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ルチコテ村からテ村から出発してから、星の位置がはっきりと変わっていた。

バリルが体力切れで休憩し、トングがエインセールに洞窟への方向を尋ねた。


「あっちです! 頑張って下さい。もうすぐ着きます」


指差した所を見ると、確かに幾つの灯火が有った。まだ遠い。

重い足取りで向かう。

腹が鳴く。


誰だ?


羽根を震わせる妖精に視線が集まる。

彼女は口笛でごまかした。




ーーー同時に悲鳴が周囲に響き渡る。



一気に緊張が高まる。

最初に駆け出したのは、エインセールだ。


「リーゼロッテ様ッッ!!」


「おい、待て!?」

「トング! 行って!」

「ちっ・・・!」


次にトングがバリルを背中に乗せて、妖精を追う。少し遅れて男の子がトングを追い掛けた。





閃光が走り、洞窟を囲んだ魔狼が消し飛んだ。

大声が響き、細身の男が剣を振るう。

再度狼が倒れ、爪を残して消えていく。


「動ける者は戦え! 残りは洞窟に退け!!」


夜空から更に狼が現れる。これで3回目だ。

彼らーー蒼狼は空間に広がる闇に紛れて、 奇襲したのだ。

その行為が魔法によって可能しているかを見抜くには知識が足りない。

騎士団は突如にして現れた蒼狼にじりじりと後押しされていた。

リーゼロッテは不安の渦に飲み込まれた村人達を落ち着かせる為に、洞窟の中に戻っていた。


「リーゼロッテ。大丈夫だよね? 騎士は強いんだよね?」


リーゼロッテの隣に居る小さな狼が怯えていた。彼はファニー。ルチコテ村を代表するムートメーカーだ。一見すると魔物と同じように見えるが、リーゼロッテ曰く、「大人しいし、人に傷を付ける事はしないよ! 若干大食いだけどね」らしい。


「大丈夫。 だから、怖がらないで」


そんなファ二ーをリーゼロッテが抱いて、撫でる。


「騎士の皆が頑張っているし、じっとしていれない。もう少し待ってから行くね。すぐに終わらせてくるから」




トングがエインセールに追いついたのは、彼女が蒼狼に気づかれてからのことだった。バリルは既に降ろしている。

蒼狼に集中して、攻撃される前に殴り倒す。そのつもりで、木棒スタッフ)を振るう。 結果的に当てたが、思ったほど手応えが無い。『良い攻撃』にはならなかったのだ。


これはヤバい。


直感で危険を感じ、距離を取ろうとする。その直前に蒼狼の不意打ちで痛い一撃を食らった。続いて、隣に居る蒼狼の仲間の追撃が有った。幸い、これは外れた。

爆撃に似た音が周囲に響き渡るのは、何とか蒼狼から離れた後だ。

バリルの魔法ーーー無色の空気弾ーーーである。

これにより、蒼狼達は動きを止められる。だが、その程度の傷など、大した事無いらしく、すぐに立ち上がった。


その直後、騎士達の波紋攻撃を受け、青い皮を残して消えていった。



「ありがとうございます!」


赤い布を着た少女の声が周りの人々に安堵を与えた。

蒼狼が消え、再度の襲撃が無いことを確認すると、騎士達は喜びの声を上げた。

その後、トングとバリルが騎士達に現状を聞き取りをしている間、洞窟から少女の姿が見えた。彼女ーーリーセロッテーーこそルチコテ村の長であると知ると質問攻めの対象を切り替えた。

全ての情報を交換した後、リーゼロッテから感謝されたのだ。


「いやいや、俺たちは何にもしてないし」

「その通り。私達は蒼狼が起こした騒動に巻き込まれただけ」


トングが拒否の言葉を発し、バリルが彼の後に続いて発言する。


「でも、セイアを守ってくれたり、撃退の手伝いをしてくれたんでしょ?」


リーゼロッテはそう言って、背中に隠れる男の子、セイアの頭を撫でる。セイアの両親は居ない。幼い頃に起きた魔物との全面戦争で亡くしたのだ。


「魔物から逃げたら、セイアの姿が居なくて、 慌てていたんだけど・・・・良かった! 無事に居てくれて」


セイアはリーゼロッテの袖を握ったまま、じっとしていた。 時々、トングを見ている。


「ほら、セイア! 何か言う事があるでしょ!」


「…兄さん 、ありがとう」


セイアの言葉を受け、トングは頭を掻いた。 照れくさいのだ。


「さて、話題を変えるね」


リーゼロッテは真顔になる。

緊張のせいか、トング達も背中を伸ばし、待ち構えた。


「トングさん、バリルさん・・・・という名前だったね。君達の実力を見込んでお願いをした事があるんだ。ーー村が復興するまで、ここに留まってくれないかな?」


「はっきり言ったな」

「私、トングの意見に従う」


バリルの言葉に自分の耳を疑う。


「・・・・・ちょっとは自分で考えろ」

「考えているよ。嘘は言ってない」

「オイ待てや」

「それに、メリットはある。リーゼロッテは色んな人と知り合っている。さっき聞いた。もしかしたら、マサリの情報を持っているかも」


バリルに続いてリーゼロッテが手を上げる。


「もし、情報が欲しかったらできるだけ提供する。それとクエスト協会に通じて、君達にそれなりの金を払う」


「んん・・・・・確かに俺は人捜しをしているけど・・・・・」


「どうする? 私は貴女の力が欲しいの。騎士になれとは言わない。ただーー助けて。魔物の脅威から私達を護ってよ」


リーゼロッテの声が震えていた。魔物の恐怖が耐えて切れないのだろう。

トングは長考の末、一つの答えを出した。


「分かった。しばらく滞在する」


その答えを受けて、リーゼロッテ微笑む。


「ありがとう。私達は君達を大いに歓迎するよ。よろしくね。トングさん。バリルさん」

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