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Infection-【抗】  作者: Scott
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第1話 悪夢の目覚め

某作品の影響を受けて始めた小説です…

執筆作業なんて初めてのド素人なので内容はもちろん、更新ペースの遅さや誤字・脱字などにつきましてはひとつお手柔らかに…!

プロローグ


 20××年未明 青海せいかい市某所 


 窓もなく照明灯と監視カメラや電子機器の発する光と熱しかない薄暗い部屋の中央に、ひと際目立つカプセルがあった。


 薬に満たされたその中でそれは目覚めの時を待っている。


 それは姿かたちこそ人に近かったが本質はまるで異なるもの。ゆえに思考する力は弱くても人間をはるかに凌駕する感覚でかなりのことを知っていた。

 いつもと違いなぜか力を縛り付けるものが弱いことや、己の本能を満たすにうってつけの素晴らしい外界の存在を……



 それはまず期待・・を知った。



 次の瞬間それが口から大きなあぶくを吐きだした様子は部屋のカメラ越しに別室の研究室やモニター室に伝わったが、各々の仕事で忙しい研究者や、怠慢な警備員の目に留まることはなかった。


 もちろん、重要なエリアだけに、いつもは優秀な人材も配備されているのだが、今日に限ってその姿が見当たらない。


 もしこの時、誰か一人でも事態に気づけた者がいたのなら、未来は、世界は、大きく変わっていたのかもしれない。




◆◇◆




 俺の名前は椎葉(しいば) 幸正(ゆきまさ)19歳。青海市に両親と4つ年下の妹と暮らす浪人生という名のニートだ。バイトもせず自宅と予備校とを往復するだけの退屈な毎日。





 それだけだったはずなんだ。あの悪夢のような朝が始まるまでは…………




同年 青海市のとある住宅地






「―――――――――――――ァァッ!!」








 今日は祝日だったが、浪人生の俺にとっては休日か平日かなんてことはどっちでもいいはなしである。

 自室の窓から朝日が差し込む中でいつものようにベッドで朝の惰眠をむさぼっていた俺は突然の悲鳴で起こされた。


 ……んぁ……。な、なんだ…!?



 俺は自室のベットから飛び起きて、悲鳴の聞こえた1階のリビングへと駆け下りる。

 尋常ではない声だった。それに幻聴でなければ今のは……!

 はやる気持ちでドアを開け、リビングを確認すると―――――



「うっ!?」

 にわかには信じがたい光景に、俺はわが目を疑った。



 ―――母が鮮血を流して床に倒れている。それも尋常ではない程の地を流して。


 想像をはるかに越える状況に、俺はめまいを感じながらも意識だけは保った。


「ど、どうしたんだよ、母さ……」

 体を起こして揺さぶったが反応は一切なく、既に息をしていないようだった。

 素人ですら分かるほどその体からは生気が感じられない。



 おいおい、ウソだろ!?

 俺はあまりの急展開に文字通り頭が真っ白になる。



トタタタタッ!


ガチャ!


「お母さん!?」

 同じく悲鳴を聞きつけて降りてきた妹の有紗ありさも母の姿を見てハッと息をのむ。


 彼女も俺と同じく状況を飲み込めずに固まっていて、リビングは惨状の現場には不自然なほど静けさに包まれていた。




 ミシッ……


 ポタ……


 俺たちはふいに聞こえたその音に我に返ってキッチンの方を見た。


 そこには父、いや、父親だったものが口から血の混ざったよだれをたらし、白濁した双眸(そうぼう)でじっとこちらを見つめていた……。



 その姿を形容するにはこれしかないだろう。

 

 ゾンビだ。


 西洋ホラーの定番、再生者(リビングデッド)のゾンビ。

こういってしまうと少し陳腐にも聞こえるが、実際に目の当たりにするそれは、今まで見てきた何よりもおぞましかった。



「うっ!?」



 背筋に冷たいものを感じ、気づけば俺は妹の腕を(つか)んで階段を駆け上がっていた。



 ガタン!!



 妹があと数段というところで、運悪くつまづいてしまう。


「あ……!」

「有紗っ!?」



 彼女はバランスを崩し腕が俺の手から離れた。声にならない悲鳴とともに妹が背後に迫っていた父親にぶつかり共に転げ落ちる。 

 緩くカーブを描く我が家の階段の最下段にさしかかって、その姿が視界から消えた直後、




 ドスン!!バギャッ!!



