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異世界対策特殊部隊見習いの僕、父を目指して勉強中!  作者: 愛賀綴


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23/25

番外02.起きる!食べる!風呂る!寝る!

 ここに音があるとしたら、ドガーンッ! と大騒音が鳴り響いただろう振動。


「参事官ーッ! ちょっとって言いましたよねー!」

「む。ちょっとだったぞ?」

「どんだけ馬鹿力なんですかー! うわあああっ! なんですかなんですかなんですかなんですか! この空間のねじ曲がり方、芸術ですか!」

「……帰っていいか?」

「またお呼びしますねー!」


 僕も帰ろ……。

 意識を切り替え、共同念波通信網から抜けて、『探知』から離脱。

 リクライニングチェアの上でふぅと一息。ちゃんと戻ってこれた。

 隣には父が横たわっているリクライニングチェア。さっき異能の力を出し過ぎた間抜けな姿と、目の前にある寝顔なのに険しく、だけど凛々しい父のギャップに笑っちゃう。


 今日は本部に呼ばれて、何事かと思ったら僕が落ちた次元の(はざま)の調査で、任意の出入りが可能になったから()に来ないかというものだった。

 僕を閉じ込めて、関根大先輩の肋骨にヒビが入ったあの手強い空間は、人工的に作られていた秘術の空間だとわかってから、この特殊部隊と同じヨーロッパの組織の人たちも調査研究に参加したいという打診が相次いでいる。

 こっちの本部が皇居のお掘りの中にあることもあって招くことができず保留し続けているけれど、どうにかして入れてくれぇと懇願している研究者もいるとか。

 柊先輩がヨーロッパ某所の旅の途中で、なかなか招くことができず申し訳ないとお詫びに行ったら、僕を救出したときにあの空間を見ているので捕まって質疑応答の嵐だったと。柊先輩、いつの間にヨーロッパに飛んだのさ。


 他の組織の方々にどう共有するかは別問題として、日本の特殊部隊にいる調査研究メンバーが、鋭意邁進、寝食忘れて秘術の解析と並行して使い道を模索している。

「起きて食え! 普通に寝ろ!」って医務職員さんが愚痴ってた。


 それにしてもあの空間はとてつもなく頑丈だということがわかり、本部や秘密基地に構築している異能訓練室ではできない大きな異能の術の訓練ができるのではないかと、その試験で呼ばれたのが僕の父。

 現在の特殊部隊で一番火力がある異能を使うのは柊先輩だけど、ヨーロッパ某所を旅していて、緊急じゃないなら帰らないと断られ、次に火力のある父が呼ばれた。

 柊先輩はとっても温厚な人柄なのに、容赦ない異能を緻密に制御して振るえるから一人遊軍任務が任せられる。こういう試験には一番適任だけど、難点はいつも旅に出ていて捕まらないこと。緊急任務じゃないと帰ってきてくれないこと。僕のことを心配しているから、僕経由なら帰ってきてくれるかもと言われたけれど、「勇人をダシに使うな」と釘を刺されて、結局帰ってきてはくれなかった。お土産待ってます。


 一方の父。火力だけなら柊先輩と並ぶけれど、術の制御が甘いのでさっきみたいに力の爆発のようなことが起きる。あれで本人はしっかり制御しているつもり。

 警察庁に入庁が決まったあとに父は秘術で特殊部隊の一員に選ばれ、当時特殊部隊を統括していた人に頭を下げられて引き受けたと聞いた。

 今では特殊部隊を率いる警備局の参事官にまで登りつめた父。

 異能の制御は決して上手くない。そんな自分ができることは何か。

 警察庁ではキャリア組。ならばその道を行き、作戦立案と責任を負う立場でみんなを助けようと努力を怠らなかった人。


 あんなことがなければ、この凛々しい父の顔を知らなかったかもしれない。

 ううんと顔を顰め、父も帰還してきた。

 天井からの明かり避けのカノピーを背もたれに戻して、父は大あくび。緊張感ゼロ。


「あんな空間だったんだな」

「うん。でも前のときより蜘蛛の糸みたいに()えるアレがハッキリした気がする」

「空間構築の糸だとか名前をつけていたな。なんにせよ昔の秘術は凄かったことだけはよくわかる」


 よっこいせとリクライニングチェアから立ち、使い終わりの拭き掃除。

 僕は()に行っただけなので異能疲労はほとんどなく、父はちょっとと言いながらけっこう大きな異能を振るったのでじんわりと汗ばんでいた。シャワーを借りると言うので、父が使ったリクライニングチェアも僕が拭き掃除しておきましょう。


 僕と父が使ったリクライニングチェアの近くからも数人が帰還の目覚め。

 普段はジグソーパズルを使ってゲート防御の修復などをしているプロフェッショナルな陽子先輩も起きてきた。以前に鈴木先輩と呼んだら医務職員さんにも鈴木さんがいて、二人が振り返ってしまうので下の名前で呼ばせてもらっている。

 陽子先輩は智也くんに纏わりついていた『靄』の駆除を実行してくれて以降、智也くんの役者活動を応援する同士として僕と話すことも多くなった。


「参事官は?」

「汗を流しに行きました」

「そう。ねえ勇人くん、どうだった?」

「ちゃんと一人一人認識できました!」

「よかったー。もう少し視認性を高めたかったけど、今はあれが限界」


 夏木先輩と柊先輩が助けに来てくれたときの僕はあの空間では単なる塊だったけれど、僕からは夏木先輩と柊先輩が半透明に()えた。

 僕を救出したあとの調査で、色んな人があそこに『探知』に入ってもお互いが近くにいるのに姿としては視認できなくて、何の条件で視認性が高まるのかとなり、僕の異能の調査もしたんだ。

 それでわかったのは僕はあのとき『鑑定』の術を薄く漏らしていたことだった。疲れてしまうから異能を止めたけれど、気持ちの不安で危険はないかと薄く薄く出し続けていたみたい。僕の異能の制御の甘さは反省と訓練だけど、それがわかってあの場での視認性を高められないかって奮闘したのが陽子先輩。

 秘術に別の術を組み込むのにとても苦労したといい、今さっき()てきたけれど、残念なことに僕が先輩二人を視たときよりは輪郭がぼんやり。だけど誰なのかはわかるからいいと思った。

 『探知』に入る前にホログラムのゲームのようなイメージと言っていたけれど、まさにそんな感じで、父がふんっと異能を振るった際も実体同様に動きが伴って()えたし、でも実体はリクライニングチェアで寝てるんだよね。不思議!


 陽子先輩も今日は僕たちの付き添いで()に行っただけなのでリクライニングチェア使用。

 拭き掃除をしたら、よしと気合を入れて僕に苦笑を向けた。


「さて、あの人たちを起こすの手伝ってもらっていい?」

「はい!」


 すでに医務職員さんが『探知』から戻るよう動いている一画。

 調査研究に没頭している面々。

 さっき父が馬鹿力で歪めた空間に歓喜していたし、自分たちで戻る気はないよね。

 点滴に酸素マスク、オムツ任せで数日間調査に没頭はだめです!

 調査研究メンバーのみなさん、起きましょう! 食べましょう! そしてお風呂に入りましょう!

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愛賀綴のSNS。基本は同じことを投稿しています。どこか一つを覗けば、だいたい生存状況がわかります。小説執筆以外にも雑多に呟いています。

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