第26話 暗雲
それは丘の上にいた。
眼下にはそれの双眸と同じオレンジ色が広がっている。
数時間前に比べれば幾分勢いと熱を失っていたが、廃墟と大地を焦がすその炎は、それの忌まわしき記憶を甦らせるのに十分過ぎた。
熱、光、そして痛み。
これらが同時に襲いかかってきて、それは力を失った。
おかげで今は施設を飛び出した直後の状態にまで後退してしまった。
付近に転がっていた死体を手当たり次第に丸呑みして養分を補給したものの、全快には程遠いだろう。
所詮はゾンビ、味もカロリーも物足りないの一言に尽きる。
わが身も顧みず、死臭と人間の気配を追ってとんできたというのに、これでは割に合わないではないか。
満たされぬ思いとともに、また脳裏にあの時の映像が浮かんできて、それは歯がみした。
ヤツら……人間どもと闘うたびに、それの脳は活性化していき思考まで獲得できた。というよりは、それが人間だったころの能力が甦った、とうほうが正確だが。
しかしその思考のせいで、それは敗北感を味わうことになってしまった。
腐った死体の臓腑よりも苦い、屈辱の味を。
暇つぶしの遊びは終わりだ。
今すぐには叶わなくとも、力が戻れば必ず本気で潰してやる。
粗方有機物を燃やしつくしてしまい、更に勢いを失う炎とは相反して、それの心は燃えたぎっていく。
「コ、ロ……ス」
橙色の目をぎらつかせ、それは、――――緑の怪物は、初めて怒りを知った。
◆◇◆
どんよりとした曇天の中、俺達は仲間を探しにやって来た。
「着いたぞ、……ここだ」
廃工場。佐伯さんに連れられてその場に訪れた時、まだそこでは最後の残り火が燻っていた。
視界に広がる焼け野原が、鼻に押し寄せてくる焦げ臭さが、風に舞う塵芥が、ここで起こった出来事を静かに告げている。
「酷い有様ですね」
間宮さんはそう言って足元の焼死体、おそらくはゾンビだったものをコンバットブーツの底で転がして、状態を確認していた。
高温にさらされたそれは、関節が筋肉の収縮で曲がり、独特のポーズをしている。
大方、熱と音に誘われたのだろう。周囲には同じように焼け焦げたゾンビの残骸が点在していた。
思えばバイオハザード発生直後から火災はいたるところで起こっていのだが、今回のものはその中でも桁違いと言えるだろう。
跡地を見ても分かるぐらいだから、すさまじい火事だったに違いない。人の手には負えないほどの。
もっとも、本来なら現場に急行し被害を最小限に食い止めるはずの消防士がいないのだから、それ以前の話なのだが。
本当に菜月さんと渡辺さんは大丈夫か……?
考えたくはないが、十分にそう思わせる現状の中で、俺を含めた5名は彼らの痕跡を探った。
しかしそんな絶望的に見えた捜索作業は、以外にも早く進展を迎える。
「あれは、何?」
有紗がある方向を指していった。彼女の指先を追うと、工場群の外れにある小高い丘、その斜面の中ほどに、何かが突き刺さっているのが見えた。
「鉄柱、いや、標識の類いなのかな」
間宮さんがそう言って、双眼鏡でも取り出そうしたのか、ウエストポーチのファスナーに手をかけたが、すぐにため息をついてその手を止めた。
彼は思い出したのだろう。それがもうポーチの中にないことを。
携帯食、水、武器弾薬などなど、この街で生き延びるために必要な装備の総重量はかなりのものだ。
それらを身につけて移動、さらには戦闘も行わなければならないのだから、俺達は皆、必要最低限の装備以外持たないようにしている。
重さに加えてどうしてもかさばってしまう双眼鏡も、こういった経緯で手放したのだった。
「あんな場所にか? 偶然にしては不自然だ。……確かめるぞ」
佐伯さんは熱や衝撃で多少変形したフェンスを乗り越えて、工場の裏手に回り込んだ。