 日常生活ではまず耳にしない生々しい音に、抗しがたい光景が想像され俺は思わず固く目を閉じた。




「ぅ、うぅ……ん」





 暫くして聞こえた彼女のうめき声がとりあえず彼女の死だけは否定した。

 震える全身を壁と手すりに預けるようにして下に降りると、廊下の突き当たりのところで追ってきた父が妹を受け止めるようなかたちで壁に叩きつけられていた。

 その首があらぬ方向を向いている。一目で即死だと直感した。


「…………」


 もう動く気配はなかったが一刻も早くこの場に居たくない俺は、わずかに残る気力を振り絞って、その場にへたりこむ妹を抱えるようにして2階に連れ上がった。



 自室のベッドに彼女を下し、自分も床に座って精一杯状況を整理しようと努めたが、脳みそが渦を巻き、心臓が肋骨に体当たりしていて俺から思考を奪う。


 説明、とにかく今は第三者からの説明が欲しい。

 妹も先ほどから一言も発さないところを見るに混乱を通り越しているのだろう。


 (しばら)くすると俺の部屋から着信音が鳴り響き、俺はふらふらとした足取りで机の上のケータイを手に取り確認する。


 そこにはこんなメールが一件だけ届いていた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


青海市民の皆様へ


只今(ただいま)当市ではパンデミックによるバイオハザードが発生しております。バイオハザードは通常の自然災害とは大きく異なりますので不用意な行動を起こさずに事態が沈静化(ちんせいか)するまでは自宅待機をして下さい。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「なんだよ、これ……?」

 あまりに突拍子もない内容に俺は戸惑(とまど)った。しかし、この現実味のなさがかえって俺に冷静さをもたらしたのも事実だ。


 現実、じゃない。いやないと思いたい。だとしたら……そうだ、夢か?

 傍目には滑稽過ぎるだろうが、自身の頬を強く引っ張ってみた。


 傍目に見れば滑稽ともいえる自傷行為が伝えたのは鈍い痛み、そして今の出来事は実際に起こっている、ということ。


……くそ、やっぱ現実かよ!?


 頬の確かな痛みに、俺は怒りとも落胆とも言える嘆息を漏らした。

 それでも受け入れることができずにいた俺は、メールの文面に再度目を落とす。



 バイオハザードだって? それに、パンデミック? 突拍子が無いにも程があるだろ。



 バイオハザード……。そのワードは主にゲームや映画で目にすることが多いものだった。

 別にその方向に詳しくなくてもゾンビや怪物が何かの原因で跋扈した街で、生き残った人間が生存を懸けて戦うといったシチュエーションを安易に想像を出来るサバイバルホラーでは定番中の定番。

 

 もちろん、生物災害、ということでは現実に起こっている問題なのだが、今俺が立たされているレベルの状況は、間違ってもフィクションの域は出ない代物であったはずだ。


 そんなことが脳裏をかすめ、俺は眉根を寄せた。


 ……ちょっと待てよ、これもフィクションだとしたら?


 あっ!!



 そこでようやく俺に一つの考え、もとい希望が浮かんだ。

 映画、いやテレビ……そうだ、テレビだ!!


 日本のテレビ局がいつから一般人相手にこんな悪質な企画をするようになったのかは知らないが、ドッキリ番組のたぐいに違いない。


 それしかない!


 そう思うと幾分体が軽くなった気がした。第一、よく考えてみれば俺は両親の死体は見たが死ぬ瞬間は見ていないのだ。



 つまりあれはグロテスクな人形か何かで、今頃下では巧妙に仕掛けた隠しカメラの映像を見ながらスタッフと両親がネタばらしの準備をしていることだろう。



 そしてゾンビメイクの父親が人形と入れ替わるところをみていたであろう妹もグルだ。つまりメディアに家族ぐるみで協力して俺にひと泡ふかせようって訳なんだろう。



 くそ、完全にやられたな……。


 しかしやっていいことと悪い事があるだろ。手の込んだ演出だがオンエアの許可なんてとらせてたまるか。苦情も含めて一言断っておかなければ……。


 決意した俺が苦笑いのまま有紗を見やると、いまだ放心の演技・・の真っ最中だ。



 こいつ……。将来の夢は保育士じゃなかったか? いつからそんな女優顔負けの迫真の演技ができるようになったんだ?


