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異世界対策特殊部隊見習いの僕、父を目指して勉強中!  作者: 愛賀綴


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9/21

09.ご褒美

 だいたい午前中に勉強して、午後に特殊部隊本部でアルバイト。本部でのアルバイトはだいたい一日置きで週末はどっちも休み。

 そんな夏休みとなって八月になった。

 春日先輩に連れられて本部に行った日は、夕方に父が僕の様子を見に来くれて一緒に帰った。

 父は強面顔だし、体は分厚いし、パッと見ると怖い。でも、僕と一緒にいる父の姿を見た志村先輩たちが「あんな表情もするんだな」って言ってたのが聞こえてきて、僕がニヨニヨ嬉しくなってしまった。父は今照れてた。これからも父をよろしくお願いします!


 ゲート班の先輩方々に異能の術を習い、発動できても制御方法に合う合わないがあって試行錯誤。異能の術はつくづく奥深い。

 初日に志村先輩たちの休憩が終わって任務再開になるときに、ジグソーパズルと絵描きと紙に針で穴を空けていた先輩たちとも挨拶した。

 彼と彼女らの奇妙な行動は異能の制御をとことん追い詰めた姿だと教えてもらった。

 ゲート班の大半の人は体を動かさずに異能行使をするのでリクライニングチェアに横たわる。横たわって任務にあたるのは、全力疾走したような疲労が体に及ぶから。昔々は床にそのまま寝ていたのに比べればとてもよい環境になった。

 紙を針で穴を空けていた人はゲートができないように防御的な修繕を施すのが専門。

 ゲートは何次元なのか不明な異次元空間で、そこで一点集中の修繕を施す。それこそ百メートルにある針の先の穴に糸を通すような繊細さ。現実だったら不可能なことを異能で行使する。試行錯誤の末に辿り着いたのが、実際に刺す行動が行使する異能の集中となったんだそうだ。


「傍から見たら確実にオカシイ人になってるだろうけど、ずれがないように異能を制御したいといろいろ試していたら、こうなったんだ」


 ぶつぶつ言葉に出ているのも無意識で、座標のようなものを言っているんだそうだ。

 ジグソーパズルを組み立てたり壊したりしている人も、絵というより絵の具をベッタベタに塗りまくっていた人も、同じように試行錯誤の末、手を動かすことで異能の制御を極みの域に引き上げたスペシャリストだと教えてもらったら尊敬しかない。


「それで『瞬足』が発動できたって?」

「そうなんです。志村先輩に習った『鑑定』を発動しようとしたら『瞬足』になって……。あ、でも、なかなか発動できなくて悩んでいたからコツがわかりました!」


 本部でのアルバイトのことを秋葉先輩に話して共有。しっかり笑われた。

 志村先輩に『鑑定』で僕がまだ未習得の術を習って、よーし! と発動したはずが、リクライニングチェアの上で足をジタバタ。視認できない速さで動く僕の両足。

 志村先輩と他の先輩方が「関連性ないのになんで!?」と、お腹を抱えて大笑い。

 恥ずかかったけれど、やっと『瞬足』が発動できた! これで夏木先輩の扱きから解放され……ないよな。


 僕が本部にアルバイトに行ってすぐ、秘密基地のどこかを臨時メンテナンスしなくちゃならないことがわかって、一週間くらい出入り禁止となってしまった。

 秘密基地に行けないんじゃ秋葉先輩による勉強もお休み! ……にはならなくて、秋葉先輩が僕んちに来てくれた。父としっかり話し合って決めていた秋葉先輩は卒がない。


 夏木先輩はまだ任務で帰ってこない。

 柊先輩と合流して、二人で何かの任務にあたっていることは教えてもらえた。下っ端の僕に情報共有できない内容のようで、とりあえず異世界に赴いてはいないと聞いて少し安堵。地球上にも危険な場所はあるけれど、異世界に赴くほうが断然危険性が高い。

 夏木先輩と秋葉先輩が組んだ僕の夏休み中の勉強スケジュールは滞りなく進行中で、夏木先輩がいなくても秋葉先輩が英語も地理も見てくれる。

 秋葉先輩による勉強は予想通りスパルタ。だけど、僕にあう勉強スタイルも模索してくれているからか、そんなにつらくない。毎日帰り際に渡される模擬テスト風の紙の枚数が多いけど……。

 そうそう、智也くんともメッセージアプリでやり取りしていて、智也くんがやっているスマホの英語学習アプリもインストールしてみた。ゲーム感覚で学べるのがちょっと楽しい。


「勇人は文系、理系に分類すると文系なのかもしれんな」

「うーん。どうなんでしょう……。よくわかんないです」


 僕自身、自分の得意科目・不得意科目がよくわからない。どれもこれも不得意な感じしかしない。だからあと半年くらいは浅く広く学ぶ。秋葉先輩がそれでいいと言ってくれる言葉に頼ろう。


