<12> 風
風の吹くまま気の向くままよぉ~! ・・という演劇の決め台詞がある。股旅姿の主人公が劇の最後で呟く格好いい台詞だ。
風は見えず、その日次第で方向を変えて吹くまったく得体の知れない代物だが、人の世には欠かせない存在だ。金融・経済に吹き荒れる景気風、気象で寒さの代表格の北風、風向きが怪しいなどと表現する情勢の風と、分析すれば、世の中にはいろいろな風が吹く。煽って倒れさせる間抜けな人に吹く突風も時折り吹く。^^
どこにでもいるような二人の男が、どこでも聞くような世間話をしている。
「どうなんです?」
「なにが?」
「風ですよ、風っ!」
「いや、さっぱりです、株はっ!」
訊ねられた男は、市場の株価を思った。
「いや、そうじゃなく、風ですよ、アノ風!」
「アノ風? …アノ風といえば、ああ、アノ風ですか?」
「ええ、ソノ風です」
「今一つですね。なにせ、ここんとこ天候が…」
否定された男は次にスポーツで天空を舞うハングライダーの風を思った。
「違う、違うっ! 風といえばっ!」
「ははは…うちは家庭円満ですからっ!」
続いて訊ねられた男は夫婦仲を連想した。
「もうっ! 分からない人だなっ!!」
訊ねた男は、とうとう棒を折った。訊ねた男の風は最近、流行りつつある風邪だった。
風に邪気が入れば風邪となる訳で、分析できないほど風は多様なのである。ただ吹いているだけ・・という歌詞の♪歌♪もあるくらいだ。^^
完