 まあいいか、下に行けば誰かいるだろ。


 動かない彼女を部屋に置いて階段を下りると、まだ父親ゾンビ人形・・が設置されたままだった。


 うへぇ……。悪趣味だな、ホント。


 俺は言葉どうりにうんざりした。


 どんだけクオリティ求めてんだよ。それに床一面の血糊。見た目だけで十分だってのに、臭いまでつけるかフツウ。ちゃんと掃除するんだろうな、コレ。


 ……はあ、で、こっちもそのまんまか。


 リビングも先ほどの惨状をキープしていて吐き気がした。しかしスタッフはおろか人の気配がない。俺が仕掛けに気付いたことで第2ラウンド突入か?

 もう、勘弁してくれよ……。



 脱力した俺が、心の底からそう思った時だった。



「お兄ちゃん、警察に、知らせないと。お母さん、たち……血だらけ、だよ?」


 いつの間にか降りてきていた妹が奇妙にうわずった声をだした。


「はいはい警察ね。こんなイタズラ通報したいぐらいだな」


 俺は彼女を適当にあしらうように右手を軽く振る。


 もういいんだって、女優の有紗さんよ。引っ張り過ぎも良くないって。

 というか、たかがドッキリ如きに真剣過ぎじゃないか?



 しかし呆れ顔の俺とは対照的なまでに、彼女は震えたまま絶望のまなざしを向けてくる。

 その尋常でない様子に俺は徐々にではあるが、不信感が募ってきて、堪らず彼女に詰め寄った。


「おいおい、テレビなんだろ。ドッキリなんだろ! 十分驚いたからさ、もういいってスタッフか誰かに伝えてくれよ」


 しかし妹は表情を変えず動こうともしない。それどころかむしろ俺を心配するような目で見つめてきた。


 な、なんでそんな顔してるんだ? まるで狂人を見るみたいな……。


 焦りを感じた俺は声を荒げる。誰かが見ていようがかまうものか。

「いい加減にしろよ!! みんなで俺をからかっているだけだろ!?」


 しかし有紗は返答どころか、頷きさえしない。


 どうして黙るんだよ?

 そうだ、と一声言ってくれよ!


 脈拍が上がり、自然と声がかすれるのが分かる。


 既にこの段階で、俺の中にも最悪の予想が出来上がりつつあったが、意地でも認めたくない一心で最後の確認をする。


「違うの、か?」

「…………」


祈りにも似た問いに対する答えはなく、その沈黙は肯定だった。



つまりこの状況はフィクションではなく現実だと。


「は、ははっ、笑えねぇ……よ、こんなの!」


 喉の奥から漏れ出したのは今までのどんな笑いとも違う、酷く渇いたものだった。


「うッ!」


 次の瞬間近くにある死臭を発する存在がより一層大きくなった気がして、俺はその場に膝をついた。空っぽの胃からは酸っぱさだけが込み上げてくる。

 体鉛のように重く、力が入らない。



ピ、…ピ、…ピ…



 俺の耳に電子音が届いた。目の端で追うと、どうやら妹が固定電話で110番しようとしているらしいが手の震えが邪魔をして、たった3ケタの入力に苦労している。

 しかも、彼女は耳元にやった受話器をすぐに取り落としてしまう。


 どうしたんだ?


 

 もう今更他に驚くこともないだろう、と思って、俺は未だ揺れているそれを掴んでを耳にあてた。


『ツ―――――――――――――――――――――――――――――』


 耳には酷く間延びした音が響く。回線が繋がっていない。

 そこで俺は本体の画面を見たが、間違えようのない1と1と0だ。

 掛け違いではない。となると、要するに繋がらないのか。

 他の番号も、どれもかれも何度やっても徒労に終わった。







普通ならば主人公の日常や周囲との関係などをもっと掘り下げるべきなのですが、良いようにまとまらなかったので全部すっ飛ばしてバイハ展開に突入してしまいました…


先が思いやられるような作品ですが、頑張りますんでよろしくお願いします!

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