どうやらここは火の手を免れたらしい。多少煤にまみれているものの、確かに下草が残っている。
かといって背の高い草木もなく見晴らしは良好だった。
そんな拓けた丘の斜面に、黒ずんだ標識は立っている。近づいてみると、爆風に飛ばされて偶然刺さったにしては、妙に真っ直ぐだ。
やはり人の手による意図的なものを感じて、俺は期待をとともに歩を速めた。
「見ろ。メッセージだ」
後を追って到着した俺たちに、標識の一面を指して、佐伯さんが言う。そこには焦げた表面を削って文章が書かれていた。
その標識には、渡辺さんと菜月さんは無事だということ。別行動をするという旨。そして彼らが向かったおおよその方向を示すであろう矢印が刻まれている。
「別行動、だと? なぜだ……」
眉根を寄せて訝る佐伯さんに、間宮さんが助言した。
「彼らは連絡手段を持っていません。だから来るか来ないか分からない我々を待つよりは、移動しようと思ったのでは」
しかしその言葉に佐伯さんは首を振る。
「だとしてもだ、行き先くらい伝えるだろう。こんな曖昧な矢印などではなく」
彼は訝るような目で黒ずんだ標識を凝視していた。
「余裕が、なかったのかもしれませんよ……」
皆が一斉に振り返った。
「む、どうした有紗くん」
佐伯さんが妹のことを名指しで呼んだのは初めてだったので、そのことに若干戸惑いながらも、有紗はおずおずと掌を差し出す。
そこには幾つもの薬莢があった。数からみて、一般的なハンドガンの弾倉半分に匹敵するだろう。
薬莢、そして有紗の言葉……そうか。
つまり現状を整理すると、渡辺さんたちはここで敵に遭遇し、戦闘になってしまったので中途半端な伝言しか伝えられずにこの場を去った、ということだろうか。それならある程度この状況にも説明がつく。
「なるほど。行き先を記すどころではなくなった、というわけか」
俺と同じ結論を述べて首肯する間宮さんとは反対に、佐伯さんはまだ納得していない様子だ。
「不審な点はまだあるぞ。死体が無い……ゾンビのな」
そう言われて、俺も間宮さんもはっとする。
火災があったのは昨夜。時間の経過からみても、ゾンビないしは感染体を倒したなら、ほぼ必ずその死体が残るはずだ。
しかし辺りを見渡しても、草地には争いの形跡が見られるが、肝心の敗者の姿は無かった。
もちろん血痕はところどころにあったが、そんなものは血まみれの死体が徘徊するこの街において、どこでも、いつでも見られる光景だったので、確たる証拠にはならない。
つまり、現時点では、渡辺さんたちが勝ってこの場を離れたのか、ゾンビに跡形もなく喰われてしまったのかが判別できないのだ。
「じゃあ何か。リーダーは、菜月さんたちが……やられたって言うのかよ」
護を筆頭に、再び不安に駆られる俺たちに、ただし、と声を大にして佐伯さんは補足した。
「現場には衣服や装備品の残骸が残されていない。ゾンビが無機物に興味がないことを踏まえると、最悪の結末ではないだろう」
その言葉に、護は大きくため息をついた。
最近、名実ともに信頼感の増した彼だったが、こと菜月さん絡みとなると、やはり少々熱くなってしまうところは変わらない。
もっともそんな人間らしさが彼の長所でもあるのだが。
「――――冷てっ」
そんな護が突然、空を仰ぐ。
どうした、と言う前に、俺も額に冷たさを感じて、同じように頭上を見上げた。
……雨か。
灰色の雲から次々と降り注ぐ雨粒が、衣服に染みを作っていく。
黒い雲の分厚さを反映したかのように、その雨は強くなっていった。俺達は捜索を一時中断し、焼失の被害を免れたコンクリート造りの建物に身を寄せることにした。
扉を開けると奥から呻き声が聴こえてきたので目を凝らすと、やはりというかそこにはゾンビがいた。
衣服と呼べるかも怪しいぼろを纏った亡者が、白濁した両眼をこちらに向け、涎を垂らしながら迫ってくる。
