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異世界対策特殊部隊見習いの僕、父を目指して勉強中!  作者: 愛賀綴


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17/21

17.どうする!?

「はじめまして、新城智也です。勇人くんとはスクーリングで意気投合して、仲よくしてもらってます!」

「こちらこそ、勇人の父です。楽にしていいからね」


 智也くんが来てくれました。

 一階のエントランスに迎えに行って、そこでお土産だけ僕に渡して帰ろうとする智也くんだったけれど、やっぱりなんとなく帰りたくなさそうな気配がして、「夕食食べてかない?」って誘ったら、戸惑っていたけど頷いてくれた。車で送ってきたマネージャーさんもなんだかホッとしていた。

 智也くんが了承する前、マネージャーさんを見てどうしようと二人して迷っていたけど、智也くんのことは父が車で送ってもいいですしって話したら、躊躇っていたマネージャーさんも何度も頭を下げて智也くんを預けてくれた。僕の父が警察の人っていうのは智也くんから聞いていたみたい。水戸黄門様の印籠じゃないけど警察って言葉は本当に強い。


「え? これ全部?」

「買うのが楽しくなっちゃって」


 お土産いっぱい!


「智也くん、僕に撮影でどこに行くか言わないでいたのに、このお土産でどこだったかバレバレなんだけど」

「もういっかなって。勇人くんは言わないでしょ?」

「言わないけど!」


 二人でぶはははっ! と笑っちゃった。

 だって、信州限定の文字がある菓子箱だらけ。雷鳥の絵で有名な昔からある菓子もある。こっちはおやきで、長野で有名な七味唐辛子の小さい缶も!

 僕たちのやり取りを見ていた父も釣られて笑うよね。

 さすがに何の撮影だったかは言わないし、僕も聞かないけど、善光寺の観光ができたんだって楽しく話してくれた。


「夕飯に誘っておいてなんなんだけど、まだ何にするか決めてなかったんだ。豚こま肉と合い挽き肉ならあるから冷しゃぶとかハンバーグとか?」

「なんでもいいよ」


 わちゃわちゃ喋りながら二人で作ろうって冷凍庫を覗く。野菜室も覗く。ミイラ野菜を弔ったあとでよかったよ!

 部屋は冷房を効かせているけれど、外は毎日暑くて仕方ない。それで最初は冷しゃぶに傾いていたけど、常温保存の食材棚を見たらカレールーの箱が八個もあって、「なんでこんなにあるんだよー」って笑われて。

 カレールーを消費しよう! となり、合い挽き肉を使うカレーを作ることにした。

 箸が転んでもおかしい年頃って女の子に使う言葉だけど、今の僕らはまさにそれ。


「カレーなら福神漬けからっきょうでも買ってくるか?」

「うん、まだできないし、父さんいい?」

「何かデザートも買ってきてやるから、美味しいのを作ってくれよ?」

「やったー!」

「ありがとうございます!」


 父が買い物に出かけて、智也くんとともにタマネギと格闘。


「……ありがとな」

「うん?」


 二人ともタマネギにやられて涙が出てます。


「撮影行く前に、親とちょっとあってさ」

「ってメッセージきたから、実は心配してた」


 ちょっとどころじゃない。

 僕は熱が出ちゃう前日まで智也くんちを監視していた。智也くんがご両親のどちらかに打たれた当日はいなかったけど、先輩たちからの報告でかなり詳細に知っている。


「うん……。……だから、……帰りたくなくて……。誘って、くれて、嬉しかった」

「うん」


 グズグズ泣いているのはタマネギのせい。

 鼻の奥がツンと痛いのもタマネギのせい。


「あのさ、なんなら泊まったっていいからね」

「そこまでは……。でも、ありがとな」

「うん! タマネギやっつけちゃお!」

「ああ!」


 もうボロ泣き。タオルで拭っても拭ってもタマネギが泣けってしつこいからさ!

 タマネギとの格闘を終えて、顔を洗って。

 まったく解決してないけど、ちょっとでも吐き出せたことで、少しは智也くんの心の重しが軽くなったらいいなと願う。


 タマネギと格闘し始めた時点で「こんなに?」って言っていた智也くんだけど、大きい鍋を出したら「何人前?」と笑い出し、僕の父の体の大きさを思い出して納得の大笑い。ジャガイモとニンジンもやっつけて、合い挽き肉は冷凍していたパック全部入れちゃう。カレールーも一回で一箱丸々使います! それだけ作っても二日でなくなる摩訶不思議。

 ご飯は智也くんが来る前に五合を浸水させておいたので、炊飯器のスイッチオン!

 タマネギ号泣を抜けてからはわいわい作って、途中父からビデオ通話で「どのケーキがいい?」と画面越しに洋菓子店のショーケースを見せられて大興奮!

