心配もなくなった気楽な二人の老人が大相撲の話題で盛り上がっている。
「ええ、そうですなっ! と、なれば、そろそろ、追手鍋は大関候補ですかなっ!」
「ツイテナベ? ああ! 追手ですか?」
「オイテナベ? ああ、そういう読み方でしたか?」
「ええ、まあ…。世間ではそう呼んどりますからな」
「さよですか。私は、てっきりツイテナベかと…」
「ははは…まあ孰れにしろ、ナベは同じですな、ははは…」
「ははは…ナベはっ! 今夜は寄せ鍋にしますかな」
「それはいいですなぁ! うちもそうしましょう!」
分析の結果、読み方は美味しいもので、どうでもよくなるようだ。^^
完