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第1話-刹那の瞬間︰命の終点-

※ショッキングな表現あるので置きおつけください。映像化してみたいですね

 夏の昼下がり肌に突き刺さるような日差しが肌を焼き、呼吸をする度に肺が焼かれる様な熱気に襲われた。都内だと言うのに鼓膜が共振しわんばかりに蝉の鳴き声がそこら中から聞こえ苛立ちは更に募るばかりである。




 ──夏というものは心底嫌嫌気がさすな。




 日差しを避けようと右手で灼熱の太陽を覆い隠すと腕につけた腕時計が見えた。手の甲を返して見ると厳つい形をしたB-SHOCK製の腕時計が午後十三時三十四分を示している。この時計は俺の彼女が誕生日にプレゼントしてくれたものだけど、正直痩せ型な俺の腕には少々厳つく似合わない。




──毎年鬱陶しい暑さだ……折角今日は早く仕事を切り上げたってのに、暑いし喉が渇くし帰ったらビールでも飲むかな。




 俺、三神照は最近東京の田舎へ越してきた。元は田舎にある小さな営業所で働いてたけど、人で不足ということで東京本社へ転勤命令がでて2日前に来たという訳だ。




──転勤はありがちな話だけど、まさか一週間後とは酷な話だよな。全くこっちの事情も考えてくれってんだ。




 そんな上司に腹を立てながらも、空を見上げ腕で汗を拭う。苛立つ気持ちとは裏腹に雲ひとつない快晴である。

 まだ越してきてから二日しか経ってないから片付けも当然終わっていない訳だけど、こんなくそ暑い日に部屋の片付けをやる気にもなれない。

 猛暑にうんざりな俺は赤いネクタイを掴むと緩め、うなだれながら帰路を目指す事にした。



 会社が地元の不動産会社をあたり手頃な物件を手配してくれていて有り難い。しかも会社から徒歩十分くらいの所なので通勤も楽々である。



 上司に聞いた話だが東京都内だと言うのに家賃が激安で、敷金なしの1LDLで49000円と破格。値段が値段なだけに事故物件ではないかと初めは疑ったけど、そう言った事故や自殺があった訳でもない。実は心配で越してくる前に不動産会社に電話で問い合わせをして確認している。



 空を見上げながら大通りを歩いていると両側に高いビル郡が立ち並び、ビルの窓ガラスに太陽光が反射している。目に突き刺さるので視線を下げようとした。



その時──




 俺は視線を下げることが出来ない。なぜなら視線の先には人影が見えたからだ。





──マジかよ……誰か屋上にいる……




 俺は目を細め凝視してみた。黒髪の女性とまではわかるが、遠目だから髪型と背格好くらしかわからない。その女性が立っているのは6階建ての古いビルの屋上で、よりにもよってフェンス外側に立っていたのだ。


 普通目的もなくフェンスの外側に立つ人間なんていない。もし目的が有るとしたら、高所が好きな馬鹿か自ら命を絶とうとする人くらいだ。


 三神は視線を移すことが出来ず、ただ屋上に立つ女性を見ていることしか出来ない。

 後方で車のクラクションがなると俺は我に帰り、周囲を見回すと後方に横断歩道が見え、幸運にも横断歩道の信号が青点滅していたので急いで渡り始めた。



──間に合う訳ないし、赤の他人を助ける義理なんてない。でも何でだろう思いとは裏腹に体が動いてしまう。



 信号を渡り対面の歩道へと辿りついた時だ。古いビルの屋上を再確認したが女性の姿はない。そして間を置かずグシャと言う何かがひしゃげる音がすると咄嗟に見てしまった。



 足は少し開き片腕は猛獣に食いちぎられたように千切れている。俺の方を向いた顔は半分潰れ髪の毛付きの頭皮がベロンとめくれ、そこからピンク色の脳が見えた。頭や千切れた腕から流れ出る赤い血液がコンクリートを伝って歩道の植え込みに流れ込んでいる。その女は悲痛で恨めしい顔をしてこちらを睨んでいた。まるで俺を呪うように。



──先程屋上に立っていたあの女に間違いない。何故なら服装も髪型も一致してるし何よりも……



 突然胃から熱いものがこみ上げ堪らず蹲ると、食道を通り胃液と昼に食べた内容物を鉄板の様に熱くなった道路にぶちまけた。

 そして一目散にその場から立ち去ると無我夢中で走り自宅である裏野ハイツへと辿り着く。



──冗談じゃない越して来て早々自殺の現場なんか目撃しなきゃなんねぇんだよ!