 母は僕に中学生活がなかったのと同然だから、現実は高校一年生だけど、気持ちは中学一年生でもいいって言う。大学を目指すにしても何浪かしてもいいって、すっごい甘いことまで言う。

 姉も、僕が将来は父を目指して、国家公務員試験に挑戦しようと思っていることを知ったら、「医者になって学費補助してやるからね!」って言ってくれたり。

 確かに僕は精神年齢も肉体年齢も見た目より下かもしれない。精神年齢は僕が僕をなくしていた時間分。点滴や流動食で命を繋いでいた時間もあって体も成長しきらなかった。

 病室の隅に震えて蹲っていた僕の姿が二人の脳裏に焼き付いて離れないんだろうって父は言っていた。頻繁に会いに来てくれたけれど、僕が僕を取り戻すまでの間、別々の居住だったから、母と姉は僕のつぶさな変化を見ることができなかった。だから心配が大きい。

 父は僕の全部知っているから母と姉の甘やかしに乗るでもなく、そうかといって頑張れと発破をかけるわけでもなく、今やりたいことをやるのでいいというのも随分甘い。

 その分、家庭教師を務めてくれることになった秋葉先輩が厳しい。そういうことにしておこう。


「よし。今日はここまでにしよう」

「はー! ありがとうございました!」


 今日は数学をガッツリ。そして出された模擬テストは日本史。このままの目標で父を目指すとなれば法学部が有力。受験科目で歴史の選択をする可能性が低いけど、今は浅く広く覚えようって思ってる。日本史も世界史も知っておいて損はないからね。


 勉強が終わって、今日はご褒美がある。

 かき氷専門店に連れて行ってもらえるのだ!


「そんなに楽しみだったか?」

「そりゃもう! すっごく!」

「ははは! 今日は気がそぞろだったのは仕方ないな。今日のところは抜き打ちで確認だな」

「ううっ、はい!」


 テレビ番組で見たふわふわのかき氷が食べてみたくて、いつか行ってみたいと言ったのはゴールデンウィークを過ぎたあたり。

 僕が何気なく言ったのを秋葉先輩が覚えていて、「行きたいって言ってた店じゃないが行くか?」と、予約が取れたと誘ってくれたのは夏休みに入ってすぐ。行列のできる人気店に並んで、汗びっしょりになってから食べるのも、これぞ夏ってなるだろうけど、僕にしてみれば予約制ってだけでなんだかリッチ!

 そして、かき氷専門店に行くのが今日なのだ! 今日を楽しみにちょっとスパルタな勉強だって頑張った。楽しみで楽しみでニマニマと顔が崩れちゃう。


 ささっと片付けて、いざっ! かき氷専門店へ!

 車だと道の混雑が読めないので移動は電車。

 電車に乗る前にファストフードで軽くお腹を満たしてから出発!

 いい具合にお腹がこなれたところで着いたお店は、僕一人だったら尻込みしちゃうお洒落な外観だった。うおー! ドキドキ!

 他のテーブルに届くかき氷を見ても楽しくて、自分の目の前にかき氷が来たら、「うわぁ!」って歓喜の声が出た。

 お祭りの屋台で食べたジャリジャリって感じのかき氷じゃなくて、口の中にいれたらふわって溶けていっちゃうの。

 秋葉先輩とお互いにシェアしあって、食べている途中で秋葉先輩の「もう一つ注文してシェアってどうだ?」という悪魔の囁きにすぐ店員さんを呼んだよね。

 支払いは僕。秋葉先輩が当たり前のようにクレジットカードを出しそうだったけれど、父から軍資金をもらってきている。店員さんに僕が支払いますと宣言して電子マネーで精算完了。


「はー、大満足!」

「いいのか、支払い」

「はい! ここは僕で!」

「そうか。ご馳走さま」


 店内は冷房が効いていたし、かき氷で体の中も冷え冷えで、外に出た途端の暑さがちょっとだけ心地よかった。すぐに酷暑の日差しに日陰を求めてしまったけど。


 僕の行動範囲が狭いのをよく知っている秋葉先輩。ぶらぶら街歩きを提案され、電車で移動して若者なら渋谷だろうと連れてこられた。

 人混みの多さに圧倒されつつ、目的もなく街歩き。


 忘れていた感覚。

 もう会うことはないだろう小学生のときの大阪の友だちたちと、わいわい歩いた心斎橋も人混みがすごかった。

 ただ歩いて、店を見て、笑い合う。


「俺でもいいし、夏木でもいいし、お父上とでもいいんじゃないか?」


 親子で街歩きしている人たちもいる。でも、叶うなら──


「……いつか、智也くんと、歩けたらって思います」

「そうだな」


 智也くんの仕事の都合もあるから、いつかね。

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愛賀綴のSNS。基本は同じことを投稿しています。どこか一つを覗けば、だいたい生存状況がわかります。小説執筆以外にも雑多に呟いています。

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