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9話 ピエロの嘆きは偽物の証明

疲労感が押し寄せてくる。

店を妻に任せて休もうと思った矢先、

地球側の扉が開く。

満面の笑みが目の前に輝く、

しかし、

何かほの暗く感じる。


「移住希望者ですか?」


笑顔の絶えない女性に声をかける。


「はい!よろしくお願いします!!」


元気ハツラツといった感じだな。

しかし、

ほの暗い。

いつもの様にお客さんに対応し、

3人で小部屋に入る。

ひろ子が能力を使った途端、

首を傾げる。


彼女は嘘をついている?

何も話していないのに、

移住希望者ではないのか?


私は身構え、

いつでも能力を使用できるように

身構える。


「よろしくお願いいたします。

貴方は移住希望者、

と言う事で間違いないですね?」


ひろ子の様子を見る、

眉間に皺を寄せ、

ずっと首を傾げたままである。


「ハイ!!

こちらに移住をしたいと

考えております。」


元気にハキハキと言う、

大抵こういう場合で

嘘をついている場合は

何かしら不自然な挙動が

あるはずなのだが、

見受けられない。

何が嘘なのだ?

ふと目線を下げる。

彼女の袖から覗いた腕が目に入る。

痣……。

タバコを押し付けられた痕……。

虐待……?

そして、手が震えている。

まだ18歳にも満たなそうな少女が

1人で移住希望、

今までにそういった事は一度もなかった。


「お名前を教えて頂けますか?

それと、お一人ですか?」


なるべく冷静を装って聞いてみる。


「ハイ!!

田村 雫と言います。

1人で移住したいと思っています!!」


話のトーンが変わらない。

ひろ子の反応も変わらない。

もしかすると嘘の原因は、

笑顔か?


「田村さんですね、

了解致しました。

とても素敵な笑顔ですね。

その笑顔はありがたいのですが、

一度笑顔をやめて頂けませんか?

不自然な申し出ですみません。」


彼女はびくんっと反応する。

少しうつむき、

顔を両手で覆う、

そしてこちらに向き戻る。

別人のようだ、

目は伏せ気味で、

左手を右手で握り、

震えている。

今にも泣き出しそうな表情、

そしてひろ子の反応がなくなった。


「す、すみません、

笑顔じゃあないと、

うまくはなせないんです……

す、すみません……

迷惑ですよね……」


話し方まで変わった、

おどおどした、

発言する事自体に

不安を感じているような、

か細い声。


「いえいえ、

私どもはちゃんと貴方と

向き合いたいだけですよ、

お気になさらないで下さい。

申し訳ないのですが、

改めてお名前を

お願いしてもよろしいですか?」


「た、田村し、ずくです」


ひろ子に反応が無い、

偽名では無いようだ。


「失礼致しました。

私は長谷部潤、

そちらが妻のひろ子と言います。

改めてよろしくお願いいたします。

して、

何故移住したいとお考えですか?」


この感じ、雰囲気は違うが、

どことなく楠と同じ臭いがする。


「あ、あの、よろしくお願いします。

移住理由は、

そ、その、家出して家族から

逃げて来ました……」


ひろ子に反応はない、

やはり虐待か。


「そうでしたか、それは大変ですね。

帰っても住む家もない。

因みにこちらに移住しても

1からスタートなので

お金が無いと住む家も無いのですが、

今後の生活はどういう風に

お考えですか?」


なるべく優しく、

ゆっくりと刺激しないように話す。


「な、何も、考えてません。

私、

どうしたらよろしいですか?」


今にも泣き出しそうな声で、

やはりまだ子供のようだ。


「失礼ですが、

ご家族は心配なさっているのでは?」


心苦しいが聞かなくてはならない、

知らない少女の傷を

ナイフで抉るような感じがする。


「か、家族は、家族……

私は家族だと思われて

無いのだと思います。

両親は私に早く消えてと言います。

私、前に家出をして

1日家に帰らなかった。

お腹が空いて家に帰ったら

家に鍵がかかってて、

2時間程家の前で待ってた。

そしたら幸せそうな二人が

楽しそうに帰って来て、

私の顔を見た途端落胆の表情に、


『なんで帰って来たの?

