[別離] : 老人の死
◇◇◇◇◇
ジェンキンスは部屋の奥で静かに息を引き取っていた。まるでルーク達を安心させようとしているような、安らかな優しい顔をしていた。
ジェンキンスの遺体は隠れ家の近く、見晴らしの良い丘の上に埋葬した。
不思議と涙は出なかった。ルークは人の死を悲しむには手を汚しすぎたのかもしれない。簡単な墓を作り、ロックローズを捧げた。母が好きだった花だ。クレアはその横で目を赤く腫らしている。昨夜は一晩中、傷の手当をしている間も泣きじゃくっていた。
「・・・葬儀屋が埋葬されてるんじゃ、ザマねぇな。」
ジェンキンスの墓の前で膝をつき、十字を切って黙祷する。
・・・ジェンキンス、今までありがとう。
ゆっくり休んでくれ・・・。
「ねえ・・・ルーク。」
クレアが話しかける。
「こんなこと聞いて、怒らないでほしいんだけどさ。」
クレアが俺の横に座る。綺麗な髪がさらさらと風になびき、形の良い額が見え隠れしていた。
「これから・・・どうするの・・・?」
「これから?」
「やっぱり仇討ち、続けるの・・・?」
「ああ。」
ルークは即答する。
「今までと何も変わらないさ・・・。今度こそ・・・一人ぼっちになっちまったけどな・・・。」
クレアは何か言いかけたが、悲しい顔をして俯いた。
「・・・そんなことしても死んだ人は喜ばない・・・とかさ、言ったり・・・するじゃない・・・。お父さんもお母さんも・・・アルバートさんも亡くなって・・・。もうルークはルークの人生を生きてもいいんじゃないの・・・?」
ルークは暫く考えてから答えた。
「違うんだ。人間が死んだら、もうそこまでなんだ。死人が喜ぶとか悲しむとか、そんなの戯言だ。・・・俺が、俺のために殺すんだ。そうしないと・・・もう一歩も、前に進めないんだよ。」
それを聞いて、クレアはすっと立ち上がる。
「そっか。」
何歩か歩いてから、勢いよく振り返る。
「私、必ず犯人探し出すから。私に見つけられないものなんて、無いんだから。」
クレアは無理やり笑顔を作ってそう言い残した。
・・・彼女が本当に犯人を見つけ出したときは、本人が一番驚いていたのだが。
次回、最終話




