<11> 準備
何をするにも準備は大切である。これをいい加減にしたり怠った挙句、大失敗してド偉いことになったりする。下り坂の日に家を出るときの雨傘、暗い夜道の懐中電灯、料理前の食材の点検、浴室の残り少ないボディ・シャンプーの予備買いetc.・・枚挙に暇がないほど私達の生活の周りには準備することが渦巻いている。だから、準備をしているうちに次の準備が必要となり、その次の次の・・となって人生がお終いになるという趣向だ。^^ まあ、いざというとき、同じ準備した予備があれば安心だが、アレがないとアンナときアアなって困るに違いないっ! と、当分の間、使わないものまで備ておくというのも、いかがなものか? とも思えるのだが…。^^
とある家庭の歳末風景である。日曜ということもあり、朝から家族全員で大掃除が行われている。
「おいっ! 洗剤が切れたぞっ! 確か…予備があったよな?」
「と、思うけどっ!? そこの収納箱に入ってないっ!?」
妻は直球でぞんざいに返した。手が離せない片づけ物をしていた・・ということもある。夫は、収納箱を開け、ガサゴソと探し始めたが、一向に予備の洗剤が出てくる気配はなかった。
「ないぞっ!」
「怪しいわねぇ。…あっ! それが予備だったかしら?」
「おいおいっ! 頼むぜっ!!」
「なければ、水だけでいいからっ!」
「それでいいのかっ?」
「ええ…」
妻に言われた夫は、拭き掃除の続きを始めた。そして、ようやくすべてを拭き終えたときだった。
「父さん、これっ!」
子供部屋の掃除を終えて現れた子に、夫は一本の洗剤を差し出された。よく見れば、未使用の予備だった。
「んっ? どこにあった?」
「? どこって、そこの棚の上」
「あっ! そうだった、そうだった!」
夫は洗剤が足りなく思え、掃除を始める前に収納箱から予備の洗剤を出し、棚へ置いておいたのだ。そのことを、ついうっかり忘れてしまっていた・・と、経緯はこうなる。
分析の結果、準備した予備があっても予備にならないときもある・・というお粗末なお話だ。^^
完