そのまま居なくなってくれたら

良かったのに。

帰って来たら育てる責任が

生まれるじゃない、

あーあ、

折角警察に捜索届け出したのに、

なんで帰って来るかなー?』


って言われました。

その日の晩御飯は、

カビの生えた

焼いてない食パン1枚でした。」


嘘であってくれ、

少女の被害妄想であってくれ、

と思いながらひろ子を見る。

嘘の反応は無い、

代わりに涙を流している。


最悪だ。


こんな扱いをする親が、

日本に居ると考えただけで

胃のそこから黒く熱い、

ドロドロした物が込み上げてくる。


「君は生まれ変わりたいんだね?

例え1人になろうとも、

新たな人生を歩きたいんだね?」


そう聞くと雫は泣きながら

コクっと頷く。

私は即座に立ち上がり、

ひろ子に声をかける。


「少し地球にいってくる。

1時間程で戻ってくるから。

私が戻るまで地球への扉は

施錠しておいてくれ

それと、

勝手ではあるが私たちが貯めた

お金を使わせて貰う。

解るな?

いいか?ひろ子?」


ひろ子は決心した表情で頷く。

雫に向き直る。


「君は今後、田村雫ではなくなる、

その覚悟はあるか?」


雫は泣きながら、

強い真っ直ぐな目を私に向けしっかり頷く。


「はい!覚悟は出来ています。」


いい返事だ。

私はすぐに部屋を出て地球に向かう。



砂丘の熱気が熱い。

急ぎ政府との連絡用のスマホを

取り出し日本国防衛機関に連絡を入れる。


「長谷部です。

早急に手続きをお願いしたい。

まずは田村雫の両親の連絡先を知りたい。

国家権力を使ったらなんとかなるだろう。

娘さんが1人で異世界へ

行こうとしているから

確認をしたい為と言って

連絡する許可を得ろ。

それと、緊急で養子縁組の手続きを頼む。

取り急ぎだ、

私と田村雫が養子縁組をする。

動きがあり次第連絡してくれ、

頼んだ。」


伝えたい事を一方的に伝え、

電話を切る。

暑かろうが関係ない、

額から汗が流れる。

15分後、機関から連絡が入る。

雫の両親の電話番号、

5分後に電話をかけてくれとのこと。

縁組みの手続きはまだらしい。

5分後、母親の番号に電話をかける。


娘さんの力を借りたい。

異世界で人を救う為に

貴方の娘さんと私は

親子関係にならなくてはならない

(雫さんを救う為嘘はついていない)

面倒は全てこちらで見る

1000万円払います、

なのでご了承下さい。

そう伝えると

相手は嬉々として了承した。

(本当にクズだな)

スマホから1000万円を指定された

講座に送金する。

確認が取れたということだったので、

即座に養子縁組の話を説明、

行動してもらう手数料として

追加で100万円を振り込む。

嬉しそうな声で完了報告をしてきた。

私は組織を通して

即座に縁組みを完了させる。

そしてその夫婦の電話番号を

即座にブロック。

政府にも今後、二人からの『私たち』と

『私たちの娘』とのコンタクトを

一切遮断してもらう。

クズの考えるなど容易く想像出来る。

散財して追加の金を請求してくる。

解りきった事だ、

そのまま散財し、

破産すればいい。


全ての手続きを終え、

異世界への扉を5回ノックする。

解錠する音が聞こえたのですぐに入る。


扉の前には妻と娘が居る。

なるべく優しく話しかける


「雫さん、今から君は田村雫ではない、

こちらの世界に住んで貰う。」


雫は笑顔になったがすぐに、

心配な表情に戻る。

生活の心配をしているのだろう。

少し厳しめの口調で伝える


「それと、住む場所はこの喫茶店、

やりたいことができるまで

ここで働いて貰う。

食事は3食、必ずお腹いっぱい

食べること、

給料は無し、

その代わりに毎月お小遣いを渡す。

その分は雫の自由に使う事

貯めようが、

欲しいものを買おうが

好きにに使う事。

そして……。」


私も満面の笑みで、優しく伝える。


「今日から私たち2人が家族だ、

最初は怖いかも知れない、

徐々に仲良くなって行こう。

ここの家、

私たち夫婦と一緒が嫌なら、

お小遣いを貯めて家を出ればいい。

今日から君の名前は長谷部雫、

これから先の人生は

君の自由に生きなさい。

身の振り方については

今から一年後迄に答えを

出してくれればいい」


雫に伝えると不安そうに泣きながら


「よろしくお願いします。」


今度は自然だ。

不安と期待の混ざった声、

気に入らなかったら出て行けば良い。

私たちは精一杯の愛情を

この子にあたえてあげよう。

そう考えていると、

自分の今している仕事に自信を持てた。

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