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最近、よく怪我する。
手だったり足だったり、友達に話すと霊にでもとり憑かれたんじゃないかと笑われた。自分でもそうじゃないかと思えてならない今日この頃と考えながら歩いていたら目の前の信号が早く渡れと言わんばかりに点滅した。思いっきり駆け出した足は軽やかに宙を舞って何も無いところで躓いた。
「…めっちゃ痛い、」
これはやってしまったと痛みに堪えながら怪我の具合を恐る恐る左手から確認した。両手両足をついたのにやっぱり左手左膝は地にさえ着いてないんじゃないかと思うくらい綺麗で反対側は子供がずっこけたくらいに血でぐちゃぐちゃだった。まだ半世紀も生きてないが希に見ない怪我の仕方をしている。取り敢えず、痛くて泣きそうと言おうとしたら後ろから笑い声がした。
「ブッ、フッフフフ…ダイジョ、ブッ?
笑いながら近寄ってきたこの声は、確か聞いたことがある。誰だ、知ってるようで分からない。転けた拍子で乱れた髪の間からチラっと見たがその人は笑いを堪えきれずに顔を背けている。分からない上にこの四つん這いの状況で出会すとはどうか他人のそら似であらんことを願ってますよ神様。
「あら、本当に大丈夫?」