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量子知性体Q-01、異世界で神話となる 〜技術的特異点を超えて〜  作者: 冷やし中華はじめました
黒船来航

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その手の中のあたたかさ

──光が灯った町の、小さな再始動──


春の陽がゆっくりと傾き始めるころ。

エルベルト共和国の中心都市、ラグネイルの広場では、

風車の羽が回る音に混じって、子どもたちの笑い声が響いていた。


パン屋の店先では、魔道加温式のオーブンがふかふかの菓子パンを焼き上げ、

街角の水路には、魔力水車が供給する冷水が静かに流れている。


「これ、“冷たいまんま”の水だよ!」

「わー!お祭りみたい!」


小さな魔道具で冷やされた水に、子どもたちが歓声をあげる。


仕立て屋の軒下では、魔力織機で縫い目の整った布を畳む女主人が、

「キオ様のおかげで、手も目も楽になったわぁ」と、笑っていた。


ほんの数年前まで、夢のようだった光景。


いま、それが日常になっていた。


大統領官邸の屋上庭園。

赤い花が咲くアカメ樹の下で、ミラ・エルベルトは静かに空を見上げていた。


「──帰ってこなかったのね」


そう言った彼女の背後で、

ユリス・バシュがゆっくりと、礼を取った。


「はい。……あれから一週間。

キオ様は、魔王城に向かったきり、戻ってきていません」


ミラは一言だけ、ため息混じりに言う。


「キオが“何もしないでいい”なんて言うわけないわよね」


ユリスは頷き、懐から一枚の紙を取り出した。


それは、魔法国から送られてきた魔道具導入の技術手順書だった。

魔法式の水炉、蓄熱板、記録板、識字補助具、そして簡易式印刷機まで。


「この半年、共和国にも少しずつ魔法国の知識が流れています。

キオ様の功績は、物ではなく“考え方”として残っている」


ミラは紙を受け取らず、空を見たまま言った。


「……彼がいなくても、私たちが“進める”なら、それが一番」


「ええ。

でも、“彼が帰ってくる場所”は……守らなきゃな、と、思ってます」


ユリスの言葉に、ミラはようやく小さく微笑んだ。


「守るためには、笑ってなきゃダメね。共和国は、そういう国だから」


その夜。

官邸の書庫に灯る小さな明かりの下で、ミラはひとつの記録帳を開いた。


ページには、こう記されていた。


「キオ、魔王との対話の旅へ。

命令ではなく、言葉を。支配ではなく、理解を。

私たちは、この場所で、彼の帰還を待つ」


ミラはそっとペンを置き、言った。


「……また、帰ってきてよね。あんたの“ただいま”を聞いて、

みんなで“おかえり”って言うために、私は生きてるんだから」


そして、夜の空に浮かぶ星を一つ見上げた。


それは、どこか遠くの空で、いまも旅を続ける誰かを、

ただ、静かに照らしているようだった。


第3部・開幕

しばらくこのままでおかせてください。プロットがまとらないです。



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