10話
気がついたらバックヤードらしきところで、ソファに寝かせられていた。固めのソファだからなのか、背中が痛い。ゆっくりと重だるい体を起こすと「大丈夫ですか?」と声をかけられた。
声の先を見るとウエイターがニコニコしながらこちらを見ている。
「大丈夫、です。」
思わず弱々しく言葉が出てしまったが、ウエイターは表情を崩さない。
フラつきながらもなんとか立ち上がる。
「ご迷惑をおかけしてすみません。」
「ご迷惑だなんて。ここに来ていきなり倒れる人もいますから。」
「そうなんですね…。」
通りでいつも飲み物を飲む時は傍にいる筈だ。倒れかけた所をすぐに支えられたのは、慣れているからか。
「今日はもう帰ります。出口はどこですか?」
「あちらです。」
綺麗な姿勢で示された方向に向かって歩き出す。
「お大事に」
背中からそう声がかけられた。
それからは食欲もなく、寝付けない日が続いた。
寝付けなくても日々は過ぎていく。仕事に支障が出ないよう、夜は寝ないといけない時間になれば、目だけを閉じてベッドに横になる。
頭の中で色々な考えが浮かぶが、必死にうち消そうとする。それでもやっぱり考えてしまう事が続いた。
この先待っている絶望、確実に今の状況から悪くなってくる予感、死への恐怖。この先どうしたら良いのかわからなかった。
そんな中、友人からLINEが届いた。
〔久しぶり!休みがとれたんだけど、今度遊びに行かない?〕
大学からの友人である彼女(美和子)は、時々時間が合えば遊ぶことがある。
彼と婚約してからはめっきり遊ぶことも減ったが、婚約解消してからはどちらともなく誘っては遊ぶようになった。
暫く悩んだのち返信を送る。
〔いいよ。いつにする?〕
正直気持ちが沈み余裕はなかったが、落ち込んだままでいてもしょうがない。
遊びに出かけることにした。




