表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
量子知性体Q-01、異世界で神話となる 〜技術的特異点を超えて〜  作者: 冷やし中華はじめました
黒船来航

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/82

開かれた視線


──交渉と、最初の接触──


小型の魔導艇が、灰色の波をゆっくりと進んでいた。

波打つ空気の中で、ユリス・バシュとリュカ・エルヴァルは、

視線を上げたまま、前方の断崖に備えられた監視塔を見つめていた。


近づくにつれ、魔力の圧が変わる。

結界の層が波のように彼らを押し返し、次第に周囲の空が淡く色づいていく。


リュカが呟いた。


「この空間構成……五重警戒陣。防御より、内側への“遮断”が主目的。

……この場所は、恐れている」


ユリスは返事をせず、ただ腰の剣に触れたまま姿勢を保つ。

「来るぞ」


次の瞬間、海面を切る音と共に、三体の飛行兵が出現した。


黒と金の鎧を身にまとい、背に浮遊魔紋を抱えた迎撃部隊の先遣者たち。

矢ではなく、視線で“殺意”を投げてくるような沈黙。


やがて、そのうちの一人が魔法陣を展開し、声を発した。


「停止せよ。名を名乗れ。魔法国の空域へ許可なき接近は許されない」


ユリスは迷わなかった。

剣を抜かずに、ゆっくりと右拳を胸に当て、共和国式の敬礼をした。


「こちらはエルベルト民主共和国、交渉担当ユリス・バシュ。

魔法国との衝突意思は一切なし。対話のための来訪だ」


一瞬の静寂。


三人のうち、中央の者が目を細めた。

手にしていた杖から魔力を流し、空中に記録陣を展開する。


「共和国……? 聞いたことのない国家だ。

だが、我らの領域に届く言葉を持っている。……そちらに、知性の翻訳者がいるな」


リュカが、微笑を浮かべながら前へ出る。


「その通り。私は魔力航行士、リュカ・エルヴァル。

この世界の西にある文明から来た者です。

あなた方の言葉と構造を理解し、そして、共に在る道を探しにきました」


その言葉に、三人の視線が鋭く揺れる。


「“共に在る”……? その意味を、証明してもらおう」


浮遊兵たちの間に、一本の道が開かれる。

結界の中の狭い通路。

“敵ではない”と見なされた者にだけ、通過が許される魔法の道。


リュカがユリスに目で合図した。


「さあ、あとは慎重に、言葉で切り拓いてみせて」


【断崖の中にて】

その先にあったのは、灰色の石で作られた迎賓室。

厳重な結界の中に、それでも客人を迎える最低限の礼儀が保たれた空間。


そこに、魔法国・東境の外交監察官が姿を現す。


名は フローラ・マグレイン。

年齢は30代半ば。鋭い目と、長い銀髪。

表情は固いが、礼は整っている。


「あなた方の行動は、我が国にとって極めて異例です。ですが、敵意を否定し、文化的に意思疎通を試みる者を拒むのもまた、礼を失う行為。……聞かせてください。あなた方は、“なぜここへ来たのですか?”」


その問いに、ユリスは少し息を吸ってから答える。


「我々は、侵略者ではありません。“逃れてきた者たち”に出会い、あなた方が何を求め、何を怖れているのかを知りたい。対話によって、新しい橋を築くために来た」


フローラはその言葉を、長く受け止めたまま、ゆっくりと瞳を閉じる。


そして次の瞬間——

彼女の隣に立っていた侍従が、警告をささやいた。


「……“西の封印”が、微かに反応しました。魔王の使い、動いています」


フローラは、すっと表情を戻した。


「時間がないのですね。それなら……あなた方の代表、“その者”を、招く準備をしましょう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