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あなたはゾンビになったわ

 教室の床が汚い………泥のような、ガムのような何かがこびりついている。

 誰ががこんなことを。

 いつの間にこんなことが。


 俺が靴を少し踏み鳴らすと、小さく、にちゃ―――と言う粘り気ある音がした。

 教員が見当たらない。

 先生は………担任の清田先生はどうしたのだろう、あの人は神経質だから、相当に怒鳴るだろうな。

 絶対A型だ。


 まあ俺はきれい好きではなく、どちらかと言えば少し錆びで汚れた金属製の戦車などにうっとりする性質を持っているので、俺個人としては嫌悪感は薄い。


「灰沼くん、あなたはゾンビになったわ」


 枯木は言った。

 彼女はなんとも平坦な口調で言いながら、そのまま、俺を縛っている縄をほどいていく………ゾンビ?

 何の冗談だ。

 縄の材質は知らないが、プラスチックのようなにつるつると(なめ)らかな感触であり、どこで買ったのかと不思議に思った。

 丈夫で軽量なそれを、彼女はスカートのポケットに納めた。



「立って」


「うん?」


 俺は言われるがままに、と言うよりもじっと睨まれたのでそのまま立つ。

 おそらく俺を縛って座らせていたのはお前だろうに、勝手な奴だ。

 なんなのだ?

 別に立ちくらみも何もなかったが、頭の中は色々と渦巻くものがあった。

 教室の机、どころか備品が乱れたさまを見回して、平常時ではないということだけは理解できる。

 だが、だからと言って状況がわからない。


「―――みんな、どこに行ったんだ?今、なんの授業?」


 教室は、俺を含めて四人しかいないという状況だった。

 昼間なら、何かしらの授業のはず………。

 わからなかった。

 そもそも、何の取り合わせでこの四人に?

 ていうか掃除もしないと―――そう言いかけたが、枯木や、半藤、秋里さんだって、俺をにらんでいて俺は黙るしかない。


「外を見せたほうがいいわね、状況がわからないのよ」


 これは枯木が俺ではなく、半藤たちにむけて言ったようだった。

 窓に近づいて、外を見る。

 グラウンドでは異様な光景が広がっていた。


「どう?」


「どう………って、いや、ちょっと、今考えて………」


『どれを』見ようか、まず迷った。

 生徒同士の喧嘩………のようだ。

 どれを見ようか………とりあえず一番最初に目についたもので言えば、男子生徒が男子生徒を押し倒し、その背後から、もう一人が引きはがそうと騒いでいる。


 あ、別のところでもう一人がつかみ掛かられている。

 数秒間ののちに、噛みついた。

 首元に噛みついた―――え、本気かよ。


 あとは、走り回る生徒が………いや、逃げる生徒が大勢いる。

 なんだろう、これ、暴行事件?

 俺は頭の整理をしきれなった。


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