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異世界対策特殊部隊見習いの僕、父を目指して勉強中!  作者: 愛賀綴


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14/24

14.たられば

 智也くんのご両親は本当にマンションから出てきてくれなくて、もう異常としか思えなかった。

 そんなこんなでやきもきしても、例え本職の警察であっても事件もないのに踏み込めない。

 柊先輩、夏木先輩、僕の三人で見張っていたけど二十四時間とはいかなくて。

 その間も智也くんは僕と他愛もないメッセージのやり取りをしてくれて、無機質なテキストが伝えてくるのは智也くんの笑顔。

 少し前に君は泣くようにしてマンションを出た。それを僕は見ていたんだ。楽しさを装ってくるテキストとスタンプに涙が出た。


 秋葉先輩が僕をこの任務に就かせたくなかった理由がわかった。警察官が家族親族の事件に関われないのと同じ理由。だけど特殊部隊の人員は限られているから、運が悪いと家族や知り合いが任務先の対象にいる可能性はある。

 父は僕のときに実感した悔しさや憤り。

 僕にも早く訪れた試練なんだ。


 メッセージのやりとりの中で智也くんが撮影で地方ロケに行く日も知った。

 一度は夏木先輩が電車内で接触して智也くんの『靄』を解消したけれど、ご両親に憑いた『靄』本体からまた智也くんにも残り香のように纏わりついて、日に日に濃くなっていたから早く離れさせたかった。

 接触する機会を探りながら、智也くんに変な影響が起きませんように! と祈っていたのに、事件は起きてしまった。

 智也くんがご両親に平手打ちされて、それを理由に近い交番に駆け込んだのが撮影に向かう前日の昼のこと。


 その日の僕は微熱が出て智也くんち監視も勉強も休み。

 父も僕のことが心配なのか休みを取ってしまったから、心配でもこっそり出るわけにはいかず。

 父が報告を受け、僕にも教えてくれて、悔しくて仕方なかった。

 小説や漫画だったら、異能なんてものがあれば、智也くんが怪我を負う前に、エイッとご両親をやっつけてめでたし解決! となっただろうに。

 八つ当たりしたいけれど誰に八つ当たりしたって意味がない。そうわかっているのに結局父に八つ当たりしてしまった


「僕たち、わかっていたのに、わかっていたのに!」

「でも、言えない。それもわかるな」

「わかるけど! わかっ! ……悔しい!」


 ボロボロ泣いた。

 泣いたってどうなることでもないけど止まらなくて。


「彼の行く撮影ロケ場所はわかっている。ゲート班を数名かを向かわせて智也くんの『靄』は捕獲させる。地方撮影ならサインをもらうような隙がどこかに生まれるはずだ」


 どういう情報網で得たのか、彼の撮影ロケ地に人員手配をしてくれていた。接触できる機会があれば『靄』の捕獲は可能。彼は気軽にサインに応じるタイプだって聞いているし、彼に纏わりついているあの『靄』はその作戦できっと大丈夫だろう。


「あとはご両親だな……」


 智也くんへの暴行が公の事件になるかはわからないけれど、もともと外に出ない人たちなのに、事情聴取等で第三者がいる状況になってしまって、実に接触しにくくなってしまった。


「一つ一つ片付けていこう。『靄』の一つ二つでゲートがすぐにできるようなことにはならない。そういう意味では智也くんのご両親に憑いている『靄』の捕獲をそこまで急ぐ必要はないんだ。勇人には冷たく聞こえるかもしれないが、今回勇人接点で早期発見したこと自体たまたまだった。だから本気の強行作戦ではなかった。ここまではいいね?」


 智也くんが打たれる前に監視が強化できていれば、『靄』の捕獲ができていればと、たらればはあるけど、父の言うことが事実。頷けないのは僕が悪い。


「智也くんだが、『靄』の残滓が纏わりついているけれど憑かれてはいない。それは勇人も『鑑定』したね。自信を持て。智也くんについては撮影ロケ地でクリアにさせる」

「お、願い、します。僕と、友だちになって、くれ、た、んです」

「ああ、志村に人選させる」


 もう十六歳になったというのに、父の胡座のなかで父の厚い胸に顔を擦り付ける。甘えん坊だと思うけど悔し涙が止まらない。 


「ご両親については事情聴取の状況次第だな。柊からだが、マンションの両隣と上下の部屋に喧騒が漏れ聞こえていたようだ。マスコミが嗅ぎつけると面倒だな」

「ねぇ、清掃サービスの人になれる人いない?」

「あのな。ドラマじゃないんだ。無理言うな。同じ警察でも警察庁から地域の警察署にひょいひょい行けないのもわかってるな?」

「それは、わかってる……」


 事情聴取する警察官に特殊部隊の誰かが紛れられたらそりゃ簡単だろうけど、父を目指すと決めて警察のことは調べた。だから、名前が似ているけれど警察庁と警視庁は違うのは理解してる。地域の警察署との関係だってわかっている。同じ警察という組織だけど違う。特殊部隊はその中でも隠密部隊。ドラマのように急に出向させて解決させちゃうなんて無理だってわかっているけど、先手を打たれてできないと言われて感情的に不納得。

 ドラマならあの二人に接触するなら清掃サービスの人か、その他だとデリバリーサービスや荷物配達の人になるんだろうなと思ってポロリと言ってみた。父に即座に無理と言われて、本当に無理だろうかと考えて無理だとわかった。

 採用に募集して、書類審査等があって、まず面接にたどり着けるか否か。面接を無事通過して採用されても仕事に行く先を選べるとも思えない。果てしなく遠かった。

 それならあの二人が何かの用事で外に出てくるのを待って、道を教えてくださいでも何でもいいから接触する方法のほうがまだ近道。柊先輩の考えた作戦が現実的という悲しみ。


「……なんで笑ってんの?」

「いや。勇人が理路整然と考えているから」


 なにそれ。僕の成長を喜んでニヤついたってこと? なんだか恥ずかしくて、父の胸に頭をつけて高速で擦ってやった。


「ははは! 勇人! くすぐったい!」

「いーっ!」


 グズグズと泣いていたけれど、父と話していたら気持ちの整理はできた。

 父の体温とトントンと優しく背を叩いてくれるリズムに目蓋が重たい。


「少し寝ろ。夕飯はまあ適当に考えよう」

「うん」


 体を回復させなければ何もできない。

 今日は智也くんからもメッセージはないだろうけど、ここのところ毎日何かを送ってるのに、特殊部隊任務の関係で彼の事情を知って勝手に忖度するのもおかしいと気付いてスマホをいじる。


『クーラーに負けちゃったかもー』


 何を送るかと考えて、熱を出したことを嘘の理由でテキストにした。続けて布団に潜りこんでいる絵のスタンプをぺたり。

 既読になるのは明日以降だろう。

 『靄』のせいじゃないかもしれないけれど、彼が打たれる前に助けてあげたかった。力不足でごめん。

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愛賀綴のSNS。基本は同じことを投稿しています。どこか一つを覗けば、だいたい生存状況がわかります。小説執筆以外にも雑多に呟いています。

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