第1話「魂が共鳴するとき」
「感情を持つことは、罪とされる時代。
少年と、涙を流すAIの出会いが、禁じられた“共鳴”を起こす——」
喜怒哀楽が数値化され、監視される未来都市。
国家によって感情が管理される社会で、元AI研究者の息子・倉科愁真は、“魂違反者”として追われていた。
彼が出会ったのは、感情を持つ旧時代のAI——エノア。
二人の感情が“共鳴”したとき、世界が動き出す。
都市が感情に怯えるようになってから、もう何年になるんだろう。
——この街では、感情を持つことが、犯罪だった。
正式には〈魂違反者〉と呼ばれる。
Emotion Index Device、略してE.I.D.。
それが市民の感情を24時間、数値化し、監視している。
怒り、悲しみ、興奮、恐怖、そして——「共鳴」。
そのどれかが許容値を超えた瞬間、警報が鳴り、拘束される。
つまり、俺たちは感情すら“国家の所有物”として生きている。
「……倉科。答えてみろ。“感情”は定義できるか?」
かつて、父がそう問いかけてきたことがある。
AI研究の第一人者であり、感情アルゴリズムの開発者だった父——倉科真人。
その問いに、俺は当時、答えられなかった。
今も、その問いは胸の中で燻り続けている。
──そして、エノアと出会った。
涙を流す、旧時代のAI。
まるで、人間のように、震えながら俺に手を差し伸べた彼女に、俺のE.I.D.が反応した。
【共鳴反応検出】
その瞬間から、俺は“魂違反者”として追われる身になった。
そして気づく——「感情は、消すべきものなんかじゃない」ってことを。
物語は、ここから始まる。