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「その者達は今まで寝ていただけです! それに決して、私達に傷害を与えられないように魔法を掛けてあります! 当分は大丈夫です」


「・・・・ま、待て。お前は誰だ? 何処に隠れていた?」


トングは妖精の言葉に混乱し、支離滅裂の質問を繰り返す。


「私はエインセール。あそこに居る子供に隠れていました」


妖精ーーエインセールは後ろの体育座りをしている子供を指さした。


「え。なら、なんでゴブリンは・・・うっ!」


トングが腕を押さえて、呻き声を出し、座り込む。


さっきまで応戦した鈍器を持ったゴブリンに傷を付けられた所に、その痛みが出てきたのだ。


それを見るなり、バリルは大きなバックに手を突っ込んで、何を探すようにかき回す。


簡易応急キットを取り出した途端、松明の明かりが弱くなった。


エインセールは唖然としたが、ランタンを両手で持ち、光を強めた。


松明よりも明るくなり、ほとんど昼間と変わらない明るさだ。しかも、ランタンを見ても、不思議と目が痛めない。


「ありがとう」


これがエインセールの力だと気づいたバリルは礼を言った。


「いいえ、そういう事をするのが、私の役目ですから。・・・”導きのランタン”をもっていて良かった」


妖精は自らのランタンに感謝する。

バリルは素早くトングへの治療を始め、しばらく待ってほしいと言い出した。


それをエインセールは素直に受け入れた。


反論する理由はない。

それから、しばしの時が流れた。



トングが元気を取り戻したのを確認すると、バリルはエインセールへの質問を始めた。


「貴方の事を教えて。ここで何をしたの? ここはどこ?」


「ここはルチコル村です。私はアルトグレンヴェに居るオズヴァルトから伝達役を頼まれたんです。そこでリーゼロッテ様と軽く話していたら、大量の魔物に襲われました。たまたま一緒に居た冒険者が戦ってくれました。その後、衛兵達が来て、魔物達を撃退してくれたんです。貴方達と戦ったゴブリン達は後から来て、私達に傷を与えられないと分かった後、寝始めたんです」


「村人達は?」


「ここは危険です。洞窟へ行きましょう、と衛兵達が村民に言ってそこへ連れていきました。私は逃げ遅れた人を捜していました。発見した度に洞窟に案内しました。尚、ここに居る男の子が最後の一人になります」


「その・・・洞窟は?」


エインセールは黙って北の方へ指さす。


「ええと、子供は・・・」


バリルは子供をチラ見をする。性別は男だ。今は体育座りで爆睡している。


「度胸あるなぁ」


トングが感心して、ため息をつく。

バリルも同感だ。


「仕方ない・・・・明日、聞く」


「ああ。そうだ。ゴブリン達を縛らないとな」


「あ。それなら、さっき逃げ出しました」


エインセールに言われて、数秒遅れて後ろに振り向いた。

ゴブリン達が、居ない。

いつの間に。


「気づいていたのか?」


「はい。彼女バリルからの質問を答えている途中に」


「何で言わなかったの!?」


トングの質問に答えたエインセールに対して、バリルは叫んだ。


例え、情報収集しせず、不意討ちを仕掛けてしまったとはいえ、相手は村の偵察をしようとした敵だ。


もし逃がしたら援軍を呼んでくる可能性が有った。


そうさせる前にゴブリン達を縛りたかった。さっきまでゴブリン達の事を綺麗に忘れたのが原因の一つであるが。


「追いかけよう!」


「いや、もう遅い。ゴブリン達は後で何とかしよう。まずは民人の安全確保を優先させる。エインセール。その為にもお前のランタンで道を照らしてほしい」


「はい。分かりました」


妖精は頷いた。

そんな2人を横目に、バリルは頭を抱えた。


「何て不覚。もっと早く気づいたら良かった」


「大丈夫。何とかなる。もしもあいつらが来たら、その時は殴るだけだ」


トングは立ち上がって、笑いながら、バリルの頭を撫でる。

妙に自分の失敗を棚に上げているが、誰もその事を言わなかった。

彼はいつもそうやって試練を越えてきたのだ。


「はぁ・・・・トングは・・・・・甘いね・・・・」


トングに撫でられ、安心して、腰から力が抜けていくのをバリルは感じていた。緊張感がない。


「そうと決まったら動くぞ! まずは洞窟へ行こう。誰か居るかもしれない。エインセール。洞窟まで案内してくれ」


「はい。分かりました。あ。子供が起きたみたいですね。この子を連れていきたいんですが、どうしましょう?」


「あ・・・・。待って・・・魔法を掛ける・・・・」


バリルは黄色の縦長紙を全員の服とトングの武器に貼り、呪文を唱える。


「貴方は刃となり、壁となるもの。今こそ力を貸して。皆を死なせないように。貴方があの人を守ってよ。お願いだから」


早口で思いを込めて唄い上げる。

イメージの出来によって、効果が変化する。

それがバリルの魔法。

決まった呪文など無い。

故に周りからはこう呼ばれる。


”無形の魔術師”ーーーそれがバリルの二つ名である。



「これでいい。一応・・・・男の子に・・・・防壁&対人敵用迎撃魔法を仕掛けておくね・・・。相手が・・・・地獄を見たと泣き騒ぐ程に・・・・するわ」


「手加減をしろよ。できゃ、俺達に被害が出るぞ。お前の防衛魔法はそれぐらい威力があるんだからな」


トングが注意したものの、彼女にどのぐらい伝わっているのかは分からない。

被害が酷くならないように、天に祈るしかない。


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