<100> 分析
分析は多岐の分野で活用される手法の一つである。では、その分析を分析してみよう。^^ 分析を分析するんかいっ! つまらん分析ぐせがついたもんだっ! と、お怒りの方もおられると思うが、この短編集の最後として、やはり分析の分析は、しておかない訳にはいかないだろう。^^ いやいやいや、そんなことはないっ! とお考えのお方は、美味しい鰤しゃぶでも味わっていて下さればそれでいい。^^
とある駅から少し離れた路地の片隅で、占い師が椅子と机を置き、占いをしている。八卦と縦長に書かれた燭台の墨字が蝋燭の灯りに不気味に揺れ、漆黒の闇に浮かび上がる。街灯がなく細い裏通りだけに、余計に不気味だ。しかも、人通りはほとんどない。その通りを一人の通勤帰りの男が、ホロ酔い状態で占い師の方へ近づいてきた。
「これ! そこのお方っ!! どうです? 見料は半額しておきますから、ひとつ分析をしてみませんかなっ?」
声をかけられた男は占い師の前で、はたと止まった。
「…分析?」
「そう、分析でござる」
「…占いでしょ?」
「はいっ! 占いは分析の一つですからな。ははは…」
「面白いお方だ。気分もいいことだし、その分析とやらを、していただきましょう!」
男はホロ酔いの勢いも手伝ってか、占い師の前に置かれた椅子へドッカと腰を下ろした。よく見れば[見料 二千円]の墨字が小さく縦木に書かれ、置かれている。
「人事が近いんですが、私、どうでしょう?」
「どれどれ…」
占い師は筮竹を数回、呪文のようなものを呟き、起用に振り翳すと、より分けた。
「おおっ!」
「どうですっ!」
男は占い師へ、にじり寄った。
「う~~~むっ! あなたはヒラがお似合い・・と、出ておりますなっ!」
「…ヒラ?」
「そう、ヒラ」
「ヒラとは?」
「ヒラはヒラです、ヒラ社員。出世されん方が無難ということですかな、ははは…」
何が、ははは…だっ! と、男は怒れたが、グッ! と我慢して思うに留めた。
「付け加えますと、下手にご出世をなされると、偉いことになる・・と出ております。ははは…飽くまでも、分析ですがな…」
「なるほど…。いや、どうも!」
男は半額の見料を置くと、椅子から立ち上がって去った。
「分析どおり、この時間帯は一人は通るな…」
占い師がニタリとした顔で最後に呟いた言葉である。男はその後、昇進が見送られた結果、管理の連座責任を免れ、失職することなく平穏に暮らした・・ということである。
分析を分析すれば、やはり当たる・・ということになる。^^
完