プロローグ
敵の名前はMC。
正式名称は神話生物(Mystical Creature)だったか……。
まあ、名前の由来なんてどうでもいいな。
何でそうなったのかは皆目見当も付かないが、突然、そう、いっそ馬鹿々々しい程唐突に、伝説や神話の中だけだったはずの化物達が、現実に現れ出したんだ。
問題なのはそいつらが全く友好的ではなく、町を破壊し、人を襲うって事だ。
意思疎通はとれず、こっちが辟易するほど頻繁に現れては災厄を撒き散らす、今では人類史上最凶最悪と称される敵だ。
しかも世界中どこにでも、何の脈絡も無く出現するんだから始末に負えない。
最盛期は100億近くもいた人類が、今じゃあ20億にも満たないそうだ。
徐々に数を減らしながら、何時果てるとも知れない侵略者との過酷な戦いを強いられ続けたんだ……。
地獄の様な日々。
このままでは滅ぼされるのも間近と思われたが、神はそんな哀れな人類を見放なかった。
いや、この場合、人という種の存亡を掛けた真にその最中、必要に迫られ、怪物に対抗するために進化を遂げたというべきか。
超常的な力を操る新人類、あるいは能力者と呼ばれる者達の誕生だ。
ひょっとしたら、何時何処で命を奪われるかもしれないという恐怖とストレスが、人類に急速な進化を促したのかもな。
まっ、何はともあれ、能力者達の活躍によって危うい状況を持ち直し始めて十数年、MCにも少しは余裕を持って対応できるようになってきた。
かくいうこの俺も能力者で、日常的に侵略者、化物共と戦っている。
まあ、鍛えるのは好きだし、戦い自体嫌いじゃない。
いや、むしろ大好きだというべきか。
思う存分自分の力を振るう機会を得られ、しかも敵を倒せば金が貰える上に感謝されるんだから。
それに、敵に対抗するという建前のおかげで、トレーニングに没頭していても怒られる所か、熱心だと感心されこそすれ、咎められる事は絶対にない。
不謹慎だと非難されるだろうが、この状況は俺にとって非常に都合が良い。
ある意味、最高の環境だといってもいいぐらいだ。
だからこそ、この快適さを手放さないためにも俺が有益だと、MCに対する有力な戦力だと、示し続けさなければならない。
そのためには、例えどんな敵が来ようとも打倒できる力が必要だ。
普通に考えれば、そんな地獄に身を置き、戦い続けるのは不可能だろう。
だが、俺ならできる!
俺の鍛え上げた筋肉で、どんな敵も粉砕してやるさ!!
忍雄 猛