なぜこんな場所に、とは思ったが扉に鍵はかかっていなかったし、いまやどこでも遭遇する存在だっただけに驚きは小さい。
室内での戦闘は動きが制限されることに加え、これから入ろうとしている場所を汚すのは気が進まないということで、ゾンビは屋外に誘導してから始末した。
「私がやる」
金属の棒を用いた佐伯さんの豪快なフルスイングで、脆くなった頸椎が頭ごと吹っ飛ぶ。
首と胴が離れたゾンビはその場に崩れ落ちて、永和の眠りに着いたようだ。
一撃で仕留めたのは、彼なりの情けなのだろう。
特に意味はないのかもしれないが、佐伯さんは手にした鉄の棒でゾンビの胸部を貫いた。
まるで吸血鬼に杭を打つが如く。
動かない死体を一瞥すると、俺は中に入った。
すでに室内を調べ終わった間宮さんが、クリア、といって再び拳銃に安全装置をかけ直す。
それを確認してから俺は所持品の中からタオルを取り出した。
ありとあらゆる常識が通用しない現状において、体調管理は索敵と同じくらい重要なことである。医薬品どころか安全もままならない状況で、体調を崩せばそれは死に直結する。
まずは濡れた髪をタオルで拭いてから、そのタオルも湿った上衣と一緒に室内の配管へ引っかけた。
体が冷えるといけない、ということで間宮さんが奥に積まれてあった段ボールから毛布のようなものを取り出して配ってくれた。
どうやらこの工場地帯では繊維関連の商品も作っていたらしい。さしずめここはその製造品を収めた保管庫なのだろう。
未開封の真新しい衣類の数々に、有紗は物憂げな視線を投げかけている。俺はその意図するところが分かって首を横に振った。
「有紗、気持ちは分かるけど、いまはこれで我慢だ」
そう言って俺が自身の服、もとい警察の活動服を示すと、彼女は渋々頷いた。
この制服に着替えてからかなり経つし、激しい動きをすることも多かったから、はっきり言って汚れている。
しかし耐久性と動きやすさは健在で、手放すには惜しい。目に毒だと判断した間宮さんが、衣服の詰まった箱を奥の棚に戻した。
代わりに使い捨てのつもりはなかったが、タオルを新品の物と交換した。
それから俺は、これも欠かせぬ作業である銃器の点検を行った。その合間、建物に設えてあるはめ込み式の窓から外を眺めて俺はひとり感慨にふける。
まるで戦場だな。
建物の基盤や鉄骨のみが残った一面の焼け野原。爆弾、あるいは隕石でも落ちてきたのかと思うほど、広範囲が焦土化していた。
散乱した黒い残骸を大粒の雨が叩くたびに、虚しい音がまるで鎮魂歌の如く周囲に木霊する。
鎮魂歌……。
ここで亡くなった橋谷さんと山本さんはもちろん、彼らの上司の飯田さん、公民館の八木さん、そして両親……浮かぶ限りの故人に対して俺は黙とうを捧げた。
目を開けて、再び外を見やると、改めてここが日本だという実感が薄れていくのを俺は感じた。
加えて現行する作業がこの思いに拍車をかけたのは言うまでもない。
天井にむき出しで取りつけられた蛍光灯の光の下で、M360J、通称サクラと呼ばれる弾倉回転式銃のシリンダーを開けて中の実包が湿っていないか確認した。
自動拳銃に比べると隙間が多いため、浸水が心配だったのだが、強化メッキでコーティングされたおかげか、幸いにも水気は薬室に到達していないようだった。
作業の延長で9mm拳銃のほうも確かめたが、こちらも特に問題がなかったので、オートマチックには安全装置をかけ、レボルバーにはストッパーの安全ゴムをはめて、俺は二丁の銃を床に置いた。
このとき想像以上に身が軽くなったのは気のせいではないだろう。
双方の重さは合わせて2キロ未満だったが、やはり銃には見た目以上の物理的でない重さがあるのだ。
「みんな、話がある……これからのことだ」
