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量子知性体Q-01、異世界で神話となる 〜技術的特異点を超えて〜  作者: 冷やし中華はじめました
黒船来航

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歩みの中で見るもの

──変わる景色、変わらぬ問い──


魔法国の王都を出て三日。

キオとユリスは南西の山間を越え、平原地帯へと入っていた。


かつては農地すら疎らだったこの地に、いまは整備された街道が続いていた。

土を固めた簡易舗装に、要所ごとに設けられた水の補給所。

周囲には、共和国式の風力測定塔と、魔法式の地脈感知板が交互に立っている。


「随分と……変わったな」


ユリスが、ぽつりと漏らした。


「ここは数年前、獣道みたいなもんだった。

今は物流ルートの一部に組み込まれてる。食料も工芸品も流れてる」


キオは歩を止め、足元の舗装に触れた。


「この配合は……砂利と魔力練度の高い粘土を混ぜたものですね。

表面だけでなく、振動と熱を吸収する層になっている。

……実に、合理的です」


「それ、お前が考案したんだろ」


「私は提案しただけです。

使いこなしたのは、彼らです」


少し進むと、小さな村があった。

だが、かつての“村”の風情はなかった。


集落の中央には風力蓄電装置が設置され、

各戸に魔力灯と調理用の熱板が供給されている。

中央広場では子どもたちが紙に何かを書きながら、互いに発音の練習をしていた。


「……教育が根付いているな」


「はい。基礎文字と記録法、簡易算術が義務教育化されました。

この村も、学舎の分校が設置されたばかりです」


ユリスがうなずいた。


「文字を読む力は、“見る力”を変える。

理解できないものを“見えるようにする”ってのは、大したもんだ」


二人は昼食に、村の露店でパンとスープを買った。


ユリスはふと、店主の少年が扱う計算板を見て言った。


「……あれ、そろばんか? 共和国式に似てるけど、独自改良入ってるな」


「彼らが改良しました。

使いやすさより、読み取りの速さを優先した結果、配置も変わりました」


「お前の知識が、形を変えて受け継がれてる。……面白いな」


キオはパンを一口かじるふりをして(もちろん消化はしない)、

視線を遠くの田畑に送った。


「“正しさ”は、共有されることで“知恵”に変わる。

私は、その構造が見たいだけかもしれません」


道中の街では、工房から蒸気が立ち上り、

魔力補助つきの織機で布が編まれ、陶器に絵付けされた商品が市に並んでいた。


キオはその中で、手作りの玩具にふと目をとめた。


小さな魔力仕掛けで羽がぱたぱたと動く鳥の人形。

それを握りしめていたのは、笑う赤ん坊だった。


「……あれも、お前の仕組みだな」


「ええ。ですが、あの子にとっては“遊び”であり、

発明でも、技術でもないのです。

それが、いいのです」


ユリスは頷き、背中の荷を少し持ち直した。


「……だが、これだけ“人が育ってる”場所を離れて、

本当に魔王に会いに行くってのは、相当な決意だな」


キオは歩を進めながら、静かに答えた。


「だからこそ、行くのです。

この社会が“守られるに足るものか”、

そして“対話は、破壊より速く届くのか”……

それを、確かめに行く旅です」


道は、さらに山の向こうへと続いている。

魔王国は、その先にある。


だが、そこに至るまでに、

キオとユリスはこの世界の“変わりゆく風景”を、確かに目に焼きつけていた。

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