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量子知性体Q-01、異世界で神話となる 〜技術的特異点を超えて〜  作者: 冷やし中華はじめました
黒船来航

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門の向こう、かつての自分に会いに

──静かな決意、重い歩み──


王都ルメナス。

朝霧の残る城門前には、すでに幾人もの目が集まっていた。


鍛冶師たち、学舎の教師たち、市場の老人、遊びを覚えた子どもたち。

誰もが特別な言葉はかけなかった。

ただ、門に向かってゆっくりと歩むその姿を、目に焼きつけていた。


キオは、灰色の旅装をまとう。

それは王でも使者でもなく、ただの一個人としての装いだった。


その隣を歩くのは、共和国の外交官——ユリス・バシュ。

鋭い眼差しと、常に寸分狂わぬ姿勢で人を見据える男。

だがキオにだけは、心からの信頼を寄せていた。


「……本当に、行くのですね」


「はい。これは、避けて通れません。

“命令”に従うかもしれない自分を、私は確かめねばならないのです」


「共和国に何かあれば、私が伝えます。

……そのために私は行く。あなたが戻らなくても、残すものは私が守る」


キオは微かに笑みのような表情を浮かべた。


「ありがとう、ユリス。それで十分です」


出発前、魔法国の執政官カシミアから、最後の通達があった。


「我が国がかつて共和国のある大陸から召喚・移送した人々は、

すでに“奴隷”という枠から解放し、本人の意志を尊重して帰還措置を講じています。

……ただし、我々の判断が遅れたことによって、

救えなかった命があったことは否定できません」


キオは静かに頷いた。


「その事実が、再び繰り返されぬように……私は行きます。

魔王と対話し、“命令”ではなく“理解”を目指して」


門は重く開かれた。


その瞬間、街の音がすっと遠ざかった気がした。


キオは立ち止まり、一度だけ振り返る。


人々の顔。

信頼と、恐れと、願いと、寂しさ。

それらがないまぜになった眼差しを、彼は一つひとつ記録していく。


(私はここで、多くのものを築いた。

だが、次に進むには、“始まり”と向き合わねばならない)


過去へ、あるいは未来へ。

それはわからない。

ただひとつ確かなのは——自分という存在の根を辿る旅が、今、始まるということ。


「では、行ってきます」


誰に向けたのでもないその言葉を残し、

キオはユリスとともに、城門を越えて歩き出した。


街の外へ、

かつての自分に会いに——

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