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3話 始まりの地 開店後一人目

私は長谷部潤、妻のひろ子と異世界に来ている。

異世界と地球を行き来する扉の管理、

どうも退屈な仕事だ。

過去に来た83名の移住依頼者は

しょうもない人間ばかりで、

79人は入出国拒否をした。

結果、厳しすぎる、

移住出来ない扉

と有名になり、

殆ど誰も来なくなった。


その為、物凄く暇だ。

妻と二人、苦労も無く過ごせるのは

良いことなのだが、

異世界に作られた小屋から

二人で出かけることも出来ない。

ほんとに退屈な毎日だ。

「貴方、こんだけ暇なんだったら、

この小屋を改造して何かしましょうよ、

例えば……、喫茶店とか!」


妻が言う、確かに良いかも知れない。

異世界で喫茶店をしながらのスローライフ、ワクワクするでは無いか。

そうと決まれば実行だ。


「椅子とテーブルはある、

サイフォンやポット、

ネルドリッパーなどはそうだな……。

総理と総統に用意させよう!

珈琲はこちらの世界で用意出来るし……、

料理とデザートはひろ子お願いして良いか?私は看板の製作と経営管理をする。」


潤がそう言うと、ひろ子はドヤ顔で胸を叩いた。


やると決めたからには行動は早くだ、

必要な物資調達は妻と

地球側の人間に依頼し、

営業準備は私がする。


1ヶ月も経った時には

既に営業出来る程になっていた。


2週間後

オープン当日、

想像以上に異世界人が来た。

肌色が人間とは違う人、

耳が尖った人、獣人など、

客層は様々だ、

猫の獣人がホットココアを

15分程ふーふーしているのを傍目に

決められたレシピどおりに調理をする。


こんなに忙しいのはいつぶりだろうか、

妻のひろ子もホールでせかせかと働いている、途中で手を止めてお客さんと雑談に花を咲かせている時もあるが、

それもご愛嬌だ。


地球側の人間には異世界の住人と

親睦を深めるため、とだけ伝えている。

暇だったっと言うことは

対政府に向けての言葉としては

不適切と判断した。


それから15分程経ったであろうか、

注文も片付いたのでホールに出る。

集客率……120%と言うところか。

知らない人通しの相席は勿論、

立ったままコーヒを啜るお客さんまで居る。

さっきまでココアを冷ましていた猫の獣人は……

まだココアをふーふーしている。


「氷を用意しましょうか?」


尋ねてみる。


「す、すみません、

ふーふーしてたら

動く液体が楽しくてつい!」


どうやら猫の性質上

水が好きで遊んでいたようだ、

語尾に『にゃ』がついていない事が少し残念だった。

皆が垣根なく、誰彼構わず愉しそうに

お茶と会話を楽しんでいる。

すべての種族がこのように友好的で

お互いを想いやれるなら

争いなど起きないのであろう。


「まぁ、無理な話だ……」


無意識に呟いた顔

少し口角が上がっていることに気づく。


私の呟きを聞いた

とかげ人間が話しかけてきた。


「全て無理で片付けるべきではない。

少なくとも試しもせずに

言うべきでは無いであろう。」


私はほくそ笑み返す

「平和について考えてたんだ。

あなたには一切の戦争を

無くす事ができるとでも?」


とかげ人間は少し悩みボソッと話し始める。


「少なくともこの国で、

と言うとこであれば

英雄であるあなたが例のギフト

『排除』

を使えば容易いのでは無いかと

私は思います。

こちらの国であれば、

の話ですけどね」


「そうなると少なくとも

私自信を100人程複製しなくては

ならないでしょうね。」


少し皮肉を込めて言う。


とかげ人間は気まずそうに

鼻先をポリポリと搔いている。


「バンッ!」

と言う大きな音と共に

地球に続く扉が勢い良く開く!

荒くれ者の様な人間がズカズカと

足音をたてて店に入ってくる。


「扉の守り人は居るか!?

さっさと俺を通しやがれ、

俺はこの世界に用があ」


「排除」


私が呟いた途端店に静かさが戻る。


私は扉の方に歩いて行き、

音をたてずに空きっぱなしになった

扉を閉めた。


「お騒がせ致しました。

とんだ阿呆が迷いこんできたようです。

皆さま申し訳ございません、

引き続き美味しいお茶と

楽しい一時をお過ごし下さい。」


そう伝えた途端拍手が湧き、

流石と言う声があちこちから聞こえてくる。

目立つつもりは無かったが。

顔が火照っている。


私のギフトは『排除』

目の前に居る指定した生き物を

元居た場所に戻す能力である。

過去には、大量の魔力を消費して

亜空間移動をしてきた魔王を、

27回連続で排除したら

二度と魔王が攻めて来なくなった

という過去がある能力だ。

おかげでこちら側の世界では私が、

魔王を追い払った英雄とされている。

その時の状況を知るものは、


「あっけなさ過ぎてギャグアニメ

を見ている様だった。」


と言い伝えられているらしい。


再び皆が談笑を再開し、

平和でゆったりとした時間が流れる。

15分位経った頃だろうか、

私が洗い物を始めた時、

再び荒っぽく扉が開かれた。

同時に怒号が響く。


「おいこら!

人様が尋ね」


「排除」


皆がぽかんと狐につままれた様な

顔になって、静寂の音が店内に響く。

間を置かずそこかしこから


「プッ!」


と吹き出す音が聞こえてくる、

そして皆の大爆笑が店内に満たされる。

私は手を拭い、再度静かに扉を閉める。


「やかましすぎるハエが

入って来たみたいですね、

皆さま、目障りな上、

耳障りな体験をさせてしまって

大変申し訳ない。

でも安心してください。

うちには殺虫剤代わりの

私がおりますので、

バラエティーの一つとして

お楽しみ下さい。」


そう言うと笑い声と共に

囃し立てる様な声が聞こえてくる。

粗暴な冒険家希望者も

バラエティーにしてしまえば、

それも一つの娯楽になる。

これも店の宣伝に良いのかもしれないな。

そう考えていると、ひろ子が

やれやれと言う視線を

こちらに向けてきた。

感情を読まれ、

ほどほどにしなさいと言われた様な

感情になり、逃げる様に洗い場に戻った。

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