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8話 救済を見る目は黒く濁る

あの男が居なくなってから

めぼしい移住希望者が来ない。

まぁ、いつものことなのだが、

あの男は大きな功績を残していった。

今地球で流行しているドラッグの治療薬、

食中毒の特効薬、

蛍が炭鉱のスタッフと麦を育てている。

お陰で地球が救われている。

彼のやりたいことは叶った。

かなったのだが、

私の選択はこれで正しかったのだろうか?

結果、

1人の命と引き換えに

沢山の人が幸せになった。

命と引き換えに、


「楠さんは幸せだったんじゃないかな?

少なくとも私はそう思いたい」


何かを勘づいた様に

ひろ子が語りかけてきた。


「人には他人に理解出来ない不幸がある。

それとともに、

他人に理解出来ない幸福もある。

命よりも義、

楠さんらしいじゃない。

まぁ、過去の仕事柄だけど……。

居なくなった人のことなんて

誰にも解らないよ。

少なくとも、

個々のギフトは各々の性格に

関係しやすいことを考えると、

橘さんも望んでたんじゃないかな。」


確かに理論的に考えるとそうなのだが、

人間として割りきれない。


「確かにそうなのかも知れないな。」


納得はいかないが、

ひろ子を納得させる為に返事をする。


相変わらずゆっくり時間が流れていく。

私の今の感情、

それと地球を救った彼の功績は、

流れる時間の中で

皆から忘れ去られるのであろうか?

そう考えるとどす黒い感情が

胃の底から上がって来る気がした。

地球の益、異世界の益、人を振り分ける。

今まで組織で足切りをやってきた。

仕事と割りきっていたので、心は痛まなかった。

しかし、人の生死を体感し、尚且自殺幇助のようなことをした。

今まで私がやってきた事が、全て間違えだったのでは無いか?

そんな不安が心の重しとなり、肩にずっしりのし掛かってくる。

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