雨宿りの最中、装備品のチェックを終えた俺達が休息と軽い栄養補給を行っていると、佐伯さんが言った。
「これからって……菜月さんたちを追うんだろ?」
護がカロリーバーをかじりながら今さらなにを、といった体で尋ねたが、佐伯さんは頷く代わりに左手で自身の顎を触る。
「バイオハザード発生からもう4日が経つ。例の作戦のことは伝えたな。……はっきり言って我々に残された時間は少ない」
その言葉に、俺は臓腑がひと際重くなった気がした。
今し方詰め込んだ携帯食以外の何かが、胃腸に重く圧し掛かってくるようだ。
そうだった。ミサイルによる『滅菌』と称した作戦の期限はバイオハザード発生から一週間。つまり、実行されるまで今日を除けばあと3日しかない。
護や有紗も同じことを考えているのだろう。皆、表情に影が差していた。
「当初からの目的である脱出には、港の一角にある……特殊船舶を使おうと思っている」
「特殊、船舶……?」
動揺を紛らわすように水を呷っていた護が、水筒の蓋を閉めて尋ねる。
「ああ、自衛隊の保有する最新の小型潜水艦だ。詳細の説明は省かせてもらうが、最近試験的に配備されたものでな。県境越えが不可能になった時から使用を検討していた」
「しかし隊長。あれは操縦も難解ですし、なによりセキュリティーが……」
ある程度知っているからこそ不安を露わにする間宮さんを手で制すと、佐伯さんは静かに言った。
「心配ない、私はあれのテストパイロットを務めた経験がある。それに、パスコードも大丈夫だ」
彼は端末を取り出して軽く振る。その様子に間宮さんは顔をほころばせた。
「さ、流石です! ……けれど――――隊長は何故そのようなことを?」
すると佐伯さんは口元に不敵な笑みを浮かべた。
「もともと『滅菌』だなんだと騒ぎたてる連中を信用していなかったのでな。救出作戦に赴く前、保険として計画していたのだが、どうやら役に立ちそうで何よりだ。もっとも部下であるお前にまで秘密にする必要はなかったがな」
「それを踏まえた上で、今一度問いたい。選択肢は大きく二つだ」
佐伯さんは俺達の前で人差し指を立てる。
「一つ、脱出を優先事項とし、この場の5名で港へ向かう」
指が二本に増え、彼の眉間にも僅かに皺が寄った。
「二つ目は……渡辺と加川を追って、合流してから脱出する」
誰も口を開かなかったので、佐伯さんは付け加えた。
「生還率、という面で考えるならば、正直、二つ目の選択は賢明とは言えん」
しばらくは誰も声を発さず、戸外で降りしきる雨の音だけが薄暗い室内に響いた。
やがて、壁際に体を預けた護が腕組みをしながら言った。
「確かに、菜月さんたちを探してからってのは無謀なのかもな……」
けど、と彼は続ける。
「ここまで一緒にやってきたんだ。今さら見捨てられねぇよ!」
しかし護はそこで首を振ると自嘲気味に笑った。
「――――ホントいうと菜月さんのこと……諦めきれねーだけなんだ。悪ぃ、リーダー、これはオレの個人的な意見だ」
「いや、それも立派な動機だぞ、安堂。……他に誰かいないか?」
佐伯さんに促されたが、答えは直ぐに出てこない。正直俺は迷っていた。
本音をを言うなら、菜月さんも渡辺さんもみんな揃って生還したい。しかしそれは現実問題として考えるなら、佐伯さんが述べた通り賢明な判断ではないだろう。
「私、護さんに賛成です」
本日二度目の注目が、有紗に集まった。明確な意志の表れか、彼女は毛布の端をぎゅっと掴んで言う。
「このまま私たちだけで逃げて、生き残れても……後悔って残ると思うんです。護さんの言うとおり、ここまでみんなで協力して乗り越えてきたのに、って。そんなことになるくらいなら――――出来る限りのことはしたいんです!」
そこで妹は唇を噛んだ。
「……すみません、私のほうが個人的でしたね」