 カレーは箱のレシピ通りに作れば美味しくできる。少し濃い目の味にしたかったからコンソメも適量入れた。これは母が作っていたのを思い出してそうしてる。

 父が帰って来る頃、ご飯も炊き上がる。

 まだカレーを煮込み始めたばかりだけど、食べる用意しとこうと皿を出そうとしたら智也くんのスマホが鳴った。

 画面を見た智也くんの顔が強張る。申し訳ないと思ったけど、智也くんの表情がなくなったのを見て画面を見た。「母さん」の文字。

 智也くんは着信に出ない。

 僕を見て、泣きそう。せっかく楽しく作ってたのに。

 留守番電話に切り替わったようで、通話が切れて、すぐにまた鳴り出した。


「……僕のところに寄ってるって言ったほうがいいんじゃないかな」

「……出たくない」


 その気持ちもわからないでもない。

 鳴って、切れて、また鳴って。スマホの電源を落としたいけど、そうしたらマネージャーさんたちからの連絡があったときに出られない。ご両親の番号を着信拒否する決断もできない。

 しつこかったけど十何回で鳴らなくなった。


「父さん帰ってきてから考えよう?」

「うん、ごめんな」

「ううん」


 床に座り込んで膝を抱えて小さくなってしまった智也くん。

 もしご両親の攻撃的な性格が『靄』に憑かれた悪影響のせいなら、『靄』さえ捕獲できたら解決の糸口になるかもしれないのに……。

 『靄』はまったく別で、ご両親のもともとの性格によって智也くんをこんな状況に追い込んでいるとしたら、やっぱり助けないと。このままじゃ智也くんの心がだめになっちゃう。

 両膝に顔を埋めてしまった智也くん。

 その姿を見て、父にメッセージを送った。


 ──智也のお母さんから何度も電話。智也くん出たくないって出なかったんだけど、蹲っちゃった。

 ──十分くらいで着く。


 よかった。もうすぐ帰ってくる。

 と、ホッとしたら、返信をくれた父から電話が来た。

 僕のスマホの振動に智也くんがビクッて顔を上げたけど「父さん」と言ったら、安心したのかまた泣きそう。


「父さん何?」

『智也くんに聞かれてもいい内容で適当に返せ』

「……! え、カツ? 唐揚げ? うーんあれば食べるけど」


 父の切迫した声に只事じゃないってピンときて、咄嗟に話を作る。

 智也くんがオドオドした目で見てくるけど、大丈夫って表情と手ぶりで合図して、不自然にならないように少しだけ距離を取った。


『さっき柊から。智也くんのご両親がマンションを出て車でどこかに向かった』

「あ、カツなら冷凍あるよ。一昨日の残り」

『飛び出す前に訪問した誰かを殴り飛ばした。おそらく智也くんのマネージャーだ』


 父さん、走りながら話している。僕が送ったメッセージと先輩たちの連絡のどっちが先だったかはわからない。

 智也くんは僕んちに寄ることになったけど、お土産以外はとっても身軽。マネージャーさん、着替えなどの荷物バッグを智也くんちに届けたんだ。それで智也くんが寄り道したのを伝えて、暴力を振るわれた? 想像しながらも、今は智也くんを心配させないことを言い続けないと。


「カツカレーしたいなら冷凍のでもいい?」

『夏木から。靄がヘビのように上空に伸びた』


 僕の全身に緊張が走る。

 反射的に窓の外を見たかったけど、何気ない振りで窓のほうに体を向けて空を見た。だけど異能を発動できないとわからない。


「じゃ、待ってる」

『急ぐ!』


 父との通話を終えて、智也くんに「十分くらいで帰ってくる」と伝えたら、ご両親のことを相談できないかと泣いてしまった。

 撮影が終わって、僕んちにきて、きっと頑張っていた糸が切れてしまったんだ。

 智也くんを慰めながら一番近くにある異能を発動させる紙の在り処を思い出して、なんでポケットに入れなかったのかと自分を殴りたくなる。一番近いのは財布にいれてあるレシート。この状況でトコトコ歩いてリビングのソファーにあるボディーバッグから財布を取り出せない! 今度から無駄になってもポケットに入れておかなくちゃ!


「ここじゃなんだから、ソファー行こ」

「ううっ!」


 泣きじゃくる智也くんを立たせてリビングのソファーに誘導。智也くんを座らせるときにボディーバッグをどかすように回収して、タオルを取りに洗面所に急いで、財布を取り出してレシートを出す。自然だったよね? 僕、よくやった!

 秋葉先輩に倣い、レシートの裏に異能の発動となる文字を書いて仕込んでおいた。あるのは三枚。二枚をポケットに突っ込み、一枚を握ってタオルを持って智也くんのところへ。

 そして横目に窓を見て異能発動!


「!」


 空に薄墨の細く長い帯のような影。

 夏木先輩の報告でまさかと思ったけど、『靄』がこっちに向かってる!

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愛賀綴のSNS。基本は同じことを投稿しています。どこか一つを覗けば、だいたい生存状況がわかります。小説執筆以外にも雑多に呟いています。

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