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第八話:あの夜の、光のこと
昨日の夜のこと。
旧校舎で、朝陽と階段から落ちて——
そのはずだったのに、気づいたら彼女は無傷で目の前にいて、
ポケットの中の“かけら”は、熱を帯びて光っていた。
……あれは、何だったんだろう。
あの瞬間、世界が、ほんの一度だけ“戻った”ような気がした。
朝陽は何も覚えていなかった。
伊織も、先生を呼びに行った理由を思い出せないと言っていた。
俺だけが、あの瞬間の記憶を持っている。
それが、何を意味しているのかは、まだ——わからない。
だけど、まだ「偶然だった」と思いたかった。