有紗……そっか、そうだよな。
もうこれ以上重荷を背負って生きるのは、正直俺も耐えられない。
妹の言葉に俺の意志は固まっていった。
有紗の意見に、そんなことはない、と佐伯さんは首を振ってから、俺のほうに向きなおる。俺の意見も聞きたいようだ。俺は佐伯さんを見据えて言った。
「俺は……、俺も、有紗のいう後悔はもうご免です。だから、渡辺さんたちと合流してから脱出したいです」
後悔なんていまさらかもしれないが、これが俺の本心だ。それが伝わったのか、佐伯さんは深く頷いた。
「よし、多数決なら捜索で決まり、というところだが、間宮、お前はどうだ?」
「異論はありません、お二人の捜索に向かいましょう」
部下の顔、そして俺達の顔を交互に見てから、佐伯さんは顎にやっていた手を離して短く息を吐いた。
「……先程彼らの行き先は不明、といったが、心当たりが無いわけではない」
その言葉に全員の視線が彼に集まった。欠けていたピースが急に現れたような情報なのだから、当然の反応である。
皆の思いを一心に受けて、佐伯さんは軽く咳払いをしてから帯革に手をやると、四つ折りにした地図を取り出した。
「……済まんが、諸君の本心を確かめさせてもらった。覚悟があるかどうかをな。そのためにあえて情報を伏せておいたのだ」
見てくれ、と彼は開いた地図にマーカーを引いていく。
「現在地はこのあたり。ここから渡辺の矢印に沿って北上するとすれば――――」
ペン先を追ってみても、そのルート上には郊外、しかも山林地帯ということからなのか、めぼしい建物はない。
ようやく一つの敷地と建物が記されたところで、佐伯さんはそれを丸く囲んだ。
「ライナー製薬……!」
驚きを隠せずに、思わず俺は口に出してしまう。そこにはこの騒動の根源かもしれない巨大製薬企業ライナー社、その名前を冠した施設があったからだ。
青海市の住人として、この施設の存在は知っていたが、真実を知った今、しかもその関係者である渡辺さんが向かった先ともなれば驚かないわけがない。
佐伯さんはそんな俺や護や有紗の様子を見ながら続けた。
「そうだ。ここは奴……渡辺の古巣。なぜ加藤を同伴させたかは謎だが、あいつが行くとすればここである可能性が高い」
地図をマーカーペンの尻で数回叩いて、佐伯さんは皆の注目を再び集めた。
「幸いここからこの施設まではそう遠くはない。到達にさして時間は掛からないだろう」
しかし、と彼は渋い顔になって言う。再度地図に線を走らせ、今度は間逆、青海市の南端を示す。
「脱出に考えている港はここだ。障害を考えれば到達するのに丸一日はかかる。……捜索に当てられる時間は2日が限界だと思ってくれ。それを過ぎれば――――」
「2人のことは諦めろってことか」
護が後を引き継いで言った。その顔には一種の悲壮感こそあれ、不満の色は一切なかった。
「不本意ではあるが、そうせざるを得ない」
雨音が聴こえなくなったので、窓の外を見るといつの間にか雨は上がっていた。
佐伯さんを先頭に準備を整えた俺が外に出ると、さっきのゾンビが水溜りに半分埋もれているのが目についた。
次いで目線を上げれば、焼け野原もそのままなのがよく分かる。雨は全てを洗い流してくれるわけではないようだ。
「まだもうひと雨降りそうですね」
間宮さんが雨が止んだにも関わらず、いまだ灰色の空を見上げて言う。
「何にせよ、じっとしていても時間は待ってくれない。動けるうちに行動するぞ」
短く了解、と返し佐伯さんの後に続く間宮さんに倣って、俺たちは北へ歩を進めた。
物語もいよいよ中盤を越えました。(……予定では)
これも読んで下さる皆さまのおかげですね。
本当にありがとうございます!
※文章に不備がありましたら、どうぞコメントをお寄せ下さいm(_ _)m




