<1> 人間
人間・・これ即ち、学問でホモ・サピエンスと分析されることは、多くの人々が知っている。だが、その個人を分析する学問は余りよく知られていない。…というか、学問として分析出来ないのが人間の人間たる所以なのだ。いくらコンピューターの人工知能をもってしても、人間の不可思議な知能には及ばない。その理由は、正解、不正解は別として、時折り人間が常識では有り得ない非常識な結論を導き出すからだ。無限大に近い可能性を導き出す機械をしても、この不可思議な結論を導き出せる人間には到底及ばないのである。
とあるゲームが人間対コンピューターで行われている。
「… これはっ! もはやコンピューターの勝ちですねっ!」
実況のアナウンサーが興奮気味に声を荒げた。
「いや、まだ分かりませんよっ!」
横に座る解説者が、すぐに全否定した。
「…だって、もう!」
確かに、勝負は誰の目にもコンピューターの勝ちに見えた。
「いやいや、まだまだ分かりません!」
解説者は自信ありげに言い切った。
「ははは…そんな、馬鹿なっ!」
実況アナウンサーが笑い捨てた瞬間だった。手番の人間が誰の目にも負けと思える決断の手を動かした。その手が終わった瞬間、コンピューターは理解できず、予測不能の結論を導き出して高温化し、挙句の果てに機能を停止した。
『カイロ ホジ ノタメ キノウヲ テイシ シマスッ!』
これがコンピューターが最後に発したメッセージである。
「ふふふ…これに限るっ!」
『アナタハ カンゼンニ クルッテイルッ!』
「ふんっ! 大きなお世話だっ! ははは…」
対戦する人間は機械の弱みを知っていた。^^
完