[敵襲] : 追尾者達と追撃者
◇◇◇◇◇
ルークは、両親が死んだ夜のことを良く夢に見る。子供のルークは母親と手を繋いで
顔の無い男が逃げる母を後ろから捕まえ、恐怖に怯えた瞳にナイフを突き立てるのだ。目覚めた時、ルークはいつも泣いていた。
あれから、ジェンキンスの病状は悪くなる一方だった。ルークはジェンキンスを安心させようと必死に暗殺の仕事をこなしていた。駆け出しながらいくつかの仕事を成功させ、二代目葬儀屋の噂も広まり始めていた。
「うう・・・。」
今日は一段と体調が優れないようだ。
「苦しいかジェンキンス?もうすぐクレアが薬を届けてくれるはずだ。辛抱してくれ。」
クレアは頻繁にジェンキンスの見舞いに訪れてくれている。
ジェンキンスの死期が近いことは薄々気付いていた。できればすぐにでも両親の仇をとってジェンキンスに報告したい。ルークもクレアも焦る気持ちがあったのかもしれない。
パシン!
唐突に、家の壁に掛けられていた魔法石の一個が弾け飛んだ。用心深いジェンキンスが、隠れ家の周囲2.5マイルに外敵捕捉結界を張っており、魔法石の破裂は外敵の侵入を許したことを示す。
タイミングとしてはクレアの到着が原因と考えるのが自然だ。彼女が他人を連れてくるとは思えないので、尾行された可能性がある。すぐに侵入者の確認と排除に向かいたい。なにより、このままではクレアの身が危ない。しかし、この状態のジェンキンスを置いて行くのは危険だ。ルークが迷っていると、
「・・・行って・・・やりなさい。クレア様に危険が迫っているのでしょう。ゴフッ・・・」
ジェンキンスは喋りながら吐血していた。
「おい、ジェンキンス!」
「何をしている!行きなさい!女性一人守れない男の仇討ちなど、何の価値があるのです!」
ジェンキンスの目にはかつて葬儀屋と言われた男の鋭さが宿っていた。
「わかった・・・すぐ戻る!」
ルークは隠れ家を飛び出した。
魔法石の反応があったのは山から続く森の入り口付近だ。そこからまっすぐに隠れ家に向かったと仮定したルートを逆に辿ってみだが、クレアの姿は見えない。クレアが手引きして別ルートを迂回したのかとも思ったが、地面と草木に人が通った痕跡を見つけた。人数は四、五人。クレアを除外すると三、四人といったところか。痕跡は途中まで自分の進んできたルートに向かっているが、ある一点で大きく折れ曲がり、隠れ家とは別の方向に進んでいることがわかる。
「まさか・・・アイツ」
ルークは急いで足跡を追跡し始めた。
走る。足跡を追って森の中を疾走する。一瞬でも判断を誤ると木に激突しかねないが、この森なら目を瞑ってでも走り抜けられる。早く・・・早く・・・早く・・・!!
しかし、ある地点で足跡を完全に見失ってしまった。追跡に気付いた侵入者が、痕跡隠蔽によるアンチトラッキングを行ったのだ。
「クソ・・・まずいな・・・」
相手は戦闘慣れしている。クレアが捕まるのも時間の問題だろう。ルークは近くの木に登った。この時期は葉が落ちている木も多く、なんとか視界が確保できるかもしれない。これは賭けだった。
・・・いた!この木から80ヤードも離れていないところに、何人かが動く影を見つけた。ルークは見失わないよう木を飛び移りながら間合いを詰めた。




