表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/83

学びの広場 〜知恵と工夫が育つ場所〜

村の中央にある広場は、いつのまにか『学びの場』になっていた。


それは最初、キオが村人に向けて「簡単な道具作り」を教え始めたのがきっかけだった。


「今日は『踏み板式の水くみ装置』を作ります」

キオが言うと、広場には子供から老人まで、多くの村人が集まった。



---


キオは道具の仕組みを簡単な言葉で説明した。


「足で踏み板を踏むと、このてこの力が働いて、水が汲み上げられます」


村人たちは最初、「そんな簡単なもので水が出るのか?」と半信半疑だった。


しかし、実際に作り始めてみると、意外なほど単純で、誰でも作ることができた。


「本当に出たぞ!」

水が流れ出すと、村人たちの歓声が広がった。



---


次に、キオは『乾燥棚』を示した。


「収穫した野菜は、干すことで長持ちします。

しかし、ただ干すだけではなく、風と日光がよく当たる工夫が必要です」


村人たちはそれぞれ自分たちの家に合うように、少しずつ工夫を加えて棚を作った。


「俺の棚は屋根に直接取り付けたぞ。太陽が一番よく当たるからな」


「あたしの家では、壁の横に設置したよ。風通しが良いから野菜が早く乾くんだ」


キオはそれらの工夫をひとつずつ見て回り、肯定した。


「皆さんの工夫は素晴らしい。知恵とは、こうして試行錯誤しながら生まれるのです」



---


やがて広場では、『学びの日』と呼ばれる日が毎週開かれるようになった。


村人たちはそれぞれの経験を共有し、新たな工夫を提案し合った。


ある日、老人が言った。


「水路に葉っぱが詰まって困っている。何か良い方法はないか?」


若者が手を挙げる。


「網目の細かい格子を置けばいいんじゃないか?」


キオはうなずいた。


「その通りですね。格子は水を通しつつ、葉やごみを防げます。

試してみましょう」



---


子供たちも参加していた。

彼らは木片を使った簡単な遊び道具を作り始めた。


「見て、キオ! 風車みたいに回るよ!」

子供たちは自慢げに手作りの玩具を見せる。


キオは微笑んで答えた。


「その遊び道具も、工夫次第で立派な道具になります。

遊びからも知恵は生まれるのです」


子供たちは自分たちの作ったものに誇りを持つようになった。



---


その夜、村人たちが焚き火を囲んで話した。


「キオが来る前、俺たちはただ与えられたものだけで暮らしていた。

今では自分たちで考え、道具を作り、問題を解決している」


ルカが笑顔で言った。


「そうだね。キオのおかげで、うちらは『考える力』を手に入れたよね」


キオは静かに答えた。


「知恵や道具は私が与えたものではありません。

私はただ、みなさんにその『可能性』を示しただけです。

ここから先の工夫は、みなさん自身のものです」



---


次の『学びの日』には、さらに多くの人が集まった。


「もっと他にも工夫があるんじゃないか?」

「そうだ、みんなで新しい道具を作ってみよう!」


広場は笑顔と活気に満ちていた。



---


キオはその光景を記録した。


> 【記録:学びの場の創設】


人々が自発的に知識を共有し、新たな道具や工夫を生み出している


村人たちの自信と創造性の向上を確認


子供から老人までが、自らの役割を感じ、積極的に参加している

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