10,灯~akari~
【灯~akari~】
時計の針が深夜3時を差していた
相変わらず横で眠る君は僕の眼には映らない
時が落ちてくる 悲しみ ときめき 全てが
止まったままのこの時が 時計の針が先に進むことを恐れている
二人で映った星空の前で撮った写真
もうあの頃のように君の眼には輝きがなくて
今の二人を病室の灯りがチラチラ照らす
それもあと砂時計が落ちるまでの間 1時間程の記憶のエンディング
もし君が全ての色を失い この僕の瞳に帰ってきたら
僕はこの現実世界に君を連れ去って逃げれるかな
僕が映した全ての風景の灯りを君にあげられたら
君の色を帯びた瞳は僕を映せたのに
部屋の灯りが落ちる
全ての終わりが近づいてくる
君の顔 身体 腕が霞んでいく
涙で君を形成する記憶が認識できない
最期に僕の愛したこの世界の記憶を全て君に預けて
僕を形成する世界の全ての色彩を消し去れたら
僕が最も望んだ夢は叶えられるけど
君が望む世界に僕は移らない
君の絵顔が僕の白い世界を解き放ってくれた
僕の絶望で全を失った世界に色をつけてくれた
僕の心に灯りを付けてくれた
3年後
僕は賑やかな街の通りを通って君に会いに行く
都会の片隅にある君の遺影
モノクロの笑顔が写る君の写真を眺め
僕は君が与えてくれたこの光が捧ぐこの世界にもう少しだけ生きてみようと思う