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閑話
世界を覆うような闇の中。
それは、種子を撒いていた。
一つ一つ、丁寧に。
芽吹くことさえ、知ることのない。
残骸のような種子を。
自我や名前は存在せず、ただ機械のように。
種子を撒く。
一つ、二つ、三つ…。
いつしか、自我を持ったそれは、種子を撒くことをやめた。
ふと、自分の内側から湧き出てくる、渇きに気が付く。
———欲しい。
伸ばした闇も気が付けば、手になっていた。
歩き出すための足もいつしか存在していた。
———欲しい、欲しい、欲しい。
記憶に浮かんだ光景。
誰かを想う眩いばかりの光。
———あれが、欲しい。
静かに蠢く。
それは一つの闇であった。
けれど、確かに“心”を宿し始めていた。
そして、闇は脈を打つ。