 1986年に建設され築30年経つ木造の2階建てアパートで俺は203号室に住んでいる。見た目こそ古いが内装はリノベーションされ小奇麗になっているのだ。


 2階建へと行くには鉄階段を登り共用通路を歩く。内装は新しめだが何故か共用部の修繕はされてないらしく、至る所が錆びたり塗装が禿げて少し古臭い感じがする。


 部屋の前につくとポケットから部屋の鍵を取り出し鍵をあけた。部屋の扉を開くとむわっとした熱気が部屋から流れ思わず舌打ちする。


 中へ入るとリビングダイニングキッチンで、右手には風呂とトイレのある洗面室だ。

 9帖のリビングダイニングキッチンを越えるとフローリング6帖の居室がある。


 正直9帖のリビングダイニングキッチンは俺には広すぎる。何せいつも食事といったらインスタント食品かコンビニ弁当なので自炊の類はしない。


 なので広いリビングダイニングキッチンを有効活用するため引っ越しの荷物をそこに置いているのだ。


 3段重ねになったダンボールがあちらこちらに放置され、コンビニの袋にゴミを入れ捨てずに放置されてたり、飲み終わったビールの缶や飲料のペットボトルなどが散乱している。





──兎に角……顔を洗おう。まだ気持ち悪い。





 俺は洗面室へ入ってすぐの所に洗面台がありその左脇に洗濯パンがある。洗濯機を買うまではしばらくの間コインランドリーで洗濯するつもりだ。

 鏡を見ると自分の無様な顔に苦笑いするが、再び顔が青ざめ激しい嘔吐感に襲われた。





──血……あの時の……うぅおぉえっ





 また嘔吐感に襲われ洗面台のシンクに向かって吐くが先程全て出し切ったのか透明に近い薄黄色い胃液しか出てこない。


 俺の顔や服には女が落下した時にはねた血液が付着していた。血の付着したズボンとワイシャツを脱ぎ捨て、ダイニングにある中途半端にゴミの入ったゴミ袋に入れ投げ込む。

 そして再び洗面台の前に戻り、蛇口を回し滝のように勢いよく水を出すと無我夢中で顔を洗う。


 濡れた顔をフェイスタオルで拭くと、脳裏にあの女性の恨めしそうな顔が浮かび鳥肌がたった。嘔吐感はなんとか収まったが、どうしてもあの女性の顔が頭から離れない。



「くそ! 考えるな考えるな! 俺には関係ない」



 冷蔵庫からビールを取り出すとガラス小窓の付いた木製ドアを開け居室へと入る。

 居室の中にも幾つか口の開いたダンボールが放置している。空になったダンボールは正面にあるベランダへ出る窓際へ置かれ山積みになっいた。


 入り口から向かって右側にキャスター付きの折りたたみベッドがあり乱雑にされた布団ある。そしてベッドの上に無造作に置かれているテレビのリモコンを取ると、窓側のすぐ横にある空ダンボールを台にした14インチの液晶テレビへ向かって押した。




──バラエティー番組か……気が紛れるならこれでいいか。





 次に床に置いたエアコンのリモコンを手に取りエアコンに電源を入れるとリモコンを床に捨て、暫くすると冷たい風がエアコンの吹き出し口から冷たい風が流れでてくる。


 先程の出来事も吹き飛ぶような心地よい風爽快感がやってきた。まるで天国にいる様な快適な空間になるとベッドに座り片手に握った缶ビールのプルタブを起こしキンキンに冷えたビールを喉を鳴らしながら一気に飲み干す。


「くぁーっっ!! 流石に旨いな」



 ベッドに横になるとテレビを見ながらビールを飲んでいると、やがて缶ビールは空になり空き缶を床に置くとすかさず冷蔵庫へ行きもう一本缶ビールを取ってベッドへ戻る。

 横になりながらプルタブを起こしビールを飲みながら暫くテレビを見ていた。






****






 目を覚ますと窓ガラスから入ってくる朝日がみえ枕元に置かれた目覚し時計を見ると秒針は午前7時30分を指していた。

 テレビは付けっぱなしで床に置かれたビール缶を見るとあのまま寝てしまったことを悟る。




──しまった……俺としたことがやっちまったな。てか早く支度しないと遅刻する。





 ベッドの近くにある口の空いたダンボールを漁り予備のズボンとYシャツを取り出すと、急いで着替え身支度を済ませた。テレビとエアコンを消し部屋を出ると施錠し昨日の出来事もすっかり忘れ会社へと向かうのであった。


 

はじめまして、一部グロいとこありましたがたぶんこの先は大丈夫な筈です。実際に落下するスイカシーンは画像検索とかで眺めながら書いてました。

怖い話もたまにはいいですね。

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